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感想・レビュー・書評
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「批評の教室」がおもしろかったので続けて。
これもすごく読みやすくてわかりやすくく、おもしろかった。古典文学から、現代のエンターテイメントな映画や舞台、いろいろ出てくるのでエッセイを読む感覚で読める。
しょっぱなから著者北村さんのなかに「内なるマギー」がいるって話が好きだった。北村さんのなかに、マギーこと、かつてのイギリス首相マーガレット・サッチャーがいて、すごくおおざっぱに書くと、男社会のなかで成功しなくてはだめ、そのためにはほかの女性を助けてるヒマなんてない、っていうようなことをことあるごとにささやきかけてくるような抑圧があるっていう。文章がおもしろくてサッチャーを思い浮かべてちょっと笑えるんだけど、だれにでも抑圧はあり、それと闘っている、闘っていくことが大切、という話だった。
あと興味深かったのは、文学の研究において、さまざまなストーリーを類型で分類するという手法があって、分類番号がつけられている、とか、キャラクターにおいても「ストックキャラクター」という類型にわけられる、とかいあった話も興味深かった。そんなふうに研究するんだなーとか単純に感心してしまって。けっして小難しい話にはなってないんだけど。むしろ、「腐女子」「ツンデレ」みたいな、もはや知ってるからいまさら言うまでもないみたいにされている言葉でもきちんと説明してくれるのもよかった。
あと、シェイクスピアとか、舞台ではこんなふうに演出される、こういう解釈でこういう演出をされることもある、っていう説明が、さすが数見ている詳しい人はすごいなあと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
フェミニズム批評の視点から文学や映画を捉え直しています。扱う作品は古典から現代まで、幅広く射程に入れています。
冒頭部で「『ローマの休日』と『天空の城ラピュタ』は、平凡な男のもとに高貴な美女が突然現れて彼の運命を変える話」という指摘は、本書が難関すぎも軽快すぎもしない内容であることを予兆させます。
個人的に読んでよかったと思えた箇所は、「隠れたるレズビアンと生殖」と題された章。本章でカズオ・イシグロ『わたしを離さないで』を論じる著者は、本作の題名にもなっている曲に登場する "baby" を「赤ん坊」と再解釈しています。そして、そう読み直すことで、まさしく「隠れたるレズビアンと生殖」の物語に思えてきます。ここで大事なのは、思えてくるという感覚であり手応えです。
上述の冒頭部で、著者は次のように述べています。
「作品が興味深く思えるというのは、作品が優れているというのとは違います。批評
は、対象を優れていると褒める必要はありません。ものすごくひどい作品でも、いったい何が問題なのかなど、いろいろな論点があるはずです。批評というのは、そういう論点を明らかにするプロセスです」
本書を読み終えて、この一節を改めて読むと、なるほどと納得させられました。たとえば自分が苦手としてきた(傑作といわれる)『私を離さないで』を「褒める必要」はなく、「いろいろな論点」を可能にしてくれる作品であると捉え直せました。
フェミニスト批評ということに特にこだわらなくとも、読み手は楽しめる良書でしょう。 -
Kindle Unlimited にあったので。
一気読み。 -
さくさく読めるフェミニズム批評エッセイ。
作者があとがきで「けっこうゆるーい感じを心がけけているので」と書かれているように、もう少しつっこんで深く書いてほしいな、と感じるところもありましたが、『バベットの晩餐会』についてなど、興味深く面白く読めました。 -
お砂糖とスパイスと爆発的な何か—不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門。北村 紗衣先生の著書。フェミニスト、フェミニズム、フェミニスト批評、フェミニズム批評を知りたい人には必見の良書。フェミニスト、フェミニズム、フェミニスト批評、フェミニズム批評を気軽に学ぶことができる北村 紗衣先生のこの本はとても個性的で代わりがない。フェミニスト、フェミニズム、フェミニスト批評、フェミニズム批評の研究者である北村 紗衣先生だからこその内容。
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ディズニー映画以外まったく知らないもしくは見たことない作品ばかりだったけど、それでも楽しく読めたかな。
ディストピアSFの性差別などは、1984年を読んだ時に感じた「どうなのこれ…」っていう不快感を言語化してもらった気分で、スッキリした。
自分の問題だけど、総じて女についての話より男って…みたいな話の方が楽しく読めてしまった。
女だけの街についてとかもとても面白かった。 -
タイトルはイギリスの古い童謡から
What are little girls made of?
Sugar and spice and everything nice.
Niceではない何かに込めた思い
Niceである必要なんかないという思い
「家庭の天使」のまぼろしと「内なるマギー」
バージニアウルフが捉われたもの「家庭の天使」
キャリア女性が捉われがちなもの「マーガレット・サッチャー」男社会での振る舞いを自分事とする。
フェミニスト批評という視点での観察はとても興味深い
「ローマの休日」と「天空の城ラピュタ」、突然現れるお姫様というコンセプトは同じ。 -
途中まで。名誉男性に閉口する現代の女性心理、ハツカネズミと人間の書評など。
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自称「不真面目な批評家」でフェミニズムの専門家である著者が古今東西の作品をフェミニズムの観点から批評した解説をまとめたもの。取り上げられている作品(小説や映画)はちゃんと数えていないが25~30くらいだろうか。
批評はただの感想と違って、分析的に作品を論じるものだ。知っている作品について自分が感じたこととは全然違う観点から語られていると、改めて読み直してみたくなる。
一見するとフェミニズムとは関係なさそうな作品でも、著者の手にかかればそういう観点が読み取られる。作者が意図していなくても、作者のバックグラウンドや価値観は作品に染み出すものだし、書かれた時代の社会全体が現代と異なるジェンダー観を持っていたら、当然それが現れるだろう。それらが独特のテンポで引き出されていくのは、読み物として面白い。
作品が生み出された背景を考えたり知ったりすることは、それ自体の面白さがある。だから作品の批評はそれ自体が作品として成立する。しかし、著者のように批評家としての読み方をしていたら、一般的な読者のようには楽しめないような気がする。少なくとも私には無理だ。
この著者はフェミニズムの専門家だからフェミニズムの視点で読み解いているが、経済学の視点からの批評とか、宗教学の視点からの批評とかもあったら面白そうだ。