共喰い (集英社文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 2つ目の話の方が好きでした。

  • 芥川賞受賞作品だったので、とりあえず読んでみた。内容がかなり過激なので読む人を選びそうだけれど、個人的には嫌いではないかもしれない。青少年ゆえの性の未熟さと、父譲りのどうしようもない破壊衝動が混沌としていて面白かった。2つ目のお話も、子供だからこその無邪気さと繊細さがうまく描写されていて良かった。祖父を亡くしたときの気持ちをちょっと思い出した。

  •  芥川賞受賞会見で話題となった父子の性と暴力を描く「共喰い」。小学生が曽祖父の死に触れる「第三地層の魚」も収録。

     「共喰い」は昭和の終わりの父子の性暴力の連鎖の話で全体的にグロテスクだ。だが、そのグロテスクの表現が何ともいい。義手のスポンと外れる描写が好き。どこまでもまとわりついて動けなくなる様な何かとそれへの抗いがテーマの様に感じた。
     一方「第三地層の魚」は舞台が現代で主人公も小学生で「共喰い」よりポップだ。ネットオークションで勲章を買おうかというエピソードはまさに今だ。祖父と父に自殺され、残された曽祖父と祖母と母と自分という環境で自分というものを考え始める子ども。だが、性も暴力もなく小学生と家族の会話を中心とした「第三地層の魚」は「共食い」に比べさわやかだ。
     どちらも同じ様なテーマを持ちながら対照的な二作品のコンビネーションがすばらしい。

     田中慎弥の小説は自分を形づくってきたものへのぬぐえなさとそこからの自立がテーマなのだと感じた。「共喰い」とあの会見で非常にクセの強い印象を受けるが、このテーマって言葉にすれば”青春”なのではないだろうか。
     田中慎弥が好きになった。

  • ・共食い
    首絞めSEX愛好家の親父を持つ高校生が主人公
    方言が多くて何を言っているのか分からなかった部分があった
    芥川賞を受賞したとのことで批評コメントを見てみたら私が抱かなかった感想が多くあり文学はわからないなぁと思った
    ・第三紀層の魚
    チヌとメイタなどについて知れた。文章はある程度読みやすかった。
    筆者は釣りが好きなのかな

  • 久しぶりに骨太の作家さんがでてきたな、という当時の印象。

  • セックスのときに女を殴る父と右手が義手の母。自分は父とは違うと思えば思うほど、遠馬は血のしがらみに翻弄されて──。映画化が決定した、第146回芥川賞受賞作。瀬戸内寂聴氏との対談を新たに収録。

    『第三紀層の魚』は釣り人目線で読みました。とても良い話で思わずホロッとしてしまった。チヌが釣れないところがいい。表題の『共喰い』は芥川賞作品。一言で難しい。自分には、それを読む力が足りないと痛感させられた良書。ということにしたい。

  •  芥川賞受賞時に「もらっといてやる」、と何か逆切れ気味だった会見ばかりが印象にあった作家さん。当時私は文学とか読書とは縁遠い生活で、仕事と家庭で精一杯の時期でした。

     さて、先日図書館に出向いたところ、在庫処分?なのか無人販売所で30円で本作が販売されておりました。手に取って作者名をみて会見のシーンを思い出し、手に取りました。

     本作は表題作の「共喰い」と「第三世紀の魚」の二本立て。以下に簡単なあらすじと感想を。

    『共喰い』
     エッチを覚えてしまった高校生の遠馬、その彼女の千種、女性に対してはだらしない父親(しかも最中に暴力を振るうことで興奮するらしい)、父と遠馬と共に暮らす琴子さん、遠馬の実の母で隻腕の仁子さん。こうした面々が田舎の狭い共同体で生活するさまを描いています。

     若い性の横溢。そしてその親にも未だに漲る性。繰り返される暴力。これがテーマでしょうかい。

     個人的には暴力よりも、性へのオープンな様子に関心を引いてしまいました。
     性の目覚めを経た後に、父親と継母の性生活を知ってしまうというのは、複雑な心境になります。また少年自らの性の営みを父親や母親に悟られるのも、これまた恥ずかしい。性の話は最も根源的なトピックですが、なかなか正視しづらいものです。我が家も長男がもうじき高校生になろうとしていますが、その手の話をなかなかできずにいます(教育的な観点ですよ)。

     その点で本作は、なんというか下衆、醜悪な部分があるかもしれません。性という人間の本質、見たいけど正視したくないものを、あからさまに見せてくる。
     笑いにおいて下ネタは反則、などと言ったりもしますが、小説でも同じような気がします。良くも悪くも性への印象しか残らない。
     そういえば、若者の溢れんばかりの性、という点でいうと、かつて読んだ『青春の門』を思い出しました。

    『第三紀層の魚』
     はじめに『共喰い』を読んだので、こっちの作品は非常に静的に感じました。戦争を経験し今は死ぬ間際である曾祖父、警察官だった自殺した祖父、そして急な病気で亡くなった父。このような過程で母と二人で暮らす小学生の主人公。

     バックグラウンドが暗い感じの家ですが、描写には暗さはあまりありません。調子の悪い曾祖父と主人公が共通の話題である「釣り」や「魚」を通じてコミュニケーションをとる様子など、題名にもある通り「魚」がテーマとなっています。

     これと言って印象は強くないのですが、内容に起伏があるわけでもないのに、文章が丁寧でとても読みやすく感じました。

    ・・・

     とてもしっかりとした堅実な、でも読者にやさしい読みやすい文章を書く作家さんだと感じました。ただ一般的な娯楽小説とは趣を異にするので、大売れしなさそうに感じました。機会があたら他の作品も読んでみたいです。

  • そういう経験はないけど思春期に性との向き合い方にモヤモヤしてる感じはすごく伝わってきた、退廃的というかなんというかずるずると流されていく感じがリアルだなぁと感じた。2つ目の話も小さい時に心の中でたくさんのことを考えてたことを思い出して親近感を持って読むことができた。年を置いてまた読んでみたい

  • 魂のこもった作品だと感じた。激しすぎて好みではないけど、すごく心に刺さる作品。

  • 「共喰い」はハードで激しい小説で、田中慎弥の風貌となかなか一致しない。少年の視点で描かれた貧困の中で繰り返される暴力的なセックスの日常。そこから逃げ出したくても逃げ出せないジレンマに、イライラと叫んでいるような感覚の伝わる作品だ。最近の作家で、こんなハードな感じのものを書く人は少ないように思う。著者の出身地である下関の方言混じりで交わされる会話が、作品に迫力を加えている。
    もう一つは「第三紀層の魚」。やはり下関で恵まれない環境であるが故に、魚釣りに没頭するしかない少年の日常が書かれている。なんとも説明しにくいが、こちらもやはり人には言えない何事かを抱えながら日々生きている人たちの描写が上手いと思う。
    芥川賞の受賞会見で発揮していた変人ぶりが強く印象に残っているが、骨太の小説を書く上手い作家だと思った。

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著者プロフィール

小説家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

田中慎弥の作品

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