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- / ISBN・EAN: 4527427647688
感想・レビュー・書評
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ヴァンパイア映画もスウェーデン産だと、ひと味もふた味も違う。
雪と氷に覆われた白い街が、真っ赤な血で染まる……グロテスクと美の狭間を揺れ動く映画だ。
いじめられっ子の少年とヴァンパイアの少女が出会い、互いの深い孤独が共鳴するように惹かれ合っていく。
甘く切ない初恋映画と、耽美的ホラーの見事な融合。
『ポーの一族』を生んだ日本でこそ、このようなヴァンパイア映画が生まれてもよかったはず。
もっとも、日本を舞台にした途端、ヴァンパイアという存在が遠くなってしまうからなァ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
芸術作品がこんな形で歪められ破壊されたことに怒りを通り越して呆れてしまった。映倫と配給会社の担当者はエリちゃんに食い殺されればいいのに!!
いや、スウェーデン王立工科大学出身のドルフラングレン様に首を折られて死ねばいいのに!!
私は、芸術作品だけは大事にする国であって欲しいなと思っている。『バス男』だの色々あったけど、日本はひどい映画後進国だわ。50年代は映画先進国だったんですけどね。さらにひどいのは、『バス男』は改題されたけど『ぼくのエリ』のオリジナル版はいまだにDVDが出てないこと…。
私は別に全ての作品のモザイクやボカシを取れとは言っていない。でもこれはいわゆる「ポルノか芸術か」論争以前の、なーんにも問題ないものが映ってるとこに修正を加えてるから腹が立つんです。しかもその場面は、この作品の核心部分の一番大切なところなのに。
『200歳の少女』という邦題にも腹立つんですが、スウェーデン映画『ぼくのエリ』。原題は「正しき者を招き入れよ」という意味で、これの元ネタはザ・スミスのモリッシーのソロアルバムの曲名かららしい。
リメイク版の原題はレットミーインで、これはエリちゃんのセリフにもあった「私を受け入れて」とか、あと「入っていいよ」と言われないと部屋になぜか入れないという設定でタイトル回収されている。
良く言えば静謐だけど、基本的に退屈なのと、映画自体はあまり私の好みではなかった。ただ吸血鬼もの、ホラーなのでそのシーンの映画的爆発力は半端ない。
これも良い映画の条件だけど、ジャンルが固定されない方が良いですね。この映画は恋愛&ドラマ&ホラーで、固定されてない。吸血鬼もの自体が性的なメタファーを有してると思うので、恋愛とホラーが元々混ざっているのもあるけど。
この映画は原作者本人が脚本用にリライトしたそうで、そこが良い点だと思う。原作ではエリちゃんが吸血鬼になった理由などがはっきり書かれているそうだけど、映画では色々と省かれていてわかりづらい。だから解釈が様々に広がる。
ただはっきりしているのは(これはもう言っていいと思うけど)この映画もLGBTやマイノリティものであるということ。
『シェイプオブウォーター』や、あと『デッドプール2』なんかにも近い。デップーはパンセクシャルで不死身だしね。『小さな恋のメロディ』的でもあるけど、ラストシーンと雪はスコリモフスキの『早春』に似てる。
時代設定は70年代末から82年の間ぐらい。劇中でブレジネフ書記長とテレビで言っているのと、クラッシュのポスターが貼ってあるので1980年前後。ちなみにトーマスアルフレッドソン監督の次作『裏切りのサーカス』も1973年でブレジネフ時代の話。
エリちゃんはいったいどこから来たのか…私はソ連の衛星国から来たのかなと思う(ブレジネフドクトリン)。ドラキュラのモデルとなったヴラド3世はルーマニア人で、共産圏であった東欧、吸血鬼伝承のあるスラブ系地域と重なる。あるいは、エリちゃんを演じてる子はイラン系でもあるから中東、アフガニスタンあたりからかな…と、色々な妄想が膨らむ。
先日観た『エスター』と『ぼくのエリ』は同時期ぐらいの映画。あとスウェーデンと言えば『ミレニアム ドラゴンタトゥーの女』とも時期が近く、監督のお兄さんはミレニアム2と3の監督なので、この頃スウェーデンホラーブームみたいな感じだったのかな。それと吸血鬼ものといえばトワイライトサーガも同時期なので、こちらもブームだったのかもしれないですね。 -
寒々しく冷たい
映像の質感。
詩情さえ溢れる
北欧の音のない
白い雪景色。
映画全体に流れる
哀しみと寂寥感。
久々にガツンとやられた映画です(>_<)
二人だけの秘密の合図、
『モールス信号』で
心を通い合わせる二人。
少年は少女に恋をし、
そして次第に明らかになる
少女の秘密。
孤独な魂を共有するふたりが
惹かれ合ったのも
決して偶然ではなかったんだろうな。
(恋や愛よりも、
もっと深いところで繋がっているように思います)
エリとの出会いが
いじめっ子に立ち向かう勇気と
恋心を彼に与え、
オスカーの人生を変えていく。
エリを演じた
カールした黒髪と
大きな瞳の
リーナ・レアンデションの
ふと見せる大人びた表情には
本当にドキッとさせられました。
透き通るような白い肌と
金髪が印象的な
オスカー少年には、
カーレ・ヘンデブラント。
思春期特有の繊細さ、
不安定さを
ナチュラルに
うまく演じています。
しかし二人とも
無名の子役というから
なんとも驚きです。
エリの正体は?
エリと
パパとの秘密とは?
そして
オスカーとエリの関係は
どういう結末を迎えるのか?
美しい映像に
いくつもの謎。
アメリカの娯楽作品のように
多くを語らず、
余白を残した作りが
観るものの興味を誘うし
ホント上手いなぁ〜って思います♪
早くもハリウッドで
リメイクされたという話やけど
観たいような
観たくないような…(^_^;)
この暗く美しい質感は
ハリウッドでは
絶対無理やろうし、
まったく別物と思った方がよさそう(^_^;)
流血シーンや
ショッキングなシーンも当然あるけど、
とにかくホラーや
バンパイヤものというジャンル分けで
避けるには
あまりにも惜しい
上質な作品だし、
衝撃的なラストシーンも
悲しくも
エモーショナルに胸を打つ、
本当に美しく官能的な、
近年稀にみる傑作です♪
(しかーし!話の主旨をねじ曲げかねない
映倫によるボカシや、
日本語のタイトルは
ホンマにどうにかして欲しいです(`o´)) -
【コメント】
少年と少女。血生臭くて残酷で切ない物語り。
*** ボカシとミスリード
エリが着替えるところをオスカーがのぞき見するシーンで、
エリの局部がアップになるが、ボカシが入っていて肝心な
ところがまるで見えない。日本では普通なことなので
サラッと見てしまったけれども、実は作品として重要な意味を
持っていた。
このことが、エリの言葉にあらわれる。
オスカーの「ガールフレンドになってくれ」という言葉に、
エリは「いまのままの関係がいい、ガールフレンドになれない」
とこたえる。
*** モールスに思いのせて
オスカーとエリは、アパートの隣り合った部屋に住んでいる。
一枚の壁を隔て、ふたりは壁をたたいて言葉を交わし合う。
近くて遠い微妙な思い。
※ちなみにモールスは映画の元となった小説のタイトル。
*** タイトルとミスリード
Let the Right One In.
これはこの作品の英語版のタイトル。
この作品を鑑賞後、余韻に浸りながら、この後に続いていく
物語りを想うとき、邦題と英題で印象がかなり変わってくる。
「邦題」からは「これからはじまる、一途なふたりの放浪の旅」
というロマンチシズムを真っ先に思い浮かべるが、英題からは
「この後に続く血なまぐさいみちのり」を心配させる。
そして、オスカーの末路を想うとき
「エリの父親としてかしずいていた男」が頭をよぎり
ゾッとするのである。
淡々と流れるエンドロールの背景は、
いつしか黒から意味ありげに赤く染まっていく。。。
【内容】
少年オスカーとバンパイアの少女エリの物語り。
いじめられっ子のオスカーは、ある夜ひと気のない公園で、
樹の幹にナイフを突き立てているところを、エリーに見咎められる。
それが出会いの切欠。エリは、オスカーが口を開くよりも先に
見透かしたように云う。「悪いけど友だちにはなれないよ」と。
それでも重ねる夜はふたりを近づける。
。。。けれども、ある日気づいてしまう。
エリがバンパイアであることを。。。 -
すごい映画です。作中ですべてを語らず、見るものに想像をゆだねるが、その未来像はおそらく間違っていないと確信させる脚本の妙。映画の魅力と可能性を堪能できる作品です。血を吸った後のエリが哀しくも美しい。
『ぼくのエリ 200歳の少女』(Let the Right One In)は、2008年のスウェーデン映画。ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストによる2004年の小説『MORSE -モールス-』を原作者自らが脚色した吸血鬼映画である。原題は「正しき者を招き入れよ」という意味。
核心部分の描写について本国では無修正で放映されたが、日本ではポルノ映画ではないにもかかわらず上映時にボカシ修正が入れられており、アミューズソフトエンタテインメントから販売されたセル盤も修正が入れられている。
ストーリー:
ストックホルム郊外に住む12歳の少年オスカーは母子家庭でどこにも居場所がない。オカルトや猟奇事件に興味津々で犯罪関係の本ばかり読み漁っている。学校ではクラスメイトから執拗なイジメを受けており、仕返しする勇気も持てないままポケットにナイフを忍ばせ、妄想の中で復讐にふけるばかりだった。アルコール依存症の父親は家を出てしまい、一人きりになりたいときは雪の積もるマンションの中庭で過ごしていた。
ある日、隣の部屋に親子連れが引っ越してくる。そして、オスカーは夜の中庭でミステリアスな雰囲気を持つ「エリ」と知り合う。エリは学校にも行かず、孤独がちだった。二人は自然に惹かれ合っていく。
その頃から、オスカーの家の周囲で殺人事件が相次ぐ。被害者は逆さ吊りにされ血を抜かれていた。また、ある男性は深夜に友人が女の子に襲われ、その後行方不明になるのを窓から目撃していた。
オスカーへのイジメは次第にエスカレートしていた。エリはやり返すようにオスカーを後押しする。オスカーは自分を鍛えるためトレーニングに通うようになる。また、二人はいつでも連絡が取り合えるようモールス信号を勉強するのだった。
ある晩、エリの父親は若者の襲撃に失敗する。彼はエリの本当の親ではなく、殺人を犯してエリのために血液を集めていたのだ。彼は身元を分からなくするため用意した硫酸を自ら浴びる。逮捕され病院に収容された彼はエリの前で命を絶つ。それはエリにとって破滅へのカウントダウンが始まったことを意味していた。
一方、スケートの課外授業で凍る湖に入るよう命令されたオスカーはイジメっ子にやりかえす。親には怒られたがオスカーはそのことに自信を深め、エリに告白する。自分が普通ではないと言うエリに対しオスカーは「今まで通りならいい」と告げる。二人は同じベッドで一夜を過ごすが、朝になるとエリは謎の置き手紙を残して消えていた。
その後、オスカーはエリの知られざる秘密を知ってしまう。(ウィキペディア)