- Amazon.co.jp ・電子書籍 (350ページ)
感想・レビュー・書評
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著者は、「日本企業からイノベーションが生まれない本質的な理由は、「個人の創造性」の問題ではなく「組織の創造性」の問題」と言っている。個々の日本人は、むしろイノベーション力が非常に高く、その力を引き出せてていないし、むしろ殺してしまっている日本の組織こそが問題なのだと。出る杭は打たれる日本の組織風土の中では、型破りな人材が育たず、大胆な改革を起こしにくいのは確かなのだと思う。
「「日本人は、目上の人に対して意見したり反論したりするのに抵抗を感じやすい」という事実と、「多くのイノベーションは組織内の若手や新参者によって主導されてきた」という事実は、日本人が組織的なイノベーションにはそもそも向いていないということを示唆しています」、「目上の人に意見したり反論したりすることに強い抵抗を感じる(=権力格差指標の高い)日本社会において、この「下が薄くて上が厚い」組織構造は、極めて大きなイノベーションの阻害要因になる」などと言われてしまうと、絶望感すら漂うが…。
昨今、遅ればせながらも日本でベンチャー育成が声高に叫ばれるようになったのも、大企業の組織風土をイノベーティブに変えるのはまず無理で、それよりも、型破りな人材にイノベーティブな組織を一から作り上げてもらう方がよほど現実的、という判断によるものだろう。民間企業は何れ選手交代してもらうとして、残るは国や地方の組織ということになるが…。
「近年の主要な科学の進歩は、複数分野が関わっているケースがほとんど」、「本質的な発見によって新しいパラダイムへの転換を成し遂げる人間の多くが、年齢が非常に若いか、或いはその分野に入って日が浅いかのどちらか」といった研究者の分析結果も、興味深い。
戦後日本の高度成長期に生まれた様々なイノベーションも、GHQの占領政策により研究が続けられなくなった航空機エンジニア達が、異業種である自動車産業や鉄道産業に転出して開花させたものだという。
専門家を集めただけではダメで、人材をシャッフルして混成部隊とする必要がある、ということは、そもそも組織自体を固定するよりも、事案ごとにプロジェクトを組む形式にした方がよい、ということを示唆しているんだろうな。その方がメンバー間の上下関係も固定されないし。
ウィズ/アフターコロナで社会が大きく変わりつつある今、旧来型の組織形態や風土を変えられるチャンスなのかもしれない、と思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【個人の創造性】は備わっているが、それを【組織の創造性】の欠如が原因となり上手く発揮できていないという点に言及している。
批判だけでなく、その現状を踏まえて、「どのようにすれば良いか」という筆者の前向きな考察が書かれていたのが良かった。 -
イノベーティブな、つまり環境に合わせて変化できる組織に必要な要件を、幅広い引用事例で説明しているので理解しやすい。山口さんの本は高度なキュレーションだと思って読んでます。
特に印象的なところは、「権力格差」が大きい組織は、上層部の意見が尊重され、集合知を活かせなくなり、組織能力として環境変化への対応力が落ちる(大韓航空墜落のケース) -
例示が多く、主張したいことに合致していて、読みやすかった。
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イノベーティブな発想するには何が必要かを説いた本。
古今東西の様々な例が挙げられてて面白かった。 -
良書