淫売婦 [Kindle]

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  • 2012年9月27日発売
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  • 戦前の労働者階級の悲愴が、よくよく伝わってくる作品。
    葉山は、この作品の体験は、事実なのか幻想なのか、どちらなのか言い切れないと前置きしている。
    その体験とは...。

    横浜の港町で、お金を払えば楽しいモノを見せてやると、男たちから声をかけられる。
    前金で払い後についていくと、そこには全裸の若い女の姿があった。

    性的に観賞でも、どうにでもして下さいという状況であるが、その女は悪臭を放ち、肢部は癌種持ちのようで病んでいる。
    働き口は無く、もう最後の最後の手段で、貞操を売っているのだろう。
    不憫な女を食い物にしている、自分を連れてきた男たちに、義憤を感じ怒りの矛先を向けるのだが、その女の実情は、そうでもないようで...。

    今の時代でも、そういった星のもとに生まれてしまった人はいるにはいるが、こんなにも悲惨ではないと思う。
    この作品の女は、這い上がるチャンスさえない。
    面倒をみている男たちも同じこと。

    葉山が冒頭で、事実か幻想なのかと判断できないのは、見たものの衝撃が強すぎた為か。

    「私は淫売婦の代りに殉職者を見た。彼女は、被搾取階級の一切の運命を象徴しているように見えた。」

    これが彼女の職責なのか。

  • この作品が当時のプロレタリア文学界に衝撃を与えたのは分かる気がする。
    モダンだからだ。

    これも想像だが、当時のプロレタリア文学は、残酷な労働と陰鬱な生活を描いた暗く重たく深刻なものばかりで、行き場のない憤怒とともに打倒資本家階級! プロレタリア革命万歳! と絶叫して終わるという、こういってはなんだが、ひどくダサく泥臭いものばかりではなかったか。

    そこに外国航路の船から降り立った若者登場である。青年はセーラー服で横浜の夜の街を闊歩する。出だしからカッコいいではないか。

    そこで不思議な出来事を経験するのであるが、資本主義の最底辺を象徴する場面の中にも、巧みに性が絡んでくるので、なおさら読者―たぶん男性がほとんどだったろう―は惹きつけられる。

    その女性に対する青年の反応は―心理的な意表のつき方も含めて―いちいち納得できるものなので、読者はグウの音も出ない。

    ハイセンスなプロレタリア文学の誕生といえるだろう。

  • ショッキングな内容、みずみずしい描写など、とても1925(大正14年)発表とは思えぬほど古びていない。何箇所か判読不能ということで欠損した部分があった。

  • 初プロレタリア文学。若くてぴちぴちしてて、こんな世界は間違ってる!っていう義憤に溢れてて、なんだか爽快感があった。もちろん女の人はひどいことになってるんだけど、基本的に登場人物に悪いやつがいなかったからかな。

    今が舞台だったら「自己責任」とか言われちゃうんだろうか。同調圧力には敏感なのに、連帯する方法は忘れてしまっているのかもしれない。

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著者プロフィール

1894年福岡県生まれ。早大高等予科除籍。海員生活を経て、労働争議を指導。1923年名古屋共産党事件で検挙され、刑務所内で「海に生くる人々」「淫売婦」を執筆。小林多喜二と共に日本プロレタリア文学の双璧と評されたが、体制支持へ傾き満州開拓に関わる。45年、中国で死去。

「2008年 『セメント樽の中の手紙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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