ジョゼと虎と魚たち(通常版) [DVD]

監督 : 犬童一心 
出演 : 妻夫木聡  池脇千鶴  上野樹里  新井浩文  新屋英子 
  • アスミック・エース
3.80
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本棚登録 : 3312
感想 : 678
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988126202187

感想・レビュー・書評

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  • 「脚の不自由な女の子と大学生のラブストーリー」という骨子だけを断片的に知って、「お涙ちょうだい映画」なのだとばかり思っていた。それに、タイトルの印象から「スカしたオシャレ映画」なのだろうと思い込んでいた。

    その予想はいい方向に外れた。観てよかった。これは傑作。恋の始まりから終焉までをみずみずしく描いた、ラブストーリーのお手本のような映画だ。

    それでいて、クサくない。「セカチュー」や「冬ソナ」を観て「ヘソが茶ぁ沸かすわ!」と思ってしまうようなスレたあなたにも、オススメ。

    登場人物たちがあやつる関西弁と、随所にちりばめられたコテコテの笑い、舞台となる大阪の下町が醸し出す濃密な生活感……それらはいずれも、物語の骨子がもつクサさを“脱臭”する役割をよく果たしている。

    原作は田辺聖子の短編小説だから、大阪が舞台なのは当然といえば当然なのだが、これがもし舞台を東京に変えての映画化であったら、受ける印象はまったく違うものになっただろう。

    ヒロインの「ジョゼ」(でも、本名はくみ子)を演ずる池脇千鶴の大阪弁が、メチャメチャ耳に心地よい。

    この映画の場合、ヒロインが身障者であるという設定は、観客の涙を誘うためではなく、恋愛感情を“純粋抽出”して描くためにある。

    ジョゼはずっと祖母と2人暮しで、乳母車に乗ってする散歩だけが「外の世界」であった。だからこそ、主人公の大学生・恒夫(妻夫木聡)と恋に落ちてから「世界が変わって見える」さまがいっそう痛切で、胸に迫るのだ。

    2人で見る海がジョゼが生まれて初めて見る海であり、2人で動物園に行って見る虎が初めて見る虎なのである。

    虎の檻の前で、ジョゼが言うセリフがよい。
    「いちばんコワイもんを見たかったんや。好きな男の人ができたときにこうやって……。もしできんかったら、一生本物の虎は見られへん。それでもしゃあないと思てた。けど見れた」

    よしもとばななの初期作品「うたかた」の、こんな一節を思い出した。 
    「彼と言葉を交わした瞬間、突然世間に色がついて見えたので私はびっくりしていた」
    この『ジョゼと虎と魚たち』には、恋をして「世間に色がついて見え」る歓喜、恋が終焉に近づくにつれて世界が色褪せていく哀しみが、ともに見事に描かれている。 

    妻夫木演ずる恒夫が、やさしいだけでなく、弱さとずるさとあふれんばかりの性欲も持った「普通の若者」である点も好感。すこぶるリアル。

    くるりの音楽も素晴らしい。こんなにも自然に映像と溶け合った映画音楽に、久しぶりに出合った。
    とくに、エンドロールにかぶさるテーマ曲「ハイウェイ」のあまりのハマりぶりに、背筋がゾクゾク。

  • 久々に見たけど良い映画‼︎

    2003年にロードショーだったとの事でもう20年近く前であることに驚き!

    恋愛ものの映画ですが、ちょいちょい艶っぽいところもあり当時彼女と見ましたが気まずい感じになったのを覚えてますw嗚呼青春w

    妻夫木君のチャラいと言うか何も考えてなさそうな演技とか、池脇千鶴さんのジョゼとかハマりすぎてて良いですね!
    今回見て気づいたのですが、半沢直樹に出てた江口のりこさんとか、上野樹里さんとかが出てて驚き!

    好き嫌いが分かれる映画だと思いますが、最後の妻夫木君が道端で泣き崩れるシーンは、演出も絵も凄いと思います!

  • 自分の本棚を遡って見てたら、この原作本をちょうど10年前読んでた。
    感想は「大人の恋愛すぎてよくわからなかった」。この時19歳、今29歳。(今の年でもどれだけ理解できてるかはわからないけど)


    ジョゼの台詞、「ずっと一緒にいて」の「ずっと」のなんと難しいことか。
    いとも簡単に「うん」と返事してしまうとこは若さなのか優しさなのか、両方なのだろうなぁ

    そして「ずっと」を切望してたはずのジョゼが途中でどこか諦めてるのがせつない。
    でも女ってそういう側面がある気がするのだけど、男の人もそうなんだろうか。

    冒頭の語りは何年後のことなんだろう。この時の2人の関係性は?
    色々な方向へ解釈できる気がするし、いろんな人の意見を読んでみたいな。

  • 2008.1 (大学2年)

    「なんや,あの雲持って帰りたいわ」

    「障害」をうらやましいなんて絶対口にしたくないしできへん。
    見た目を気にするっていうのは誰でも当たり前のことやし,私は大事なことやと思う。
    でも,人間を中身や本質だけで見れるようになったら外見なんて気にしなくなるんやろうか。
    初対面では本当に難しいことやと思う。

  • 大学生の恒夫(妻夫木聡)は、深夜に麻雀屋でアルバイトをしている。今日の客の話題は、最近近所で見かける謎の老婆のこと。決まって明け方に乳母車を押して歩く老婆が乗せているのはミイラか? 札束か?はたまたヤヤクか……。
    明け方、恒夫は、坂の上から乳母車が走ってくるのに遭遇する。恒夫が近寄り、中を覗くと、包丁を握り締めた少女(池脇千鶴)がいた。
    恒夫は危うく刺されそうになるが、間一髪で難を逃れる。乳母車の中身は、老婆の孫だった。
    彼女は原因不明の病で生まれてから一度も歩いたことがないという。老婆は近所に孫の存在を隠して暮らしており、夜明け間もない時間に乳母車に乗せて散歩させていた。
    そのまま恒夫はふたりの家に連れて行かれ、朝食をごちそうになる。
    こうして、恒夫と脚の不自由な少女は出会った。恒夫が少女に名前を尋ねると、彼女はジョゼと名乗った。
    恒夫は、不思議な存在感を持つジョゼに興味を持つ。一方で恒夫は、大学の同級生の香苗(上野樹里)に好意を持っている。
    福祉関係の就職を希望している香苗との会話のネタに、脚の悪いジョゼが家の中のあっちこちからダイブすることなども持ち出したりするが、思うように関係は進まない。
    ジョゼのことも気になる恒夫は、事あるごとに家を訪ねる。ジョゼの部屋には祖母が拾ってきた様々なジャンルの本がある。
    その中から、恒夫が抜き出した一冊が、フランソワーズ・サガンの『一年ののち』。いつもそっけないジョゼが、その本の続編を読みたいと強く言う。恒夫は既に絶版となっていた続篇『すばらしい雲』を古本屋で探し出し、プレゼントする。「ねぇ、その主人公がジョゼっていうんだよね?」という恒夫の問いかけにジョゼは全く応じず、夢中で本を読みながら柔らかな笑みを浮かべる。そんなジョゼを見つめながら、恒夫も微笑む。
    恒夫の計らいで国の補助金がおり、ジョゼの家の改築工事が始まった。
    完成が迫ったある日、突然、香苗が見学に訪れる。戸惑う恒夫。「彼女? 恒夫くんが言っていた、すごい元気な女の子」。
    押入れの中でふたりの会話を聞きながらうつむくジョゼ。その日の夜、再び恒夫はジョゼを訪ねる。ジョゼは泣きながら本を投げつけ「帰れ!」と叫ぶ。恒夫は祖母に、もう二度と来ないようにと釘をさされる。
    数ヵ月後。就職活動中の恒夫は、ジョゼの家の改築工事をした会社の見学へ。工事で知り合った現場主任から、ジョゼの祖母が急逝したことを知らされ、呆然とする恒夫。
    恒夫はバイクにまたがり、ジョゼの家へと急ぐ。もう訪ねることもないと思っていた懐かしい家。心なしかくすんで見える玄関。ジョゼは静かに恒夫を家に招きいれる。
    お葬式から最近の暮らしぶりまで、淡々と語るジョゼだったが、恒夫がジョゼの行動に口をはさんだ途端、わめきながら恒夫の背中を殴り始める。その怒鳴り声はいつしか泣き声に変わり、やがてふたりはお互いの存在を確認しあうようにひとつになる。
    ジョゼにとってははじめての経験だった。恒夫とジョゼは一緒に暮らし始める。
    ジョゼの家に運び込まれる恒夫の荷物。部屋が変わっていくのを不思議そうに見回すジョゼ。「ずっと一緒にいような」と恒夫が言う。ジョゼはぼんやりと空を見つめて微笑む。恒夫は、徐々にジョゼのことを知っていく。
    二人は動物園に行って虎を見る。ジョゼには夢があった。いつか好きな男の人ができたときに、世の中で一番怖いもの、虎を見る、という。
    檻の向こうで吼える虎と、怯えて恒夫の腕にしがみつくジョゼ。それを見なが見ながら恒夫は優しく笑う。二人で過ごすささやかな幸せは、いつしか終わりのときがやってくる……。
    足が不自由なジョゼと雀荘でバイトしている大学生の恋。最初は婆さんに作ってもらう美味しいご飯が目当てでジョゼと関わっている中で、散歩中に興味本位で襲ってくる人からジョゼを守ったり野菜を分けたり、読んでいる本を通じて交流している内に、ジョゼの不思議な魅力に大学生恒雄が惹かれていく心情が丁寧に描かれていて、サガンの小説を描いた淡い色彩の絵やくるりの音楽も相まって、リリカルなラブストーリー映画に仕上がっています。スケボーに乗った恒雄がジョゼの乗った車椅子を押してドライブに出かける爽快感あふれるシーンも、印象的です ​。

  • 『ジョゼと虎と魚たち』、ずっと観ていなかった作品。理由は監督の犬童一心にも、出演者の妻夫木聡&池脇千鶴にも興味がなかったから。

    今回、ちゃんと観ようと思ったきっかけは『芋たこなんきん』を観てたからで、田辺聖子さんが原作だから。以前、『芋たこなんきん』は必殺も含めて松竹系の俳優さんが大量に出ると書いた(淡島千景やゲストの岡田茉莉子といえば小津さんだよね)。田辺聖子さんは必殺シリーズの大ファンであり、『仕事人III』の内容に不満があって、苦言を呈したらしい……ガチの人やないか!

    というわけで『必殺』→『芋たこなんきん』→『ジョゼと虎と魚たち』と進んできたのだが、それもまた悪くないだろう。


    映画の感想。

    そんなに悪い作品だとは思わないが、やっぱりラストが気に食わなかった。妻夫木聡が泣く意味が全然わかんない。色々考えた、すっげー考えたけどわからない。妻夫木目線だと全く共感できず。

    別れたのが悲しかったのか?←今さらだしたぶんこれはない

    自分の「弱さ」を思い出したから?←これはまああり得る。だけど、それは作中では描写されていない。されているとすれば「親に紹介できなかったこと」だけど、付き合う→親に紹介→結婚?って早すぎだし、いつの時代の話だよと思う

    本当は愛していたことに気づいたから?←それなら池脇千鶴の元に行けよ

    結局、どの場合でも気に食わないのが、「上野樹里とまた付き合ってる」ってこと。何これ?w
    何度も考えたけど、どう考えても「妻夫木はクズ」という結論にしかならない。これで感動するか?泣けるか?


    気になったので、田辺聖子さんの原作版のあらすじをウィキペディアで読んだら、映画とは全く違い、こっちの方が衝撃的でびっくりした!原作未読だから正確なことは言えないけど、田辺聖子さんは肢体不自由を「当時の女性の不自由さ」と重ねて描いてるんじゃないのか?と思った。(原作発表が1984年、単行本化が85年なので、雇均法の少し前。)

    他に思ったこと。
    私自身の知っている障害者(…と書くと「ひとくくり」になるのでめちゃくちゃ嫌い)、肢体不自由者について。母の従妹のダンナさんが筋ジストロフィーで、車椅子生活だった。母の従妹夫婦は遠方に住んでいるので、私が19歳のころ旅行で近くに行った時に初めて会い、お家に泊めて貰った。
    家は綺麗で、お風呂には入浴用にリフトがついていた。母の従妹のダンナさんには駅まで車で送ってもらったのだが、車はBMWを肢体不自由者用に改造したもので、ハンドルには舵のように縦にもハンドルがついていた。たぶん、仕事もそれなりの会社でそれなりのポストについてたんじゃないかなと思う。

    だから、私の知っている範囲の身体障害者って、この映画のように古い長屋に住んでてとか、貧しくて古い本を拾ってきてとか、そういうイメージがまったくなかった。むしろ、若い頃だったから「オジサンかっけー!w」って思ってた。それが1997年、この映画よりも6年も前のこと。

    障害者.comというサイトで、内部機能障害のライターさんが書かれた映画コラムでも、「前時代的な設定で唖然とした」と批判されています。
    https://shohgaisha.com/column/grown_up_result?writer_id=393

    オジサンは進行性の病気だったため、残念ながら若くして亡くなられてしまったけど、今でもふと思い出すことがあります。


    映画の話にもどって。
    昔から池脇千鶴が好きな男性はかなり多いと思うが、私は全く好きではないのでよくわからない。しかし池脇千鶴って薄幸の美少女ばかり演じている気がするんだが……私が観た映画はほとんどそう。池脇千鶴が出てて好きな映画は、今んところ『凶悪』『パーマネント野ばら』『ストロベリーショートケイクス』。

    しかし、池脇千鶴と江口のりこは脱いでるのに、上野樹里が脱いでないのも中途半端で腹が立つ……。むしろ逆に、池脇&江口が脱いでる意味があるんか?とも思う。中途半端が一番嫌い。

    あと、ロケ地が関西では全くないのもどうかと…。これもフェイクっぽさがある。

  • ショックだった。煽り文句の通り、感動した、泣いた、とか思えたらよかったけれど、思えなかった。ただただショックがおおきくて、久しぶりに引きずる映画を観てしまった。

    けっきょくもたなかったんだねと思う。きれいなうつくしい想い出に彩られてはいたけれど、最終的には破綻した。幸せな話ではある。ジョゼは一人でも生きていけるし恒夫もきっとそうだ。互いの人生がわかれたというだけ。それは健常者同士のカップルとすこしも違わない。要するにあのラストはそういうことで、健常者と身障者は何も変わらないのだという事実を、暗に提示しているだけ。
    けれど、ラストがあまりに衝撃的で、それで、あのあと、どうするんだろう、どうなるんだろう、とそんなことばかり考えてしまった。

    きれいで、うつくしくて、透明感あふれて、愛情がこもっていて、それで、でも、現実はそんなにすてきじゃない。すてきじゃないけれど、みんなそれぞれにたくましい。誰だって当り前に幸せになりたいし、生まれてきたからには、生きていたい。

    観ていて思ったのは、障害があろうがなかろうが、どれほど社会にそういった制度がととのっていようが、当人にとっての“頼り”というのは家族だったり、恋人だったりで、市や国ではないのだということ。当然だ。当り前のことだ。
    ショックだったのは、それを思い知らされたからなのかもしれない。

  • 2024/03/31 Amazon prime
    期待したほどではなかった。あまり感情移入できない…もう一回観ようかな

  • たしか高校生か大学生の時に観て、くるりのハイウェイがMV(MVも妻夫木でてくる)含めて最高に好きだったので、ちょっとした贔屓目と当時の厨二心もあってすごく好きだった記憶。アニメ版を観て実写を観たくなったので十数年ぶりに。

    雀荘でバイトするちょっとチャラさ感じる恒夫と、おばあちゃんに縛られてる足の不自由なジョゼ。
    ジョゼは外に出たいけど、おばあちゃんが世間の役に立たない奴が恥を晒すだけっていうところ、なぜか分からないけどとても胸が苦しくなったのを覚えてる。あの頃、まだ私は実家の何か分からないしがらみにずっと囚われつづけていて、自分がそう言われる対象なわけではないけれど、もし自分もジョゼと同じ身体障碍だったら、自分の祖母も同じようなことを言う気がしたから。
    そういえばこれいつの映画だっけって調べたら2003年…18年経った今、世界はあの頃よりも身体障碍者に対して、優しい世界になったのだろうか。

    今改めて観返しても、ベッドシーンが多くてなんか恥ずかしくなってしまうのは変わらなかったな。でもドライブシーンや魚のラブホテルは、当時とは違った目で見えたのはきっと私もいろんなことを経験したのだなと思わずにはいられなかった。

    そしてはじめて観た当時、一番ラストで恒夫が急に泣き出すシーンがあまり理解できなかった。「僕は、逃げた」という恒夫のナレーションの後に泣き出した。逃げたのに、逃げた本人が泣く意味が分からなかった。本当に泣きたいのはきっとジョゼだし、一番ジョゼが苦しいはずなのにって。

    でも今ならそれが理解できてしまう。
    大人になるというのはこういうことなのかもしれない。

  • こういう映画を観ることがめったにないから新鮮!

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著者プロフィール

1960年、東京生まれ。映画監督、CMディレクター、脚本家。監督作品に「ジョゼと虎と魚たち」「メゾン・ド・ヒミコ」「黄色い涙」「眉山」「のぼうの城」など。脚本作品に「大阪物語」「黄泉がえり」など。

「2016年 『我が名は、カモン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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