具体と抽象 [Kindle]

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  • dZERO(インプレス)
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  • 個人的人生のバイブルの1つになった。物事の捉え方や仕事の進め方、話し方が、全てこの具体と抽象のフレームで構造的に理解ができたように思う。例えば、仕事で上司に話をするときに、適切に伝えられなかったり、議論の着地点を見つけられなかったり、それでまた似たような状況で失敗を恐れて上手く力を発揮できなかったり、そんな悪循環が多かった。しかも正直なぜ上手くいかないのかが自分自身で言葉にできないことも少なくなかった。それが、無数にある具体的な情報から目的に応じて情報を取捨選択するという具体と抽象の関係性と、その具体と抽象を行き来する方法を意識できるようになると、思考や議論の展開が不思議なくらいはっきり見えるようになった。意見に食い違いがあっても、抽象化して1つ上の視座から認識を合わせされれば、どこで食い違ったが分かるし、同じ方向性の中で具体的な手段を議論していることが分かるので、相手とも前向きな議論がしやすい。自分の考え方も構造的に構築できるので、間違いがあっても、修正点が明確で軌道修正もしやすい。何より抽象・具体の枠組みで物事を見ると色々な面が客観視して、平常心で頭を使うことができる。

    仕事においては、具体と抽象を行き来するスキルを磨いて、新しい分野でそれを試すモチベーションにつながるし、アカデミックな面では歴史や科学を改めて学んでみたいという気持ちにも強く駆られた。

    後、ちょいちょい出てくる4コマで各トピックに関連する具体抽象のあるあるネタを扱っているのだが、これが面白いし冒頭で笑って前向きな気持ちで本の中身に入っていける。そういう読者への配慮、仕掛けで、著者に対する好感度がより一層上がったと思う。

    以下、参考になった点のメモ。
    ・抽象概念の重要性
    社会や組織が成熟期に入ると具体性たる「分かりやす」が顕著になるが、成熟期だからこそ、来るべき衰退期に備えて世代交代を考えるべきで、そのために抽象概念を扱う力が重要。

    ・抽象化とは
    枝葉を切り捨てて幹を見ること。
    様々な特徴や属性を持つ現実の事象のなかから、他のものと共通の特徴を抜き出してひとまとめにして扱うこと。
    「パターン認識」法則として複数場面に活用する。

    ・抽象化により得られる学び
    成功/失敗事例が何に起因しているのか抽象度を上げて特性を探り当てる。そのうえで、適用可能な類似性があるのか特殊性のみなのかを判別する。
    「一を聞いて十を知る」
    ・どうすれば抽象化思考を獲得できる?
    →多種多様な経験。本を読んだり、映画を見たり、芸術を観賞したり、普段とは違う経験を疑似体験することで視野を広げる。その中で精通した分野との共通性を探してみる。

    ・構造的な理解→膨大な情報でも様々な抽象レベルで事象を理解する。
    ・抽象化して話せる人はポイントを掻い摘んで話ができる人。膨大な情報を目にしても、常にそれらの個別事象の間から「構造」を見出し、メッセージ性・共通性を抜き出す意識を持っている。

    ・相手とのコミュニケーションでも抽象・具体を意識する。状況と相手に応じてちょうどよい抽象度でコミュニケーションをとることが大事。

    ・仕事とは抽象から具体への変換作業
    内容が詳細には確定していない企画段階から、詳細レベルの計画段階、更に詳細の実行計画へ。
    上流は個性が重要視され「いかにとがらせるか?」が重要なので、多数決による意思決定は馴染まない(!)。意思決定は多数の人数が関われば係るほど「無難」になっていくため。


    ・アイデアはアナロジー(抽象レベルのまね)から生まれる。ある意味、抽象度の高いもの(関係性や構造)は合法的に盗み放題。身の回りの「一見遠い世界のもの」をいかに抽象レベルで結び付けられるかが、創造的な発想力の根本。


    ※うまいたとえ話の条件
    ①たとえの対象がだれにでもわかりやすい身近で具体的なテーマ(スポーツやテレビ番組)
    ②説明対象と①のテーマの共通点が抽象化され、過不足なく表現されている。

    ・手段と目的の関係は相対的。目的1つに対して手段は複数。一方で、目的はさらに抽象度の高い「上位目的」が存在する。

  • この本が一番具体的かな

  • 具体=物質の世界と、抽象=精神・思考の世界について、関係性を示した話。具体的な事例を基に抽象概念を組み立て一般化を行い、それを具体的実践的な内容に落とし込むという「二つのものの捉え方をどう生かしていくか」という部分は面白かった。考えの一つの指標としていきたい。
    ただ、抽象概念は感情を伴わないことや、抽象概念から下位の概念をみることはできるが逆は無理など、ところどころ納得できない部分があった。この納得するいかない感覚も、抽象化できていないから起こるのだと結論付けられるんだろう。前半はともかく後半は肌に合わないと思った。

  • 具体と抽象をいったりきたりして考える。
    全体像と繋がりを重視する「抽象」と、実行可能性を重視する「具体」、両方とも必要な視点。


     
    ■数と言葉
    ・言葉と数を生み出すのに必要なのが、「複数のものをまとめて、一つのものとして扱う」という「抽象化」です。言い換えれば、抽象化を利用して人間が編み出したものの代表例が「数」と「言葉」です。
    ・数と言葉を成立させるためには、「『まとめて同じ』と考える」ことが不可欠です。
    ・複数の具体を「N:1」でまとめたものが抽象であるという関係。具体⇄抽象という考えは、相対的に連続して一体となって階層的に存在するということ(例えば、「鮪」は「魚」の具体でもあり、個別の鮪の抽象でもあるというように、あくまでも相対的にどう見るかで具体か抽象かが決まる)
     
    ■デフォルメ
    ・抽象化とは一言で表現すれば、「枝葉を切り捨てて幹を見ること」といえます。文字通り、「特徴を抽出する」ということです。要は、様々な特徴や属性を持つ現実の事象の中から、他のものと共通の特徴を抜き出して、ひとまとめにして扱うということです。
    ・裏を返せば、共通の特徴とは関係のない他の特徴は全て捨て去ることを意味します。先の言葉でいえば、「共通の特徴」が幹、「それ以外の特徴」が枝葉ということになります。
    ・抽象化とは、このような「デフォルメ」です。特徴あるものを大げさに表現する代わりに、その他の特徴は一切無視してしまう大胆さが必要といえます。
     
    ■精神世界と物理世界
    ・言葉には目に見える物理的世界で用いられる場合と、比喩として精神的世界で用いられる場合があり、2通りの使い道があります。
     
    ■法則とパターン認識
    ・抽象化の最大のメリットは、複数のものを共通の特徴をもってグルーピングして「同じ」と見なすことで、一つの事象における学びを他の場面でも適用することが可能になることです。つまり「一を聞いて十を知る」です。
    ・抽象化とは複数の事象の間に法則を見つける「パターン認識」の能力ともいえます。身の回りのものにパターンを見つけ、それに名前をつけ、法則として複数場面に活用する。これが抽象化による人間の知能のすごさといってよいでしょう。
     
    ■関係性と構造
    ・抽象化のツールとして「シンプルな図解」があげられます。図解は「関係性」を表現するためのものです。一つ一つの図形の「個性」を極力排して、「丸」とか「三角」にしてしまい、それらがどのような
    関係になっているのかという、相対的なつながりのみを表現することが図解の主な目的です。
     
    ■往復運動
    ・「たとえ話」は、説明しようとしている対象を具体的に掴んでもらうために、抽象レベルで同じ構造を持つ別の、かつ相手にとって卑近な世界のものに、「翻訳」する作業といえる。説明したい新しい概念や事例を、身近な事例で似ているものを使って説明するのです。
    ・たとえ話の上手い人とは「具体→抽象→具体という往復運動による翻訳」に長けている人のことをいいます。
    ・「共通点と相違点」を適切に掴んでいることが抽象化、ひいてはたとえ話の出来栄えを決定するというわけです。
     
    ■相対的
    ・具体と抽象は「上下」で階層構造を築いています。
    ・じつは抽象化の構造が階層的になっていることで、抽象化の威力がさらに増します。それは、階層の上位が持っている性質を下位の階層がそのまま引き継ぐということです。
     
    ■本質
    ・「変えるべきこと」と「変えざるべきこと」の線引きを抽象度に応じて切り分けることで論点が明確になります。また一見、反対のことを行っているように思われる「意見の対立」も、「違うところを見ていただけ」である可能性も高いのです。
    ・一般に斬新な製品や、革新的な仕組みを作り上げるためには「多数の意見を聞く」ことは適しません。多数の意見はそれぞれの具体レベルに引きずられて、どうしても「いまの延長」の議論しかできなくなるからです。逆に、「いまあるものを改善していく」場面では、なるべく多数の人から多数の意見を吸い上げることが必要になります。
    ・抽象度が上がれば上がるほど、本質的な課題に迫っていくので、そう簡単に変化はしないものです。「本質を捉える」という言い方がありますが、これもいかに表面事象から抽象度の高いメッセージを導き出すかということを示しています。
     
    ■自由度
    ・抽象概念は、「受け取る人によって好きなように解釈ができる」ということです。「グローバルな人材が必要だ」というメッセージを受けて、英会話学校の人は「だから英語を学ばなければならない」と思うでしょう。あるいは「国際化担当」の人であったなら、「だから海外との交流が必要だ」、伝統芸能に関わる人は「だからこそ日本のことをよく知らなければならない」と解釈します。
    ・この「自由度の高さ」は、「具体派」の人から見れば、「だからよくわからなくて困る」という否定的な解釈になり、「抽象派」の人から見れば、「だから想像力をかきたてて、自分なりの味を出せる」と肯定的な解釈になります。
    ・人に仕事を頼んだり頼まれたりするときにも、その人の好む「自由度の大きさ」を考慮する必要があります。
    ・「こんな感じで適当にやっといて」と言われて、「いい加減な『丸投げ』だ」と不快に思う人は、具体レベルのみの世界に生きる「低い自由度を好む人」です。こういうタイプの人に、自由度の高い仕事の依頼をしたあとに、「たとえばこんな形で」と具体的なイメージの例を伝えてしまうと、それを「たとえば」にならず、文字通り「そのまま」やってしまいます。「たとえば」によって抽象度を下げて上位の概念を伝えようとしている意図が、まったく伝わらないからです。
    ・逆に、自由度の高い依頼をチャンスと捉え、「好きなようにやっていいんですね?」とやる気になる人が、「具体⇄抽象」の往復の世界に生きる「高い自由度を好む人」です。
    ・「抽象度」や「自由度」という視点で仕事を考えられる人なのかどうか、それを頼む側と頼まれる側の双方で十分認識して仕事の依頼をしているかどうかで仕事の成否が決まるといえます。
     
    ■価値観
    ・注意すべきは、上流の仕事(抽象レベル)から下流の仕事(具体レベル)へ移行していくに伴い、仕事をスムーズに進めるために必要な観点が変わっていくということです。最上流と最下流ではほぼ「違う仕事」といっていいほど、必要な価値観やスキルセットが変わってきますが、徐々に移行していくこともあって、明確にこのことが意識されることはあまりありません。そして、最上流と最下流では、ほぼ正反対の価値観といってもいいくらいまでの違いがあります。
    ・上流の仕事は、コンセプトを決めたり、全体の構成を決めたりする抽象度の高い内容なので、分割して進めるのは不可能です。これが下流に進むにつれて具体化され、(ピラミッドを下っていくイメージで)作業が飛躍的に増えていくとともに、作業分担も可能になっていきます。同時に、求められるスキルも変わってきて、「全体を見る」よりは個別の専門分野に特化して深い知識を活用する能力が求められていきます。
    ・建築物の全体構想から個別(フロア別、部屋別)の設計、施工の流れを想定すれば、イメージが明らかになるでしょう。
    ・上流の仕事は個人(さらにいえば、最上流は一人)の作業から始まって、次第に参加者が増えていきます。上流で重要なのは個人の創造性で、下流で必要なのは、多数の人数が組織的に動くための効率性や秩序であり、そのための組織のマネジメントやチームワークといったものの重要性が相対的に上がっていきます。
    ・上流では個性が最重視され、「いかに尖らせるか?」が重要なため、多数決による意思決定は馴染みません。意思決定は、多数の人間が関われば関わるほど「無難」になっていくからです。
    ・逆に下流の仕事は、大勢の人にわかりやすいように体系化・標準化され、また、どんな人が担当してもスムーズにいくように、各分野の専門家を含む多数の人が目を通す(管理する)必要が生じてくるのです。
    ・そう考えてくると、抽象度の高い上流の仕事に「コラボレーション」は馴染まないことがわかります。逆に、オープンソーシングやクラウドソーシングのような、「衆知を集める」のは、特に上流の方針が決まって上での下流の具体的なアイデアを多数出すときには有効な手段になります。
    ・上流の仕事というのが「自由度の高い」仕事で、下流の仕事が「自由度の低い」仕事です。これらのどちらを快適に感じるかで、その人が上流の仕事に適した人か、下流の仕事に適しているかが判断できます。どちらが良い悪いではなくて、求められている仕事の特性がどちらかによって適材適所の活用が求められますが、このミスマッチを認識していないことによって、実際の現場では不幸な事象が頻発しています。
    ・上司が部下に仕事を教える際にも、抽象度のレベルの認識が必要です。抽象度の高い仕事は「赤ペン添削」で直すことはできません。「赤ペン」で直せるのは、個別の具体性が高いものだけだからです。議事録の個別の表現や言葉遣いなどには「赤ペン添削」が馴染んでも、構想の企画書は基本的に「添削」すべきものではありません。出来栄えが悪ければ、「全体に×をつけて別の紙に書き直す」しかないからです。これが抽象度の高い仕事のやり方です。
    ・下流の仕事は多くの人が関わった方がレベルが上がり、速く安くなりますが、上流の仕事の質は、むしろ関わった人の量に反比例します。人が関われば関わるほど品質は下がり、凡庸になっていくのが上流の仕事といえます。
    ・そのため、「下流の仕事のやり方」に慣れている人は、多人数で議論を繰り返して多数決による意思決定をすることが仕事の品質を上げるという価値観で仕事をしますが、これは上流側の抽象度の高い仕事には適していません。上流側の仕事では、口を出す人の数が増えれば増えるほど、焦点がぼやけて角の丸くなった凡庸なものになっていくからです。
    ・一般に「上流発想」の建築家は「全体の統一感」や「つながり」を重視しますが、実際に住む人間からすれば、「個別の使い勝手」や「部分的な見た目」の方が重要です。「一階と二階の作りに全く統一感がない」ことは、個々の部屋で活動する住人にとってはどうでも良いことですが、全体を設計している人間にとってみれば大問題なのです。
     
    ■量と質
    ・基本的に具体の世界は「量」重視であるのに対して、抽象の世界は「質」重視であるとともに、「量が少なければ少ないほど、あるいはシンプルであればあるほど良い」という世界です。
    ・抽象化の帰結として、抽象度が上がるほど異なる事象が統一されて「同じ」になる一方で、抽象度が下がって具体化するほど数が増えることになります。ピラミッドの形状が示す通り、抽象の世界は極めれば極めるほど結論はシンプルになっていきます。
     
    ■二者択一と二項対立
    ・抽象レベルの視点は「二項対立」。具体レベルの視点は「二者択一」。
    ・具体レベルのみで見ていると、二項対立も「二者択一」に見えてしまいます。その結果、「世の中そんなに簡単に二つに分けられない」となるのですが、抽象レベルで捉えている人はそういうことを言いたいのではなく、「考え方」を言っているのですが、それがなかなか通じません。
    ・抽象レベルの視点は「論点を洗い出そう(二項対立)」。具体レベルの視点は「白か黒か(二者択一)」。
     
    ■ベクトル
    ・哲学、理念、コンセプトといった抽象概念がもたらす効果は、個別に見ているとバラバラになりがちな具体レベルの事象に「統一感や方向性」を与えることであり、いわばベクトルの役割を果たしているのです。哲学や理念を持たずに全てにおいて個別に判断して行動していると、場当たり的になって、昨日の行為と明日の行為とで整合性が取れなくなり、場合によっては後戻り作業や二重作業が大量に発生してしまうことになります。
    ・大きな方向性や将来のビジョンを決定する上でも、必要なのは「抽象化能力」です。「要するに自分たちはどうしたいのか?」を考えることが、大きな方向性を決定するには不可欠だからです。
    ・個別の行動の判断に困った時の拠り所になるのも、「最終的に何を実現したいか?」という長期的な上位目的です。「枝葉を切り捨てて幹を見る」という、抽象化の考え方がここで生きてきます。
    ・別の表現をすると、やること(to do)は具体的で目に見えやすいので考えるのが比較的容易ですが、あるべき姿(to be)は、将来のある時点での状態を表すので、これを考えるには「想像と創造」のための抽象化能力が必要になります。山登りでいえば、to beは「山頂に登ってポーズを取っている写真」であり、to doは、道具を揃えてどういうスケジュールで誰と一緒にどの道を登っていくか、という具体的なアクションを表します。
    ・大きな目標があってはじめて個別のアクションが有機的につながり、「個別の無機質な行動」が意義とつながりを持った生きた行動になっていきます。
     
    ■アナロジー
    ・アナロジーとは類推のことで、異なる世界と世界のあいだに類似点を見つけて理解したり、新しいアイデアを発想したりするための思考法です。
    ・先進企業や競合他社のアイデアを真似する行為は、具体レベルで見た目のデザインや機能を真似することであり、これは単なる「パクリ」となります。
    ・アナロジーとは、「抽象レベルの真似」です。具体レベルの真似は単なるパクリでも、抽象レベルで真似すれば「斬新なアイデア」となります。科学的な技術や発見、あるいはビジネスのアイデアなども多くは抽象レベルでの真似(アナロジー)から生まれています。特許で守れるのは、抽象度が低い、直接的に類似性のあるもののみです。逆に抽象度が高いもの(関係性や構造)であれば、合法的に「盗み放題」です。大抵の人はそれが盗みであることにすら気づきません。身の回りの「一見遠い世界のもの」をいかに抽象レベルで結び付けられるかが、創造的な発想力の根本といえます。
     
    ■階層
    ・具体レベルのみで考えている人は、500ページの本を3分で説明してほしいと言うと、「時間がないので最初の3章だけ」か「各章のはじめの部分だけを抜き出す」という選択肢しかありません。
    ・抽象化して話せる人は、「要するに何なのか?」をまとめて話すことができます。膨大な情報を目にしても、常にそれらの個別事象の間から「構造」を抽出し、何らかの「メッセージ」を読み取ろうとすることを考えるからです。
    ・しかもそういった「構造」や「メッセージ」を複数の階層からなる抽象のレベルで理解しているので、1分なら1分なりの「要するに」を、30分なら30分なりの「要するに」を話すことができます。
    ・重要なことは、膨大な情報を眼の前にした時、その内容を様々な抽象レベルで理解しておくことなのです。
    ・抽象化の能力は、インターネット上に溢れる膨大な情報から自分の目的に合致した情報を短時間で収集したり分析したりする場面で特に力を発揮します。
     
    ■バイアス
    ・「数値目標」と言う具体的な情報は、必ずそこに「目的」や「意図」と言う、より抽象度の高い背景情報がセットになって生まれているはずです。ところが「具体しか見えていない人」にこのような「セットの情報」を渡したつもりでも、相手は目に見えやすい具体レベルとしての数字の情報しか受け取ってくれないことが往々にしてあります。こうして「抽象とのリンク」が切れ、具体レベルの数字のみが「一人歩き」することになるのです。
     
    ■理想と現実
    ・実行に必要なのは何か?
     
    ■マジックミラー
    ・抽象度の高い概念は、見える人にしか見えません。抽象化というのは、残念ながら「わかる人にしか分からない」のです。
    ・具体の世界と抽象の世界は、いってみればマジックミラーで隔てられているようなものです。ピラミッドでいうと、上(抽象側)の世界が見えている人には下(具体側)の世界は見えるが、具体レベルしか見えない人には上(抽象側)は見えないということです。
     
    ■一方通行
    ・状況と相手に応じてちょうどよい抽象度でコミュニケーションすることが重要です。「抽象的だからわかりにくい」ということがクローズアップされがちですが、実は「具体的すぎてわかりにくい」こともあるのです。
     
    ■共通と相違
    ・高い抽象レベルの視点を持っている人ほど、一見異なる事象が「同じ」に見え、抽象度が低い視点の人ほど全てが「違って」見えます。したがって抽象化して考えるためにはまず、「共通点はないか」と考えてみることが重要です。当然ここでいう共通点は「抽象度の高い共通点」です。
    ・抽象レベルを上げれば、「同じである」と捉えられる範囲が広がります(視野が広がるということです)。経験や情報の量が同じであっても、具体レベルでものを見ている人に比べ、格段に豊富なアイデアを生み出すことができるでしょう。
     
    ■【終章】抽象化だけでは生きにくい
    ・抽象度という一つの座標軸におけるスタンスが人によって異なるために、人間同士のコミュニケーションにも障害をもたらすことが多いというもの本書で解説した通りです。
    ・これらの弊害も考慮していくと、結局重要なのは、「抽象化」と「具体化」をセットで考えることです。これらは一つだけでは機能せず、必ずセットになって機能します。
    ・まずは徹底的に現実を観察し、実践の活動を通して世の中の具体を掴み、それを頭の中で抽象化して思考の世界に持ち込む。そこで過去の知識や経験をつなぎ合わせてさらに新しい知を生み出したのちに、それを再び実行可能なレベルにまで具体化する。これが人間の知とその実践の根本的なメカニズムということになると考えられます。
    ・そのような「具体と抽象」の全体像を掴む上で、本書で解説したような「抽象度」という観点で身の回りの事象を観察することが重要になります。

  • あまり心に残りませんでした。

  • 抽象はわかりにくい、具体はわかりやすいというイメージがあるが実際はそうではなく、それぞれのものの見方が極端に分かれているだけである。どちらか一方ではなく、どちらの考え方も場合に応じて使い分けることが重要。
    プロジェクトを行うときは抽象(目的、理念、コンセプト)→具体(内容)→抽象(内容のまとめ)の順で考えることになる
    目標は抽象から具体まで決めると良い。(〜のために〜をしたいので〜で〜を作りたい。そのために〜に〜日間通う)

    抽象とは
    ・言葉、数字
    ・解釈の自由度が高い
    ・関係性
    ・デフォルメ
    ・比喩表現
    ・精神世界
    ・一を聞いて十を知る(法則)
    ・共通点
    ・相対的に決まる
    ・ものごとの本質
    ・上流の仕事
    ・単純化
    ・二項対立(具体の短絡思考ではない)
    ・コンセプト
    ・アナロジー
    ・固定観念
    ・理想
    ・具体に生きる人から理解されない
    ・たとえ話

  • 期待していたが、真新しい発見はなかった。
    内容はよく整理されているが、あえて体系立てて考え直すからにはもう少し新しい示唆が欲しいかな、と感じた。

    アナロジー思考はこれから読みたい

  • 今年読んだ本の中で5本の指に入る。何度も読み返したい。ちなみに5本の指の共通点は、日々の思考のためのソフトスキルとして使えること(早速抽象化)。

    まさに金言の宝庫。読みながら頷きまくった。
    金言と感じた部分と、各金言に関する感想をメモベースで残す。


    ・「手段と目的の関係も、すべて相対的なもの」
    自分が意識せずとも日頃から実践している部分だと思う。仕事のゴール設定と達成度計測のために使っている。仕事のゴール設定は、自分の目指している将来像から逆算。この将来像はその時の気持ち的な抽象度が高いもの、理想としている具体的な状態も含む。
    ※過度な抽象化や抽象化への依存は、マイナスな影響を及ぼすことに注意

    ・「ルールや理論、法則は、大抵の場合は具体的に起こっている事象の「後追い」の知識だったはず」

    これに関しては、サッカーのPK判定に通ずる。
    PKはゴール決定機を阻止した時に与えられる判定。
    しかし、多少手に触れただけで決定機阻止と同等罰則のPK判定になる。→間違った抽象化によって、現在ピッチで起きている具体がねじ曲げられている。
    これはどう考えても抽象化の失敗。

    ・「よくも悪くも身の回りの事象を「解釈」することを覚えてしまった人間は、自然をありのままに眺めることが非常に難しくなってしまっていまいます」

    これはその通りで、例えば人間関係を抽象化しすぎると、抽象化対象の人の具体的なものとしての存在価値が希薄になると感じてしまうため危ない。「自分の周りの大切な人たちは、自分を満たすための要素」のように、その人自身としてではなく要素として見てしまう。

    過度な抽象化は作品を見る時も危ない。例えば最近アニメを数話視聴しただけで切ることが多い。直近で言えば鬼滅の刃。これは、数話視聴しただけで抽象化、つまりパターンを予想してしまい、その先がとてもつまらなくなるから。ただ、この危険な点は作品をつまらなく感じることのほかに、傲りと視野が狭くなることもある。アニメ全話視聴していないのに自分の抽象化を正しさの基準にするのは傲り。予想していない展開もあり得るのに視聴を止めるのは、未知の楽しさを経験できないことにつながる。もしかしたら、鬼滅の刃は自分が想像していたのと全く異なる展開かもしれなかった。
    これは、仕事や人生のゴール設定にも通ずることで、現在の限られた状態での過度な抽象化は可能性を閉ざすことにもつながる。


    最後に、この本を読んで自分が好む作品の種類がわかった。それは、「具体と抽象が散りばめられている」「抽象化がものすごく難しい」作品。前者は例えば聲の形、後者は俺ガイル。俺ガイルはセリフや表情からそれらが何を意味しているのかを判断するのが難しすぎる。しかしそれは考えるのが楽しい。

  • 「具体的でわかりやすい」ことが好まれる時代に、「抽象的でわかりにくい」ことを理解する目的とは?

    抽象とはパターン化やカテゴライズされた事象であり、抽象の下に具体的な事象が存在する(ピラミッド)。あらゆる事象を、抽象度が高い捉え方をすることで、発想力、理解力の向上につながる。本書は、あらゆる事象を抽象化するための実践書。

  • 表題通り、「具体」と「抽象」について概念の説明と日常に落とし込んだ使われ方、この概念の扱い方が述べられている本。
    普段自分が薄ぼんやりと考えていることを、言語化された感じ。
    具体と抽象それぞれに特徴があり、一遍的な善し悪しに限らないこと。具体と抽象の往復を繰り返して物事を考えることで、自分の思考や作業を見つめ直せるのだろうと思った。
    他の本を読みながら、これは今どのレベルの話をしてるんだろうと考えるようになったので面白い道具を手に入れた感じ。

    また読み返したくなる日が来ると思う

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著者プロフィール

細谷功(ほそや・いさお):1964年生まれ。ビジネスコンサルタント、著述家。問題発見・解決や思考力に関する講演や研修を国内外で実施。『仕事に生かす地頭力』(ちくま文庫)、『地頭力を鍛える』『アナロジー思考』(共に東洋経済新報社)、『具体と抽象』(dZERO)、『思考力の地図』(KADOKAWA)等著書多数。

「2023年 『やわらかい頭の作り方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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