世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?~経営における「アート」と「サイエンス」~ (光文社新書) [Kindle]

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  • 光文社
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感想・レビュー・書評

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  • 哲学や美術が好きな自分を肯定してくれるようで嬉しくなった。美術については虚心坦懐に見て、それを誰かに伝えてみることで新しい見方ができる。哲学はその考え方自体というより、その時代背景でどう問を立てたかに思いを馳せることで、VUCAな時代の問いの立て方が身につくのかなと感じた。

  • P 120
    これまでのような「分析」「論理」「理性」に軸足をおいた経営、いわば「サイエンス重視の意思決定」では、今日のように複雑で不安定な世界においてビジネスの 舵取りをすることはできない、ということをよくわかっているからです。
    P 128
    一つ目は、多くの人が分析的・論理的な情報処理のスキルを身につけた結果、世界中の市場で発生している「 正解のコモディティ化」という問題です。
    P 131
    正しく論理的・理性的に情報処理をするということは、「他人と同じ正解を出す」ということでもあるわけですから、必然的に「 差別化の消失」という問題を招くことになります。
    P 135
    二つ目は、分析的・論理的な情報処理スキルの「 方法論としての限界」
    P 155
    全体を直覚的に捉える感性と、「真・善・美」が感じられる打ち手を内省的に創出する構想力や創造力が、求められる ことになります。
    P 186
    3.システムの変化にルールの制定が追いつかない状況が発生している
    P 192
    そのような世界において、クオリティの高い意思決定を継続的にするためには、明文化されたルールや法律だけを拠り所にするのではなく、 内在的に「真・善・美」を判断するための「美意識」が求められる ことになります。
    P 258
    では「測定できないもの」「必ずしも論理でシロクロつかないもの」については、どうやって判断すればいいのか?  そこにこそ「リーダーの美意識」が問われる、
    P 260
    つまり、本書における「美意識」とは、経営における「真・善・美」を判断するための認識のモード、
    P 279
    世界のエリートが、いま必死になって「美意識」を鍛えている理由もまた同様です。それは、彼らが今後向き合うことになる問題、すなわち数値化が必ずしも容易ではなく、論理だけではシロクロがはっきりつかないような問題について、適時・適切に意思決定をするための究極的な判断力を鍛えるためだということなのです。
    P 309
    「論理」と「理性」では勝てない時代に  経営における意思決定にはいくつかの対照的なアプローチがあります。ここではそれらを「論理」と「直感」、「理性」と「感性」という二つの対比軸で整理してみましょう。  まず「論理と直感」という対比軸については、「論理」が、文字通り論理的に物事を積み上げて考え、結論に至るという思考の仕方である一方で、「直感」は、最初から論理を飛躍して結論に至るという思考として対比されます。  次に「理性と感性」については、「理性」が「正しさ」や「合理性」を軸足に意思決定するのに対して、「感性」は「美しさ」や「楽しさ」が意思決定の基準となります。
    P 357
    私たち日本人の多くは、 ビジネスにおける知的生産や意思決定において、「論理的」であり「理性的」であることを、「直感的」であり「感性的」であることよりも高く評価する 傾向があります。
    P 366
    「直感」はいいが「非論理的」はダメ
    P 371
    論理や理性で考えてもシロクロのつかない問題については、むしろ「直感」を頼りにした方がいい、ということ
    P 374
    決して「論理や理性をないがしろにしていい」ということではなく、「論理や理性を最大限に用いても、はっきりしない問題については、意思決定のモードを使い分ける必要がある」ということ
    P 435
    物事が複雑に絡み合い、しかも予測できないという状況の中で、大きな意思決定を下さなければならない場面では、論理と理性に頼って意思決定をしようとすれば、どうしても「いまは決められない」という袋小路に入り込むことになります。このような問題の処理については、どこかで論理と理性による検討を振り切り、直感と感性、つまり意思決定者の「真・善・美」の感覚に基づく意思決定が必要
    P 545
    経営における意思決定のクオリティは「アート」「サイエンス」「クラフト」の三つの要素のバランスと組み合わせ方によって大きく変わる
    P 572
    つまり、アートとサイエンスとクラフトを並べてみた場合、現在の企業組織においては、三者が対等な立場で戦えばまず間違いなくアートが敗れるということです。これが、三者のバランスが大事だと言われながら、結局のところサイエンスとクラフトに意思決定の重心が寄っていってしまう最大の要因です。
    P 576
    アカウンタビリティというのは、「なぜそのようにしたのか?」という理由を、後でちゃんと説明できるということ です。では「アート」「サイエンス」「クラフト」と並べてみた場合、後で説明できるのはどれかということになると、これはもう圧倒的に「サイエンス」と「クラフト」ということになるわけです。
    P 588
    これを別の角度から言えば、アカウンタビリティというのは「天才」を否定するシステムだ、ということになります。
    P 642
    アートを担う創業者が、会社を育てる過程でサイエンスを担うプロ経営者を雇い、しばらくの間は蜜月が続くものの、やがてサイエンス側に会社を牛耳られてしまうという構図は、アップルにおけるスティーブ・ジョブズとジョン・スカリーの関係を持ち出すまでもなく、よく見られることです。
    P 685
    この問題を解決する方法は一つしかありません。 トップに「アート」を据え、左右の両翼を「サイエンス」と「クラフト」で固めて、パワーバランスを均衡させる ということです。
    P 1,445
    システムの変化があまりに早く、明文化されたルールの整備がシステムの進化に追いつかない世界においては、自然法的な考え方が重要になってきます。
    P 1,724
    変化の激しい状況でも継続的に成果を出し続けるリーダーが共通して示すパーソナリティとして、この「セルフアウェアネス=自己認識」の能力が非常に高い ということを発見しました。  セルフアウェアネスとはつまり、 自分の状況認識、自分の強みや弱み、自分の価値観や志向性など、自分の内側にあるものに気づく力のこと です。
    P 1,994
    リーダーシップの問題 だということになります。なぜならば、何が「真・善・美」に適うのかを判断するに際して、「客観的な外部のモノサシ」に頼って右往左往することなく、自分の立ち位置をしっかりと見定めた上で、「主観的な内部のモノサシ」に従って意思決定することが必要になるからです。
    P 2,170
    手法の名称に「デザイン」などと入っているのでややこしいのですが、「デザイン思考」というのは問題解決手法であって、創造の手法ではありません。従って、ゴールは「問題が解決されること」であって、そこに感動があるかどうかは問われない。
    P 2,268
    アートを見ることによって観察力が向上する ことを証明しまし
    P 2,419
    エリートの見識を養成するための教育施策として最も普遍的に行われているのが、哲学教育
    P 2,475
    エリートが得てして「すぐに役に立つ知識」ばかりを追い求める傾向があることを指摘し、「 すぐに役立つ知識はすぐに役立たなくなる」と言って基礎教養の重要性を訴え続けましたが、哲学の学習についても同じことが言えます。
    P 2,521
    自分にとっての「真・善・美」を考えるにあたって、最も有効なエクササイズになるのが「文学を読む」ことだと思います。

  • 教養としてのドラッカー
    カント
    ー真:純粋理性批判
    ー善:実践理性批判
    ー美:判断力批判
    選択と捨象
    脳科学は何を変えるか
    失敗の本質
    科学と仮説
    消費社会の神話と構造(人々はけっしてモノ自体を消費することはない。理想的な準拠として捉えられた自己の集団への所属を示すために、あるいわより高い地位の集団を目指して自己の集団を抜け出すために、人びとは自分を他者と区別する記号として(最も広い意味での)モノを常に操作している。ージャンボードリヤール)
    ブランド帝国LVMHを創った男 ベルナール・アルノー、語る
    デザイン思考を超えるデザイン思考
    菊と刀
    資本主義の中心で、資本主義を変える
    人生を変える読書 人類三千年の叡智を力に変える
    デザインのデザイン
    プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神

  • 期待を大きく超える面白さ。サブタイトルの方がしっくりくる。全体の流れ、時代のうねりを捉えようとする試みには共感する。確かにその通り、と思える言葉がたくさんあった。
    ■「分析」「論理」「理性」に軸を置いた経営、言わば
     「サイエンス重視の意思決定」では今日のように複雑で
     不安定な世界においてビジネスの舵取りはできない。
    ■正解のコモディティ化
    ■「真・善・美」が感じられる打ち手を内省的に創出する
     構想力、創造力
    ■自己実現的消費 「アップル製品を使っているワタシ」
    ■実定法主義と自然法主義。システムの変化が早すぎる
     現在、グレーゾーンでのビジネスは自然法主義で行う
     べし。
    ■Google "Don't be Evil" 邪悪になるな
    ■人生を評価する、自分なりのモノサシを持ちなさい
    ■セルフ・アウェアネス 自分の状況認識、自分の強みや
     弱み、自分の価値観や志向性など、自分の内側にある
     ものに気づく力。
    ■システムを無批判に受け容れず、相対化する
    ■市場におもねる目線ではなく、自らの美意識で市場を
     教育する目線

  • 言語化が難しい美意識・センスの部分の重要性に再度気付かされた本。
    感覚的なところが、理論的に記載があることで、頭にスッと入ってくる。山口周さん大好きです。

  • これまでのような「分析」「論理」「理性」に軸足を置いた経営、すなわち「サイエンス重視の意思決定」では、今日のように複雑で不安定な世界において、ビジネスのかじとりをできないから。「直感」「感性」をもとにしたアートが求められる。
    ・以下具体的な理由
    ①論理的・理性的な情報処理スキルの限界が露呈しつつある
     ・正解のコモディティ化=差別化の消失
     ・方法論としての限界=問題を構成する因子の増加、かつ動的に複雑に変化。
     ・要素還元主義の論理思考は機能せず、全体を直感的に捉える感性と、「真・善・美」が感じられる打ち手を内省的に創出する構想力や想像力が求められる
     ・太平洋戦争の諸々の作戦の失敗が「空気」をもとに決まったことのトラウマから、日本は「理性」「論理」に傾きすぎている。「アート」「サイエンス」双方のバランスが大切である。
    ②世界中の市場が「自己実現的消費」へ向かいつつある
    ・市場において、消費者が求める便益は、機能的便益→情緒的便益→自己実現的便益へとうつっていく
    ・全ての消費ビジネスがファッション化しつつある
    ・商品において、機能、デザインは簡単にコピーできるが、ストーリーはまねできない。
    ・日本はすぐれた世界観とストーリーをもっており、これを利用しない手はない
    ③システム変化にルールの制定が追いつかない
    ・エリートは達成動機の高さのために、しばしば法のグレーゾーンを踏み越えてしまうことがあるため、内在化された倫理や美意識をもつことが重要

    ・ソマティック・マーカー仮説:情報に接触したとき、前頭前野腹内側部に影響を与えて感情的に「ありえないオプション」を排除する
    ・「美しい」と感じたとき、内側眼窩前頭皮質が活性化する。またこの部位は意思中枢の決定にかかわっている

    ・ハンナ・アーレント:ナチスのアドルフ・アイヒマンについて書いた本の副題が「悪の陳腐さ」。悪とはシステムを無批判にうけいれること。そこには一種の「誠実さ」があり、「誠実さ」のために悪がおこるのだとすれば、我々は誰でも悪に手を染める可能性がある
    ・これの対策は「システムを相対化」することしかない=自分なりの「美意識」を持ち、その美意識に照らしてシステムを批判的にみる
    ・システムを修正できるのは、システムに適応しているひと=エリートしかいない

    ・美意識を鍛えるためにアートを。特に哲学。「コンテンツ」ではなく、「プロセス」や「モード」をまなぶ。他に詩。「レトリック=修辞」を学ぶ

    ・自分自身の行動指針とするために、「美意識」を鍛える必要がある

  • 筆者のニュータイプの時代と言う本が印象的でしたので、タイトルが目を引く本書を手に取ってみました。
    要所要所で小さくまとめがはいるので、読み手としてはとてもわかりやすかったです。
    内容では、経営におけるアート・サイエンス・クラフトのバランスと言う考え方は、経営だけでなく子どもたちの教育でも役に立ちそうです。
    その他にもサイエンスとクラフトにあたるデータと経験に基づいた考え方の限界や、美しいものを目指すと必然的に良いものになると言う考え方など、色々と学べる事ができました。

  • 物事の1つの、そして重要な判断基準が「美意識」。必ずしも言語化し切れない自分なりの軸、主観的な内部のモノサシが大事とのこと。

    同じ組織に属し続けている自分には気付かずに主観的な内部のモノサシではなく、組織が求める客観的な外部のモノサシに頼って判断しているケースが有るのだろうな。

    昨今、多くのグローバル企業などで実施されているというVTS(Visual Thinking Strategy)を意識して鑑賞力向上を意識し、哲学からその哲学者の思考のプロセスや世界や社会への姿勢(モード)も身に付けてみたい。

  • 出版から時間が経っているから、前半は退屈に感じたけど、後半はコンプライアンスとの関係にも触れていて、興味深く読めた。他の本も読んでみたい。

  • 直感力。

  • 本書で問題提起にしていた、

    1. 論理的情報処理スキルの限界
    2. 自己実現欲求市場の登場
    3. システムの変化にルールが追い付かない世界

    という章立てからのアートの必要性はわかりやすいタイトルでとても納得感がありました。

  • 今までロジカルシンキングやクリティカルシンキングなどロジック重視で会社から指導されてましたが、ここのところすごく違和感を感じていました。

    結局何も出来ない。進まない。動かない。

    何のためにその仕事を進めるのか。やる意味は?利益は出せる?当然100%の答えは出せず、最終的には何も進まない。不確実性の時代において確実に答えを出せることはない。

    この書を読んで感性や直感の大事さというものを感じることが出来た。ただし直感だけでは当然ダメでバランスが大事。

    真・善・美

    武士道に共通する部分もあるのかな?
    美しいと感じるものには普遍的なものがある。人間が古来から美しいと感じるもの。普通に考えたらわかることを利益や便益のために無理やり曲解している時が自分にもある。自己欺瞞。

    美意識を持つことも大事だが自分を厳しく律することがさらに大事である。人間は弱い生き物だから。

    • マッピィさん
      こんにちは、

      山口周さんはjwaveでラジオ番組をやってます。
      この番組でいろいろな本を紹介してますのでオススメです!

      こんにちは、

      山口周さんはjwaveでラジオ番組をやってます。
      この番組でいろいろな本を紹介してますのでオススメです!

      2023/07/27
    • ケロヨンさん
      マッピィさん、コメントありがとうございます!

      一度聞いてみたいと思います!
      マッピィさん、コメントありがとうございます!

      一度聞いてみたいと思います!
      2023/07/27
  • ・アート、サイエンス、クラフトのなかでアートが先行し、サイエンスとクラフトが論拠づけする
    ・現代はサイエンスとクラフトの限界を迎えている
    ・イノベーションは真似できても、その裏にあるヒストリーは真似できない
    ・自分自身の美のモノサシを持つ

  • ・言っていることはわかるも、今の自分の仕事レベルではまだ使わない部分が多い気がする。ただ、部長レベルから要求されることの中に一部「アート」があると再考。
    ・論理や理性を最大限に用いてもはっきりしない問題には直感や感性で判断していけ。(⇒論理や理性はベース)
    ・現在の世の中(=システム)は変化が早すぎて明文化されたルール(=法律)が制定されていないことが多い。その場合は、ルールが後で変わる場合もあるし、論理を突き詰めても情報が足らなくて、決められない場合もある。自分なりの美意識に照らし合わせて物事を判断する必要がある。ルールがおかしいと気づく人材にになる必要がある。外の世界を知る(転職?)。美意識とは目の前でまかり通っているルールや評価基準を「相対化出来る知性」を持つ。
    ・但し、アートとサイエンスがぶつかるとアカウンタビリティ(言語化・再現化)を持つサイエンスが必ず勝つ。クラフト(=過去経験)もアートには勝つ(サイエンスとは良い勝負)。失敗した際に、なぜ失敗したかを説明して責任逃れが出来るので、リーダーシップの放棄も相まって、サイエンスが強い。
    ・失敗やエラーは常に論理的に説明できるし、論理的破綻は失敗に繋がる。・企業組織はトップがアート型で側近がサイエンス型がうまくいく。
    ・自己実現的な消費が高まりかつVUCAの時代に論理的な問題解決は機能せずに、マーケティングという顧客の認識が全ての現代において、顧客に世界観・ストーリーを提供できるかがカギ。
    ・エリートは既存システムの中で高得点を取ることが得意であるが、既存システムを疑うことには興味がない。システムを変えるためには、システムの外から文句を言うだけでは歴史的に見ても変わっていない。中で適合しながら、修正をしていくことが重要。
    ・専門家として能力を高めるというプロセスはパターン認識力を高めていくということ。パターン認識を増やすことで毎日の繰り返しを省力化できる。一方で変化に対応出来ない。今後直面する世界の問題は過去の問題解決において有効だった手段が必ずしも使えない状況。パターン認識力の高さがそのままの問題解決能力に繋がらない。(チャレンジャーセールスモデルと同じこと言ってる)。どうすれば良いか、それは問題を純粋に「見る」に尽きる。
    ・美意識を鍛えるには、哲学、文学。哲学はコンテンツは陳腐化しているが、プロセスとモード(当時の世論への哲学者の向き合い方)は学びがある。
    ・コンサルティング企業は経営にサイエンスをもたらすことが付加価値(であった)。

  • 山口周さんがお話ししている動画を拝見してファンになり本書を読みました。

    この本とは別に『武器になる哲学』という本も併読して読んでいたのですが、その中でアリストテレスのロゴス・エトス・パトスという考え方が最初に紹介されていました。

    その哲学を用いて考えると、美意識というのはエトス(倫理)の部分なんだろうなと解釈してます。

    エリートっていうのは多分ロゴス(論理)が発達した人で、ただロゴスの限界もある、だから美意識で差が出る。ということが前半部分でいろんな事例を挙げて書かれていたと思います。

    そして最終章の「どう美意識を鍛えるか?」という部分で紹介されていたのが「絵画を見る」「哲学に親しむ」「文学を読む」「詩を読む」の4つです。

    最後まで読んで思ったのですが、自分はむしろ「絵画を見る」「哲学に親しむ」「文学を読む」「詩を読む」+αで「映画を見る」「音楽を聴く」「演奏をする」「歌を歌う」「言葉を書く」みたいなことばかりに関心があったこれまでの人生でしたがそれはつまり美意識ばかりを鍛えてきたんだなという気がしました。

    ただ自分はエリートではないのでむしろエリートになる努力とかをもうちょっとできたらよかったのかなって思う反面、エリートって人はこんなにも美意識っていう問題意識が薄いんだなというのは本書を読んで初めて「そうなんだ…」と腹落ちした部分でした。

    本書を読んだ後だと、社会の中で働いていてうんざりするシーンっていうのは美意識の差なんじゃないのかなって気がしてきます。

    逆に美意識が高いことで集団の中で浮いてしまうシーンもたくさんあるし、相手の美意識に合わせて自分を調整している部分もある気もします。

    ということで、美意識を鍛えるという点においては自分の場合ただ好きなことをこれからもやっていけばいいんだなあと思いましたが、一方で「美意識の差を理解する」とか「エリートの人が磨いている意識を自分も鍛える」みたいな努力をしたらもっといいのかもなと思いました。

  • ■ひとことで言うと?
    アート思考の実践→美意識=直感的判断力の向上

    ■キーワード
    - 美意識が求められる背景
    - 合理的判断の限界・自己実現欲求の大衆化・社会変化の高速化
    - 自分のスタイル=美意識を判断の拠り所とする
    - 美意識による判断+論理による検証
    - 美意識=真・善・美
    - 真:直感
    - 善:倫理・道徳感
    - 美:審美感
    - 美意識を鍛える
    - アート鑑賞:見る力の強化
    - 哲学教育:思考過程・社会との向き合い方の学習
    - 詩を読む:メタファーの学習

  • 会社の図書館で借りたが読み切れなかった。
    まあ自分はこの本で書かれているようなエリートではないので、ふーんって思いながら読んでいた。

    ただ自分の中に「真・善・美」を持つことはエリートに限らず大事なことで、それがしっかりしていることがその人の魅力につながるんだと思う。これは自分の中にも育てていきたいと思った。

    世界のエリートは、会社やひいては社会のシステムに非常に高い水準で適合することで高い報酬や名声を得ている。そのシステムが己の美学に則っているのか?そのような目線を持つことがきっと今エリートに求められている。

  • 最初は面白くないと思ったけど、後半にかけて納得する点が多かった。

    経営はサイエンスとアートとクラフト
    アートに触れて美意識を鍛える!

    経営がサイエンスのみ、論理的思考のみであるならば、コモディティ化する
    AIに任せればいい

    経営において、論理的に白黒つけられない問題があった場合、最後は個人の美意識
    →美意識を鍛えるにはどうするか、アートや文学等、芸術、嗜好に触れる

    偏差値が高いが美意識が低い人(オウム真理教)は文学を読んでいない。
    →サイエンス寄りになってしまう

    アートに触れると観察力が上がる(エール大学の実験)
    →ワインを飲んで思ったこと。アートではないが。
    ワインは様々な香りや味を探らなければならない。そのように感受性を高めていると、日常でも観察眼が良くなり気づくことが多くなる。

    デザインと経営には共通点がある。
    エッセンスを残して、後は捨てること。
    どれも優れているたくさんの案から捨てる決断をする

    ↓メモ
    ★ここまでの考察を一言でまとめれば、「論理的にシロクロのはっきりつかない問題について答えを出さなければならないとき、最終的に頼れるのは個人の『美意識』しかない」ということになります。

    論理思考というのは「正解を出す技術」です。私たちは、物心ついた頃から、この「正解を出す技術」を鍛えられてきているわけですが、このような教育があまねく行き渡ったことによって発生しているのは、多くの人が正解に至る世界における「正解のコモディティ化」です。

    では「他の人と戦略が同じ」という場合、勝つためには何が必要になるでしょうか?  答えは二つしかありません。「スピード」と「コスト」です。

    アートを担う創業者が、会社を育てる過程でサイエンスを担うプロ経営者を雇い、しばらくの間は蜜月が続くものの、やがてサイエンス側に会社を牛耳られてしまうという構図は、アップルにおけるスティーブ・ジョブズとジョン・スカリーの関係を持ち出すまでもなく、よく見られることです。

    グーグルに大きな収益をもたらしている YouTube については、買収当時、多額の買収費用を回収するだけのビジネスに育てられるかどうか、疑問視する声が評論家からは多数上がりました。彼ら評論家の指摘はごくごく真っ当であり、いわば「論理的であり理性的」でした。対するグーグルのコメントは「弊社のミッションは〝世界中の情報を整理する〟ことであり、言うまでもなく動画は情報である」というそっけないもので、収益性や事業性についての見通しはほとんどコメントされませんでした。

    ★もし 経営における意思決定が徹頭徹尾、論理的かつ理性的に行われるべきなのであれば、それこそ経営コンセプトとビジネスケースを大量に記憶した人工知能にやらせればいい

    絵を描くことはリーダーに求められる様々な認識能力を高めることがわかっており、実際に自ら芸術的な趣味を実践しているという人ほど、知的パフォーマンスが高いという統計結果もある

    ★「デザイン」と「経営」には、本質的な共通点が
    一言で言えば「 エッセンス(本質)をすくいとって、後は切り捨てる」ということです。 そのエッセンスを視覚的に表現すればデザインになり、そのエッセンスを文章で表現すればコピーになり、そのエッセンスを経営の文脈で表現すればビジョンや戦略ということになります

    ★多くの人は、「優れた意思決定」というのは「優れた案を選択すること」だと考えています。しかし、実際にはむしろ逆です。つまり、「優れた意思決定」の本質というのは、「選択すること」にあるのではなく「捨てること」、すなわち「一見すればどれも優れているように見えるたくさんの案を、まとめて思い切って捨てる」ことにこそある のです。この「思い切って捨てる」点はまた、デザインやクリエイティブにおいても、本質的な重要性を持っています

    ★エール大学の研究者グループは、 アートを見ることによって観察力が向上する ことを証明しました

    直接的な疾病に関する診断能力だけでなく、全般的な観察能力、特に細部の変化に気づく能力が 10% 向上したこともレポートされています。

    ★ちょっとしたヒントから洞察を

    パターン認識は、毎日の繰り返しを、エネルギーを省力化して効率的に過ごすには大変大きな武器なのですが、その一方で「変化を捉える、変化を起こす」には大変重い足かせになっている

    ★諸君が野原を歩いていて一輪の美しい花の咲いているのを見たとする。見ると、それは菫の花だと解る。何だ、菫の花か、と思った瞬間に、諸君はもう花の形も色も見るのを止めるでしょう

    ★「偏差値は高いけど美意識は低い」という人に共通しているのが、「文学を読んでいない」という点であることは見過ごしてはいけない何かを示唆している ように思います

  • ここでいう美意識とは、自分なりの「真、美、善」の基準のことを指す。この本を読み、美意識は悪と自分の現在地の距離を測るモノサシ的な役目を果たすのだということがわかった。
    変化が絶えず起こる現代で、常識やルールなどを鵜呑みにすると、間違いを犯すこともある。
    各々が美意識を高め、それに沿って意思決定をすることが大切だと私は解釈した。
    一方、本書では美意識のみを用いるのではなく、サイエンスやクラフトといったものも欠かせないと述べている。3者がバランスよく機能することが大切。

    また、余談ではあるが、哲学は思考の過程や世界との向き合い方を学ぶためにも勉強した方が良いという内容も印象に残った。

  •  著者の『読書を仕事につなげる技術』を読んで、いい本だったので、続けてこの本を読んだ。まぁ。我田引水というか、経営を美意識につなげる苦労をしている感じである。「分析」「論理」「理性」に軸足をおいた経営、いわば「サイエンス重視の意思決定」では、今日のように複雑で不安定な世界においてビジネスの舵取りをすることはできないという指摘はよくわかる。
     本書でいうサイエンスは、データやマーケティング調査という意味合いが多い。市場にないものを売り出すときに、市場調査をしたとしてもよくわからないということだ。
     それにしても、日本の企業の痛み加減は、半端ではない。コンプライアンス時代になりながら、売上至上主義と効率性追求によるコンプライスに抵触する企業が多いのだ。東芝の粉飾決算、三菱自動車の23年にわたるリコールの隠蔽(池井戸潤(著)『空飛ぶタイヤ』で取り上げられた横浜母子3人死傷事故。)、本書で取り上げられているDeNAの2万1000件に及ぶ著作権侵害、医薬品医療機器等法(薬機法)や医療法などに違反する可能性のコンプライアンス違反。最近では東京オリンピックをめぐって、組織委員会の元理事が、スポンサーの契約業務を請け負った紳士服の「AOKIホールディングス」、出版「KADOKAWA」、広告会社の「大広」、広告のADKホールディングスなど会社のトップが捕まっている。まだまだ、その暗闇は出てくる可能性がある。まぁ。中国の賄賂の規模とはかなり少額なのだが。本人たちは、悪いことをしたと思っていないところに、闇がある。
     真面目にやっているはずなのに、どこかで不具合おこし、それを隠蔽することが、当たり前になってしまったという日本の企業の危うさ。日本の最低賃金の低さ、賃金の低さなど、目を覆う状況だ。一部上場会社が、派遣職員や海外実習生を使ったりすることで、低賃金を維持しているのである。一部上場会社は、派遣など、ヤメレと言いたい。
     本書で強調されているのは、アート、サイエンス、クラフトの3つのバランスが経営には必要だという。今の日本の会社は、論理、理性、効率性を重視することで、スタンダードなコモディティの商品を作り、みんな同じような仕事になっている。それでは変化の激しい世界のビジネスには対応できない。以前のようにスピードとコストでは勝てなくなってきている。会社経営にアートやクリエイティブ性が欠如しているというのである。サイエンスとクラフトは、アートに勝ちやすい。経営の根拠が表しやすいからだ。そのために、アートやクリエイティビティが押さえられる。会社経営のトップが、アートに力を入れ、ワクワク感を持った経営をし、それを実行できるような布陣を引くべきだという。
    現在は、VUCA(不安定、不確実、複雑、曖昧)という言葉に象徴される時代で、正解が出しにくい。そのために、直感、感性による「真善美」からの構想やクリエティビティに軸足を持った経営が要求される。現在強調されている「デザイン思考」をさらに押し進めた経営手法が必要だ。
     コンサルティング会社が、デザイン会社を買収したりするのも、グレイコンサルティング(経験者のこと)から、脱してアート的なコンサルティングが必要になってきている。世界が自己実現要求による消費が高まり、ビジネスが表現行為となることで、美という普遍性に共感を生み出す。
     自動車会社のマツダは、日本美を追求したクルマを作り出している。このことに意味があるのだ。
     著者は、オーム真理教は、高学歴なのに関わらず、美意識が低いということが、端的に表していると指摘する。サティアンの形状が倉庫みたいであることや掲げられている絵画などが美意識に遠すぎる。受験戦争に鍛え抜かれた高学歴者だから、オーム真理教にハマった。美意識レベルが、あまりにも低いことだった。この指摘はおもしろい。まぁ。今は東大出て、クイズ王というタレントになるというなんとも言えない貧しさ。質問があれば、答えを出すというパブロフの犬の反射神経で、受験戦争を耐え抜いてきた結果だ。考えることの大切さ、人と交わることなどの重要性など、小林秀雄と岡潔の強調していることが、理解できる。
     美意識、直感、感覚を鍛えること。それを学ぶことは、そう簡単ではない。秩序を維持するのではなく、秩序を突破することこそが、経営に必要なのだ。美意識を鍛えるために、哲学に親しみ、文学や詩を読み、写真を撮る。会社のビジョン、行動規範、経営戦略、プロダクトに美意識を判断基準に入れることだ。まぁ。この本は経営には、美意識が必要だということを多面的に考察している。意味がある本である。

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著者プロフィール

1970年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科美学美術史学専攻、同大学院文学研究科美学美術史学修士課程修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ、コーン・フェリー等で企業戦略策定、文化政策立案、組織開発等に従事した後に独立。現在は「人文科学と経営科学の交差点で知的成果を生み出す」をテーマに、独立研究者、著作家、パブリックスピーカーとして活動。現在、株式会社ライプニッツ代表、世界経済フォーラムGlobal Future Councilメンバーなどの他、複数企業の社外取締役、戦略・組織アドバイザーを務める。

「2023年 『新装版 外資系コンサルが教えるプロジェクトマネジメント』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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