流 (講談社文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 1970~80年代、暴力と折檻、因果応報、目には目を、身体と身体のぶつかり合い。本省人と外省人の反目、抗日戦線・国共内戦の遺恨、連綿と続く憎しみの連鎖。終戦直後の日本を彷彿とさせる、荒々しく混沌とした台湾、饐えた臭いの充満した台北の街で暮らす主人公、葉秋生の青春時代を描いた力作。

    秋生(17歳)の祖父・葉尊麟が何者かに殺された。葉尊麟は、かつて国共内戦の際にある村の村人を根絶やしにしていた外省人。祖父思いの秋生は犯人を探そうと躍起になるが、警察は本腰を入れず一向にらちが明かない。御狐様、幽霊騒動、ヤクザ者との諍い、退学と兵役、手痛い失恋。そしてやっと手掛かりを得た秋生は9年後、犯人を突き止めるため大陸へと足を運ぶ。

    台湾生まれの著者ならではの(ホントかな?)、台北の街の雰囲気手痛い映像がリアルに伝わってくる力作。読み応え十分だった。ミステリーの要素もある。

    初めて中国の地に降り立った秋生。「この国は、大きいものはとてつもなく大きく、小さいものはあきれるくらい卑小なのだと。ちっぽけな台湾や日本のような平均化を拒絶する、図太いうねりのようなものを感じた。」という独白が印象的だった。

    ロバート・ハリス氏の解説によれば、著者は「アメリカの小説家、エルモア・レナードを文筆の師として仰ぎ、チャールズ・ブコウスキーを「本物の男、本物の作家」として愛し、ガルシア・マルケスを「彼は神様だ」と称える」とのこと。これらの作家の本も読んでみたくなった。

  • 台湾の熱気と、荒々しさと、危うさが綯い交ぜとなったような青春小説。前半は吉田修一の横道世之介を思いだした。

    この著者は、どうして台湾人の主人公の小説を書こうと思ったのだろう、そこに興味がでてきた。

  • 第153回直木賞

    壮大なスケールの歴史と血族の物語。
    ズラリと並んだ中国の名前の登場人物紹介に気後れし、度々挟まれるその後の展開の描写で混乱し、何度も戻ったり確認しながら苦手な歴史ものを苦戦して読みました。 
    時代背景やアジアの街並み、人物像が目に浮かび、読み終えると一緒に激動の時代を駆け抜けたような爽快感。
    色々詰まって読み応えたっぷり。
    ブクログでいい本に出会えたことに感謝です。

  • 「マルマル読書」でこの著者が高評価でおもしろそうだったので読んでみたんだけど、いろんなタイプの著作があるみたいなので、ほかの作品のほうがわたしには合っていたかも? おもしろくなかったわけではなく、台湾の歴史で知らなかった部分も興味深く読んだし、風景や人やさまざまなものの鮮やかな描写が台湾映画とか見ているような雰囲気でよかったし、ユーモアある文章が好きだと思ったんだけども…。
     あんまり、個人的に、血のつながり、、かたき討ちとか、そういう感じに興味が持てないってことなのかも。。。あと、幽霊とか占いとか言い伝えとか、超常現象というかフォークロアというかそういうのが苦手だからかも。。。あと、度胸試し的な喧嘩だとか軍隊でのしごきみたいなこととかそういうマッチョ?男っぽい?話がそんなに好きではなくて、笑えなかったからかも。
    恋愛ものとか青春ものとかの要素はすごく好きだったんだけど。
    ほかの作品を読んでみたい。

  • 義に篤くエネルギッシュに生きる台湾の男たちのなんと暑苦しいことか。日本だってつい数十年前までは結構こんな感じだったんだろうな。

    ほんの少し、池上永一みを感じた。あそこまでハチャメチャではないけど。沖縄と台湾で何か共通するバイヴスを感じてしまうというか、同じカテゴリに入れてしまうのは私の解像度が低いからかなーたぶん


    来月の台湾旅行へ向けて気分を盛り上げる、という役目を十分に果たしてくれたので満足。植物園今もあるみたいだから行ってみようかな。

  • フィクションではあるが、ほんの数十年前にこんないう感じの世界がすぐお隣の国であった、しかも、日本はその状態を作ったきっかけになってた、という事に、大いに驚いた。学校では近代史、そしてその影響を受けている現代のアジアの社会や、民族感情についてもっと教えるべきではないかと思う。私自身、能天気過ぎるな、と反省。

  • 台湾の高校生が、何者かに殺害された祖父の事件の真相を追いながら、悪友と色々ありつつ恋愛、軍の訓練と青春時代を過ごして成長していく10年ほどを描く。台湾の歴史や文化、日本や中国との関係にも触れられている。
    半年以上細切れに読んでいたと思う。それくらい、中盤は表現は面白いものの登場人物は難しいしどこに向かっているのか分からず片手間で読んでしまった。
    最後の2章ほどで急展開し、一気に伏線を回収してきたのは圧巻だった。

  • 2020.6.19
    台湾の時代背景とか当時の状況とかを知らないのでイマイチ分かり得ない所が多かった。
    けど、もうダメだって所からも人生は続いていくのはこの歳になるとよく分かる。
    なんかその流れが熱かったです。
    初恋を引きずるのはいつも男。
    あの娘は元気にしてるかな…

  • ドライブ感のある構成とキレのいい文章でぐいぐい読ませる。猥雑な土と熱い風の匂いのするお話でした。好み。何冊か作家読みしてみようと思う。

  • 日本がバブルの時代、台湾ではまだ抗日戦や共産党と国民党の闘いの余韻が色濃く残る戒厳令下にあった混沌とした時代、英雄であった祖父の死の真相を知ろうとするストーリーをメインとしながらも恋愛あり友とヤクザとのいざこざに巻き込まれたり台湾版青春の門のような物語。戦争の英雄は、相手からみれば悪魔のような存在、どちらが先かなど真相はわからず憎しみの連鎖だけが一人歩きしていく。それでも人情もあり後悔もあり人は生きていく。

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著者プロフィール

1968年台湾台北市生まれ。9歳の時に家族で福岡県に移住。 2003年第1回「このミステリーがすごい!」大賞銀賞・読者賞受賞の長編を改題した『逃亡作法TURD ON THE RUN』で、作家としてデビュー。 09年『路傍』で第11回大藪春彦賞を、15年『流』で第153回直木賞を、16年『罪の終わり』で中央公論文芸賞を受賞。 17年から18年にかけて『僕が殺した人と僕を殺した人』で第34回織田作之助賞、第69回読売文学賞、第3回渡辺淳一文学賞を受賞する。『Turn! Turn! Turn!』『夜汐』『越境』『小さな場所』『どの口が愛を語るんだ』『怪物』など著書多数。訳書に、『ブラック・デトロイト』(ドナルド・ゴインズ著)がある。

「2023年 『わたしはわたしで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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