新記号論: 脳とメディアが出会うとき ゲンロン叢書 [Kindle]

  • 株式会社ゲンロン
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感想・レビュー・書評

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  • テクノロジーの変化・浸透が人間の認知・コミュニケーションをどのように規定しているのか/いくのか。ゲンロンカフェでの対談型講義を収録。ファッションとしての哲学を感じる一冊。記号をピラミッドとして構造的に扱う整理は興味深い。

  •  記号論とはなにか。歴史からここまでの新しい言説までをまとめたものである。知を愛するものであれば必読の書である。
     この分野はコンピュータ、AIの発展の礎になっているし、そもそもメディアを探究する場合にも必要になるものである。
     本書に「ヒトはみな同じ文字を書いている」、「ニューロンリサイクル仮説」を取り上げた箇所がある。ヒトが進化の過程で森で生活していた時期があるとされる。その森での生活でモノを見分けるのに使っていた視覚に関する身体の部位や脳の視覚野。これを文字を読むことに転用しているのではないかということの根拠にしているのである。
     グラフィックレコーディングにおいて、文字を書く、絵を描くということは基本中の基本である。その学びにおいてこの考えは大変大きな示唆となる。

  • ゲンロンの本だし面白そうだなと購入。しっかしムズイ。あずまんが補足してくれてても理解に及ばないところだらけだった。んが、メディアとの在り方についてなんとなくでも理解できたのは良かったと思う。もう3周くらい読んだらわかるかなぁ
    (笑)

  • 読んでおけてよかった一冊。
    テクノロジーの視点からとらえた現代について、さらに哲学の視点からしっかりとらえなおすことができた。まだ理解しきれていないところもあるので、機会を見つけて咀嚼したい。
    また、夢についても認識を新たにできてよかった。


    ■目次

    ・第1講義:記号論と脳科学
     -映画について
     -デリダの「ファルマコン」の問題とメディア論
     -現代記号論とアナログメディア
     -デジタルメディアの出現
     -言語中心主義に対する、新記号論における「文字」
     -メディアの「技術的無意識」
     -文字に関するいくつかの認知科学的知見

    ・第2講義:フロイトへの回帰
     -フロイトの「不思議メモ帳についての覚書」
     -フロイトの第一局在論と第二局在論
     -フロイトの心的装置モデルの原則(「第一局在論」以前の考察から)
     -第一局在論
     -物表象と一次過程・二次過程
     -フロイトの「夢の過程」
     -第二局在論
     -超自我と「集団の心」
     -ソシュールの立場(記号内在主義)
     -欲望と抑圧のコミュニケーション
     -第三のコミュニケーション
     -文系と理系との分離の行きついた先
     -夢と哲学問題

    ・第3講義:書き込みの体制 1.情動と身体 ──スベテが「伝わる」とき
     -ダマシオの樹と、フロイトとの類似性
     -記号の正逆ピラミッド
     -正逆ピラミッドの界面と情動/感情について
     -スピノザと身体性
     -テレビと「笑い」

    ・第3講義:書き込みの体制 2.記号と論理 ──スベテが「データ」になるとき
     -テクノロジー変遷と指標・類像・象徴のコミュニケーション
     -ブーニューとデリダの「現在」
     -『記号』接地問題
     -ボトムの界面にあるパラダイム
     -「記号の正逆ピラミッド」と夢」
     -述定と仮説形成(アブダクション)
     -パースとブーニューの『記号』設地問題
     -現象学の『記号』設置問題
     -まとめ:そもそも記号とはなにか、記号が成立するとはなにか

    ・第3講義:書き込みの体制 3.模倣と感染 ──スベテが「ネットワーク」になるとき
     -フロイトの「同一化」とスピノザの「模倣」」
     -感情の感染と権力
     -二〇世紀の資本主義の四つの柱
     -アメリカ型資本主義と消費
     -消費者というポジションから問う
     -まとめ

    ・4つの追伸 ハイパーコントロール社会について
    ・第1の追伸 文字学について
    ・第2の追伸 資本主義について
     -消費資本主義とヒトの情報化(可分子化)
     -図書館産業革命
     -超グーテンベルク的普遍図書館の世界
     -言語資本主義
    ・第3の追伸 権力について
     -アルゴリズム的統治性
     -アルゴリズム的統治は現実そのものを計算する
     -デジタル環境での自己の技法
     -一般文字学の問いとしてのエリクチュール
    ・第4の追伸 自由について
     -「自由」の問題の射程
     -リベットの実験(受動意識仮説)
     -パンデモニアムによるエージェンシー・モデルとしての自由の主体
     -データと無意識と自由
     -カルドンのデータ計算アルゴリズムの類型
     -ジルベール・シモンドンの心理的・集団的固体化
     -自由とは
     -固体化と共有、ちぐはぐなもの
     -自己のプラットフォームをどうつくれるか

  • 東浩紀と石田英敬のゲンロンカフェでの3回の対談。石田英敬の新記号論の目論見を、東浩紀が質問したり補足したりするので、理解しやすい。註も豊富で読みやすい作りになっている。デジタルな情報科学の登場によって、思想として古くなってしまったアナログな記号論を、脳科学や認識科学から組み立て直し、新記号論=一般文字学、大きく捉えたメディア論の一つとして更新する。ライプニッツに始まる普遍記号論から辿り、フロイトの無意識理論を神経科学の観点から再考し、ソシュールの言語学へと繋げ、無意識の映像性をを引き出し、通説であったラカンの言語的なフロイト観の批判を行う。脳科学と認知神経科学が世界の文字・記号・形象の分布と同じであり、「全ての人間は同じ文字を読み書きしている」という最新の結果を提示し、文字・記号・形象の相関性を強調する。スピノザ、フロイト、ダマシオの「感情による情動の捉え直し」、フッサール現象学と記号学のアップデートとしてのデリダ、パースとブーニューのを統合して「記号の正逆ピラミッド」を示す。上部に広がる記号論の統合と下部の情報科学の構図。記号にまつわる思想史をまとめあげ、人間的記号と情報的記号の相関性を表した図は極めて明晰。
    ナチの影響で危険と捉えられたハイデガー思想の「人々が身体で集合的につながっていく問題」に取り組んだフランス現代思想は政治的な部分を脱臭したため文学化した。それらを引継ぐ残党や北米文化左翼、社会学化したドイツ哲学は科学との連携を切ってしまっている。一方で現代社会は、資本主義によって、労働、生産、欲望(消費)の文法化が行われ、情報革命によりモノ、ヒトがデータにかわり主体が微分され続けている。その中で、科学と哲学の関係をもう一度捉え直し、個人としてどう生きるかの批判する力を持つことを提示する。

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著者プロフィール

1953年生まれ。2019年3月末まで、東京大学大学院総合文化研究科教授および同大学院情報学環教授。
著書に『新記号論』東浩紀と共著(ゲンロン、2019)、『大人のためのメディア論義』(ちくま新書、2016)、編著書に『デジタル・スタディーズ』全3巻(東京大学出版会、2015)他

「2019年 『談 no.115』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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