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- / ISBN・EAN: 4988126202187
感想・レビュー・書評
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「脚の不自由な女の子と大学生のラブストーリー」という骨子だけを断片的に知って、「お涙ちょうだい映画」なのだとばかり思っていた。それに、タイトルの印象から「スカしたオシャレ映画」なのだろうと思い込んでいた。
その予想はいい方向に外れた。観てよかった。これは傑作。恋の始まりから終焉までをみずみずしく描いた、ラブストーリーのお手本のような映画だ。
それでいて、クサくない。「セカチュー」や「冬ソナ」を観て「ヘソが茶ぁ沸かすわ!」と思ってしまうようなスレたあなたにも、オススメ。
登場人物たちがあやつる関西弁と、随所にちりばめられたコテコテの笑い、舞台となる大阪の下町が醸し出す濃密な生活感……それらはいずれも、物語の骨子がもつクサさを“脱臭”する役割をよく果たしている。
原作は田辺聖子の短編小説だから、大阪が舞台なのは当然といえば当然なのだが、これがもし舞台を東京に変えての映画化であったら、受ける印象はまったく違うものになっただろう。
ヒロインの「ジョゼ」(でも、本名はくみ子)を演ずる池脇千鶴の大阪弁が、メチャメチャ耳に心地よい。
この映画の場合、ヒロインが身障者であるという設定は、観客の涙を誘うためではなく、恋愛感情を“純粋抽出”して描くためにある。
ジョゼはずっと祖母と2人暮しで、乳母車に乗ってする散歩だけが「外の世界」であった。だからこそ、主人公の大学生・恒夫(妻夫木聡)と恋に落ちてから「世界が変わって見える」さまがいっそう痛切で、胸に迫るのだ。
2人で見る海がジョゼが生まれて初めて見る海であり、2人で動物園に行って見る虎が初めて見る虎なのである。
虎の檻の前で、ジョゼが言うセリフがよい。
「いちばんコワイもんを見たかったんや。好きな男の人ができたときにこうやって……。もしできんかったら、一生本物の虎は見られへん。それでもしゃあないと思てた。けど見れた」
よしもとばななの初期作品「うたかた」の、こんな一節を思い出した。
「彼と言葉を交わした瞬間、突然世間に色がついて見えたので私はびっくりしていた」
この『ジョゼと虎と魚たち』には、恋をして「世間に色がついて見え」る歓喜、恋が終焉に近づくにつれて世界が色褪せていく哀しみが、ともに見事に描かれている。
妻夫木演ずる恒夫が、やさしいだけでなく、弱さとずるさとあふれんばかりの性欲も持った「普通の若者」である点も好感。すこぶるリアル。
くるりの音楽も素晴らしい。こんなにも自然に映像と溶け合った映画音楽に、久しぶりに出合った。
とくに、エンドロールにかぶさるテーマ曲「ハイウェイ」のあまりのハマりぶりに、背筋がゾクゾク。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
久々に見たけど良い映画‼︎
2003年にロードショーだったとの事でもう20年近く前であることに驚き!
恋愛ものの映画ですが、ちょいちょい艶っぽいところもあり当時彼女と見ましたが気まずい感じになったのを覚えてますw嗚呼青春w
妻夫木君のチャラいと言うか何も考えてなさそうな演技とか、池脇千鶴さんのジョゼとかハマりすぎてて良いですね!
今回見て気づいたのですが、半沢直樹に出てた江口のりこさんとか、上野樹里さんとかが出てて驚き!
好き嫌いが分かれる映画だと思いますが、最後の妻夫木君が道端で泣き崩れるシーンは、演出も絵も凄いと思います! -
2008.1 (大学2年)
「なんや,あの雲持って帰りたいわ」
「障害」をうらやましいなんて絶対口にしたくないしできへん。
見た目を気にするっていうのは誰でも当たり前のことやし,私は大事なことやと思う。
でも,人間を中身や本質だけで見れるようになったら外見なんて気にしなくなるんやろうか。
初対面では本当に難しいことやと思う。 -
大学生の恒夫(妻夫木聡)は、深夜に麻雀屋でアルバイトをしている。今日の客の話題は、最近近所で見かける謎の老婆のこと。決まって明け方に乳母車を押して歩く老婆が乗せているのはミイラか? 札束か?はたまたヤヤクか……。
明け方、恒夫は、坂の上から乳母車が走ってくるのに遭遇する。恒夫が近寄り、中を覗くと、包丁を握り締めた少女(池脇千鶴)がいた。
恒夫は危うく刺されそうになるが、間一髪で難を逃れる。乳母車の中身は、老婆の孫だった。
彼女は原因不明の病で生まれてから一度も歩いたことがないという。老婆は近所に孫の存在を隠して暮らしており、夜明け間もない時間に乳母車に乗せて散歩させていた。
そのまま恒夫はふたりの家に連れて行かれ、朝食をごちそうになる。
こうして、恒夫と脚の不自由な少女は出会った。恒夫が少女に名前を尋ねると、彼女はジョゼと名乗った。
恒夫は、不思議な存在感を持つジョゼに興味を持つ。一方で恒夫は、大学の同級生の香苗(上野樹里)に好意を持っている。
福祉関係の就職を希望している香苗との会話のネタに、脚の悪いジョゼが家の中のあっちこちからダイブすることなども持ち出したりするが、思うように関係は進まない。
ジョゼのことも気になる恒夫は、事あるごとに家を訪ねる。ジョゼの部屋には祖母が拾ってきた様々なジャンルの本がある。
その中から、恒夫が抜き出した一冊が、フランソワーズ・サガンの『一年ののち』。いつもそっけないジョゼが、その本の続編を読みたいと強く言う。恒夫は既に絶版となっていた続篇『すばらしい雲』を古本屋で探し出し、プレゼントする。「ねぇ、その主人公がジョゼっていうんだよね?」という恒夫の問いかけにジョゼは全く応じず、夢中で本を読みながら柔らかな笑みを浮かべる。そんなジョゼを見つめながら、恒夫も微笑む。
恒夫の計らいで国の補助金がおり、ジョゼの家の改築工事が始まった。
完成が迫ったある日、突然、香苗が見学に訪れる。戸惑う恒夫。「彼女? 恒夫くんが言っていた、すごい元気な女の子」。
押入れの中でふたりの会話を聞きながらうつむくジョゼ。その日の夜、再び恒夫はジョゼを訪ねる。ジョゼは泣きながら本を投げつけ「帰れ!」と叫ぶ。恒夫は祖母に、もう二度と来ないようにと釘をさされる。
数ヵ月後。就職活動中の恒夫は、ジョゼの家の改築工事をした会社の見学へ。工事で知り合った現場主任から、ジョゼの祖母が急逝したことを知らされ、呆然とする恒夫。
恒夫はバイクにまたがり、ジョゼの家へと急ぐ。もう訪ねることもないと思っていた懐かしい家。心なしかくすんで見える玄関。ジョゼは静かに恒夫を家に招きいれる。
お葬式から最近の暮らしぶりまで、淡々と語るジョゼだったが、恒夫がジョゼの行動に口をはさんだ途端、わめきながら恒夫の背中を殴り始める。その怒鳴り声はいつしか泣き声に変わり、やがてふたりはお互いの存在を確認しあうようにひとつになる。
ジョゼにとってははじめての経験だった。恒夫とジョゼは一緒に暮らし始める。
ジョゼの家に運び込まれる恒夫の荷物。部屋が変わっていくのを不思議そうに見回すジョゼ。「ずっと一緒にいような」と恒夫が言う。ジョゼはぼんやりと空を見つめて微笑む。恒夫は、徐々にジョゼのことを知っていく。
二人は動物園に行って虎を見る。ジョゼには夢があった。いつか好きな男の人ができたときに、世の中で一番怖いもの、虎を見る、という。
檻の向こうで吼える虎と、怯えて恒夫の腕にしがみつくジョゼ。それを見なが見ながら恒夫は優しく笑う。二人で過ごすささやかな幸せは、いつしか終わりのときがやってくる……。
足が不自由なジョゼと雀荘でバイトしている大学生の恋。最初は婆さんに作ってもらう美味しいご飯が目当てでジョゼと関わっている中で、散歩中に興味本位で襲ってくる人からジョゼを守ったり野菜を分けたり、読んでいる本を通じて交流している内に、ジョゼの不思議な魅力に大学生恒雄が惹かれていく心情が丁寧に描かれていて、サガンの小説を描いた淡い色彩の絵やくるりの音楽も相まって、リリカルなラブストーリー映画に仕上がっています。スケボーに乗った恒雄がジョゼの乗った車椅子を押してドライブに出かける爽快感あふれるシーンも、印象的です 。 -
2024/03/31 Amazon prime
期待したほどではなかった。あまり感情移入できない…もう一回観ようかな -
こういう映画を観ることがめったにないから新鮮!