彼女の体とその他の断片

  • エトセトラブックス
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784909910042

作品紹介・あらすじ

首にリボンを巻いている妻の秘密、
セックスをリストにしながら迎える終末、
食べられない手術を受けた私の体、
消えゆく女たちが憑く先は……。

ニューヨーク・タイムズ「21世紀の小説と読み方を変える、女性作家の15作」、全米批評家協会賞、シャーリイ・ジャクスン賞、ラムダ賞(レズビアン文学部門)他受賞、いまもっとも注目を浴びる作家を、最高の翻訳家たちが初紹介! 大胆奔放な想像力と緻密なストーリーテーリングで「身体」を書き換える新しい文学、クィアでストレンジな全8篇収録のデビュー短篇集。

「マチャドの言葉は、女たちの記憶と飢え、そして欲望に、ありのままのかたちを与えた」
カレン・ラッセル

「消えゆく女たちと世界の終わり、すべてを手に入れてもなお多くを求める男たちの物語が、飽くなき想像力とたぐいまれな声によって美しく束ねられている」
ロクサーヌ・ゲイ

「巧妙に散りばめられた言葉や断片的な物語が、最終的にパズルのようにはまって大きな物語を作り上げているとわかった時の快感たるやない。訳していると胸が高鳴り、何度も手を止めた。ホラー、SF、リアリズム…ジャンルを越えて描かれる主体性を求める女性の物語は、私たちみんなの物語」
小澤身和子

「マチャドの言葉は、一語一語に肉体がある。だからおとぎ話めいているのに、とても生々しい。見知らぬ女たちの物語が、気づくと自分の物語に連なっている。そこがすばらしく、そして怖い」
岸本佐知子

「人間はいくつもの時間軸とルールを同時に生きている。たとえば、社会の一員としての、愛する人との、自分自身との。時にそれらは相いれず、衝突を起こし、正しさなどどこかに消えてしまう。でも、そうやって交差することでしか生まれない喜びや瞬間もある。マチャドの物語を読むと、その途方もない感覚を思い出す」
松田青子

「『女性や非白人やクィアな人々にとって、書くことはそれじたい政治的なアクティヴィズムだ』とマチャドは言う。そして、政治的であることと芸術的であることは両立する、とも。マチャドの作品は、それをなにより見事に体現しながら『男だけの世界』の景色を書き換えていく」
小澤英実

感想・レビュー・書評

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  • 新水社から引き継いだフェミニズム
    エトセトラブックス 松尾 亜紀子
    http://www.hanmoto.com/nisshi962

    カルメン・マリア・マチャドのウィルス小説「リスト」(松田青子訳)を無料公開します。|etc.books|note
    https://note.com/etcbooks/n/n24cdf1a730d3

    彼女の体とその他の断片 | book | エトセトラブックス / フェミニズムにかかわる様々な本を届ける出版社
    https://etcbooks.co.jp/book/herbody/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      カルメン・マリア・マチャド『彼女の体とその他の断片』が描く、歴史からこぼれ落ちる周縁の時間。【VOGUE BOOK CLUB|中村佑子】 |...
      カルメン・マリア・マチャド『彼女の体とその他の断片』が描く、歴史からこぼれ落ちる周縁の時間。【VOGUE BOOK CLUB|中村佑子】 | Vogue Japan
      https://www.vogue.co.jp/change/article/vogue-book-club-her-body-and-other-parties
      2022/06/01
  • アメリカの人らしいが、名前のどこを見てもスペイン語圏の血筋。やはりねー。まろやかだよね。まろやかと言っても、優しいだの、柔らかい、そういうんでなくて。
    性描写が結構必要以上にしつこく描かれていて、それが刹那的というのかな?日常的とは違って、死後、魔性を連想させる。雰囲気はばっちし、所謂作家の個性としては十分に確率されているが、物語として弱い。こういう作家なー、一作目はまあまあで、次から失速しそうな感じするんだよなー。頑張って欲しい。

  • 読み手のセンスだけでなく,セクシャリティのいろんなかたちやクイアな人とソーシャライズした経験が問われるので読者を選ぶよなと思いつつ読んだ.

    こういう本が若者だけでなくおじさんたちにも受け入れられるというか読まれるようになったら,ニホンも変わったと言える.

  • これはクリーンヒット。すごく面白かった。翻訳陣も豪華。奇妙さ、ユニークさがまさに現代の作家という印象。直後にオースターを読んでいるが、「普通」すぎてオールドファッションに思えるほど。
    コロナの時代を映したような「リスト」、本物の語り手は時代を先取りする。「夫の縫い目」は子供向けの怪談話がベースだというが、主人公以外の女性にも巻かれているリボンは夫が触れてはならない一人ひとりの秘密の暗喩なのだろうか。「とりわけ凶暴」のユニークさ。
    また、女性の肉体についての描写、その身体性が非常に印象的だ。女性の作家が女性のからだにまっすぐに向き合い伝えてくれる言葉への共感と生々しさ。痛み、嘔吐、肥満とダイエット、レイプや暴力…体中で増殖するできものを潰して体液と膿が流れ出すといったからだの異変とそのリアル。作家がレズビアンであることだけに留まらない。
    「ほんものの女には体がある」は体が「ない」女も描くのだが。

  • 『少女だった頃、母は野菜コーナーに足の指が置かれていると言って叫ぶわたしを抱えて、食料品店から連れ出した』―『夫の縫い目』

    グロテスクなイメージがするりと日常生活に入り込み、喚起されるべき違和感が引き起こされることもなく異質な存在がごく当たり前のこととして描かれる。そうしてみて漸く世の中の常識が根本的に問われていることを意識する。現実の世の中にこそ膨大な違和感が無視されるように押し込められていることに。この感じはどこかで出会ったことがあると思い返してみて、それがジュディ・バドニッツであったかとつらつらと考えてみる。特に「夫の縫い目」や「リスト」ではどこかバドニッツに似た印象が強く残る。もっとも「母たち」以降の作品ではバドニッツには無い湿度の高い文章が目立ち始め、「怒り」がカルメン・マリア・マチャドの文章に通奏低音のように響いているのが明確となり、「ジェンダー」を抜きにはこの作家のことは語り得ないということが見えて来る。

    『考えてみると、物語は池に落ちる雨粒のように、混ざっていく。それぞれの話は別々の雲から生まれるが、一旦他の話と混じってしまうと、別々に語ることはもうできない』―『夫の縫い目』

    岸本佐知子が翻訳する「本物の女には体がある」で示されるように、この作家が優れたストーリーテラーであることは間違いがない。しかし、作家自らが語るように、その物語はどこかしら複数の物語が錯綜することが基本にあるようだ。あるいは、輻輳した(congested)、と言ってもよいかも知れない。雨粒と池の水のように混じり合うのではなく、異なる金属が融合した(amalgamated)印象が残るのだ。それも十分に熱を加えて溶解した上で混ぜ合わされたのではなく、所々に高濃度の元の金属が残っているような混ざり方で。怒りの強度が高過ぎて、容易に溶解しないということなのかも知れないと想像するが、その「異物感」が気になる人が多くいるであろうこともまた容易に想像がつく。読み込むのが難しい作家であるように感じるのは、やはりジェンダーギャップということなのか。

  • 私には難しすぎた。ポルノ小説を読みたいわけじゃないのになと思いながら読み進めることに。終盤にちょっとだけ分かる気がする話があった。
    「妻が」と語るとしても,その語り手は男性とは限らない,という勉強ができた。

  • とてつもない小説に出会いました。
    女性・肉体・寓話・言葉。

  • 首の緑色のリボンの衝撃。

  • 期待も高かった分、読みにくく苦手なジャンルのため辛口評価。基本的に本を選ぶときは作家読みか装丁、タイトルで選び、あらすじは見ない。変な先入観をもちたくないからでもあるけど。こちらはフェミニズム小説に分類されるのかな。フェミニズム小説はわりと苦手かもなぁ。

  • 『彼女の体とその他の断片』カルメン・マリア・マチャド

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    首にリボンを巻いている妻の秘密、セックスをリスト化しながら迎える終末、食べられない手術を受けた体、消えゆく女たちが憑く先は…。
    身体に新しいことばを与える作家が、クィアでストレンジな女たちを描いた短篇集。
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    これは…
    クィアでストレンジな女たちの物語、だった。
    時間をかけてゆっくり読んだ。消化に時間がかかる。
    シャーリィ・ジャクスン賞なるほど…という感じのゴシック感。

    「母たち」
    「本物の女には体がある」がすき。
    「リスト」もよかったな。ウイルスに侵された世界の話。今読むにはちょっとシビアすぎるラスト1文。


    お話によって翻訳者が違う短編集なのだけど、根底に漂う芯の強さのようなものがどの作品からも感じられてよかった。暖かくはないけど、ただたださみしいだけでもない。諦観と希望が両立するような。
    マジョリティではないかもしれないが、彼女たちは、私たちは、生きている。それでよいと思わせてくれる。なんとも言えない、ストレンジな読書体験だった。

    「政治的であることと芸術的であることは両立する」

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著者プロフィール

1986 年、ペンシルベニア州生まれ。キューバからの移民である祖父の影響で幼少期から物語を書きはじめ、大学ではジャーナリズムを専攻、その後、写真学科に転入する。アルバイトを転々としながら小説を執筆したのち、アイオワ大学のライターズ・ワークショップへの参加が叶い、芸術学修士号(MFA)を取得。デビュー短編集『彼女の体とその他の断片』は、そのクィアな作風から30 社ほどの出版社に断られたが、2017 年に非営利出版社グレイウルフ・プレスから刊行されると、全米図書賞、ローカス賞をはじめ11の賞の最終候補となり、全米批評家協会賞、シャーリイ・ジャクスン賞、ラムダ賞(レズビアン文学部門)など9つの賞を受賞、ベストセラーとなる。18 年には、「ニューヨーク・タイムズ」紙の「21 世紀の小説と読み方を変える、女性作家による最高の15 冊」に同書が選出される。第2作目となる本書は、ジュディ・グラーン・アワード・フォー・レズビアン・ノンフィクション、ラスボーンズ・フォリオ賞ほか数々の賞を受賞。「タイム」誌など主要メディアの今年の一冊リストに選ばれた。DC コミックスから20 年に刊行された『The Low, Low Woods』では原作を担当、同シリーズはこれまで6巻刊行されている。現在は、ペンシルベニア大学で教えながら、妻ヴァル・ホーレットとフィラデルフィアに住んでいる。次回作は、天体をモチーフとした短編集『A Brief and Fearful Star』。

「2022年 『イン・ザ・ドリームハウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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