ア、秋 [Kindle]

著者 :
  • 2012年9月27日発売
3.51
  • (6)
  • (14)
  • (12)
  • (3)
  • (2)
本棚登録 : 104
感想 : 22
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (5ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 太宰治のア、秋。
    ほんの5分の空き時間で読める。

    ネタ帳に書かれたメモを辿ってゆく。
    ところどころに素敵な表現アリ。

    どうということはない、書いてあることそのままだろう。
    自分の書いたメモなんて、時間が経てば何のことかわからなくなることは良くあること。それと真逆で、記憶が鮮明に蘇ることも良くある。

    読了。

  • 「青空朗読」のお試しで聴読した短編。
    意外と面白く読めた。

    なんといってもこの「ア、秋」という表題が面白い。何かの間違いかと思うような表題だが、これには理由があった。

    著者(自らを詩人と言われている)の詩作のためのネタ帳の話である。普段の生活の中で遭遇したこと(もの)や、感じたこと、気付いたことをネタ帳にストックしておく。ここから新たなインスピレーションが生まれるのだろうか。

    表題の意味は、「ア」の区分の中の、「秋」の項目ということだろう。検索性を高める工夫なのかな。

    そのネタ帳を読み返している作者の語りである。
    読み返してみると、自分で書いておきながら、なぜそんなものを書いたのか忘れてしまっているものもあるという。笑えるが、うなずける。

  • 詩人の日常
    秋、トンボ透き通る、身体が
    ノートに挟んでいた写真を見て秋の失恋をふと思い出す
    秋は夏に隠れているが人々は気づかない、まるで悪魔だ
    今となってはよくわからない文も書いてある
    蝶が苦しい姿はまるで自分、その姿を見て儚いとは言えない
    芸術家はいつも弱者の友であったはずなのに。
    太宰の普段か。秋とはかけ離れたことばかり考えているからおもしろい作品が書けるのだろう

  • 秋。
    季節はそれ単体というわけではなくて、夏が来ている時にはもう秋が来ている。
    という、ハッとするような考え方。
    たしかに、春のずっと先には冬があるけれど、それはどこかでバトンタッチして切り替わるのではなくて、ずっと並走しているものなのかもしれない。
    秋といえば、郷愁、センチメンタルを掻き立てられるような季節、頃合でもある。
    太宰の、ぶつ切りの、秋には一見関係のないメモの類ももしかするとそんな、秋の気配を持ったセンチメンタルなのかもしれないと思う。

  •  本職の詩人ともなれば、いつどんな注文があるか、わからないから、常に詩材の準備をして置くのである。

    からはじまる、ネタ帳そのものをネタにしたエッセイ。……エッセイなの?
    太宰治って、はっとするようなところを突くよな。

  • 確かに秋はこっそりやってくる。

  • 私のGmailの下書きみたいでよかった。
    こんな風に書くことを受け入れて発散して生きている彼に少し憧れを抱いた。
    書き手は弱い者の味方だとしたら…、少し残念だよなと、同じことを偶に思うくせそんな事を思った。

  • 「詩材の準備のための引き出し」なんて
    大それたものは持っていませんが、
    その引き出しとは関係のないものが入っている、というのは
    非常に共感できます。
    最後に出てきたちっとも秋とは関係ない一文、
    どんな場面でその一文を書き留めたのだろうと、興味が湧きました。

  • 短いのですぐに読める。

    タイトルは秋だが、内容としては「秋」を例にして、ものの見方と記録について書かれたものであった。

    太宰治の発想の方法の一端が見受けられたような気がする。一つ一つの物事について気づいたことや思ったことをメモとして残しておく。後からそれを見返して、さらに思ったことを付け加えていく、もしくは考えの変わった部分を書き換える。と言ったような風にアイディアの引き出しを作っていたんじゃないかな?と思った。

  •  ある詩人による秋についてのメモ。
     「詩人のメモ」というそれ以上でもそれ以下でもない作品だけれど、着眼点や世界の捉え方がおもしろい。
     私が頑張っても5個しか言葉が出てこないような対象に、筆者含め「詩人」は100個、いやそれ以上と表現が思い浮かぶのだろうか。何が彼らと私をこれほどまでに隔てているのか、まだわからない。根本から違うのか、何かが邪魔になっているのか…。

全22件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

太宰治の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×