推し、燃ゆ [Kindle]

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  • 河出書房新社
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感想・レビュー・書評

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  • 「推し」とは ー 自分が支持、愛好している対象。アイドルグループのファンが自分の好きなメンバーを表すのに使用する「推しメン(イチ推しメンバー)」をさらに短縮した言葉 by 辻堂ゆめさん

    ちまたにあふれる『推し』という言葉。そんな言葉は、80年代の”アイドルオタク”の中で俗語として使われ出したものが2000年代半ばのAKB48隆盛期を経て広く使われるようになったというのが通説のようです。そもそもアイドルという存在はソロシンガーという時代もありました。それが、80年代の”おニャン子クラブ”、90年代の”モーニング娘。”、そして2000年代の”AKB48”に代表されるように、”グループ”としてアイドルが売られるのが一般的になったことで”個”から”個”の”塊”へとスポットライトを浴びる対象に変化が生じました。しかし、”二人は同時に愛せない”と言われるように、人の愛の対象が究極的には常に一人である以上、そんなグループの中でも特定の一人を好きになるという感覚は元々ありうるものだと思います。

    かつて”本命”という言葉がありました。恐らくはこの言葉の先に『推し』という言葉が生まれたのではないかと思いますが、その意味でも言葉自体は新しくても考え方自体は古の世から変わらない、そんなものなのだと思います。しかし改めて考えると、『推し』とは、なんとも不思議な言葉です。私たちが誰かのことを”推薦”する際に、”私は○○を推します”という言葉を使います。それは、私が○○を”推す”のであって、○○自身が何かをするわけではありません。○○が○○を”推す”わけでもありません。そう考えてみても”○○が私の『推し』である”という言葉の使い方はとても不思議であり、とても新鮮です。今の世に生まれた新しい言葉だからこそあり得る独特な言葉の使い方だと思います。

    では、そんな『推し』がもしあなたにもいるとしたら、あなたの『推し』に対するスタンスは次の”どの人”に該当するでしょうか?直感でお答えください(笑)。

    ① 『推しを恋愛的に好きで作品には興味がない人』

    ② “①”のような『感情はないが推しにリプライを送るなど積極的に触れ合う人』

    ③ 『作品だけが好きでスキャンダルなどに一切興味を示さない人』

    ④ 『お金を使うことに集中する人』

    ⑤ 『ファン同士の交流が好きな人』

    なるほど、同じように『推し』という対象がいたとしてもその『推し』へのスタンスというものには随分と種類があることに驚きます。私はここ二年半ほど読書&レビューの日々を送っていますが、そんな私の作家さん&作品へのスタンスで言えば”③”が該当します。思えば私という人間は作家さん個人への関心が極めて薄いことに今、改めて気付きました。

    さて、そんな風に『推し』のことを思う時、上記した五つのパターンのいずれにも属さないと主張する一人の女性がここにいます。その女性は、自らの『推し』に対するスタンスを、

    ⑥ 『作品も人もまるごと解釈し続けること』

    そんな風に説明します。そして、女性は、『推しの見る世界を見たかった』とも補足します。

    ここにそんな女性が主人公となる物語があります。『「推し」のぜんぶが愛おしかった。あたしは推しにだったらぜんぶをささげたくなってしまう』と、一人の『推し』の存在を大切に思う女子高生の物語。『大人になんかなりたくないよ』という言葉を『あたしのための言葉だと思った』という女子高生の物語。そしてそれは、そんな女子高生の『推しが燃えた』というまさかの展開のその先に、人が生きていくことの『痛み』を感じる物語です。

    『推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。まだ詳細は何ひとつわかっていない』『にもかかわらず、それは一晩で急速に炎上した』と、携帯を開いてSNSを確認したのは主人公の山下あかり。そんな あかりは『寝ぼけた目が〈真幸くんファン殴ったって〉という文字』を見て、現実味を失います。『拡散され燃え広がる』状況に、『推しの現状だけが気がかり』な あかり。翌日、電車の中で『無事?』と成美に聞かれた あかりは、彼女の『推し』が昨年引退した時、『三日間、彼女は学校を休んだ』ことを思い出します。そんな成美に『偉いよ、あかりは。来てて偉い』と言われ、『推しは命にかかわるからね』と返す あかり。そんな あかりは『推し』が『ピーターパンを演じていた』十二歳の時のことを思い出します。その時、『あたしは四歳だった』という あかりは『ワイヤーにつるされた推しが頭の上を飛んで行った瞬間から人生が始まった』と思います。そして、実際に『推し始めたのは』高校に上がったばかりの頃でした。『体育祭の予行練習を休み』、自宅で『子どもの頃に観たピーターパンの舞台のDVD』を再生した あかりは『劇中何度も、大人になんかなりたくない、と言う』ピーターパンの言葉を聞いて『あたしのための言葉だと思』います。そんなピーターパンを演じていた『推し』が『アイドルグループ「まざま座」のメンバーとして活躍している』上野真幸でした。ピーターパンを演じ『十二歳だった男の子は頰が落ち、落ち着いた雰囲気のある青年になっている』という今の真幸。そんな今の真幸が『お話よろしいでしょうか』、『ファンの女性に手を上げた?』、『今後の活動は…』とフラッシュに晒される映像を見る あかりは、真幸が『反省しているんですか』という問いに『まあ』と答えたことに、『「まあ」… という言葉は好きじゃない』と以前答えていたことを思い出し『あの返答は意図的なものだろう』と考えます。『あらゆる推しの発言を聞き取り書きつけたもの』を、『二十冊を超えるファイルに綴じ』ている あかり。『CDやDVDや写真集は保存用と鑑賞用と貸出用に常に三つ買う』という あかりは『解釈したものを記録してブログとして公開』しています。『アイドルとのかかわり方は十人十色』という中、『あたしのスタンスは作品も人もまるごと解釈し続けること』と思う あかりは『推しが感じている世界、見ている世界をわたしも見たい』と思います。そんな あかりであっても『今回の件は例外だ』と感じています。『怒ればいいのか、庇えばいいのか、あるいは感情的な人々を眺めて嘆いていればいいのかわからない』という あかりは一方で『これからも推し続けることだけが決まってい』ました。そして、『未来永劫、あたしの推しは上野真幸だけ』と思う あかり、『推しのぜんぶが愛おしかった。あたしは推しにだったらぜんぶをささげたくなってしまう』という あかりが高校生としての日常を送りながらそのすべてを『推し』に捧げていく姿が描かれていきます。

    第164回芥川龍之介賞を受賞したこの作品。そんな賞をわずか21歳にして受賞された宇佐見りんさん。私は今までに同じような年代で同賞を受賞された綿矢りささんの「蹴りたい背中」、金原ひとみさんの「蛇にピアス」を読んできました。”さびしさは鳴る。“というインパクトのある書き出しに続く、”自分の席から動けずに、無表情のままちょっとずつ死んでいく自分を、とてもリアルに想像できる”、という感情を抱く主人公のハツが抱える10代の青春の孤独を描いた綿矢さんの作品。”スプリットタンって知ってる?”というこれまた衝撃的な一言から始まる物語の先に”何も信じられない。何も感じられない。私が生きている事を実感出来るのは、痛みを感じている時だけだ”という19歳の青春のほろ苦さの中に生きる主人公のルイを描いた金原さんの作品。いずれの作品も主人公と同じ年代の作者だからこそ描けるリアルな青春の咆哮がそこに描かれていました。そして、この宇佐見さんの作品もやはり同年代の今を生きる高校生の山下あかり視点の物語が展開していきます。

    そんなこの作品で宇佐見さんが取り上げるのが『推し』です。”ファンが応援している人を指し示すときによく使う言葉です”と『推し』という言葉の意味を説明する宇佐見さん。そんな宇佐見さんは、” 「推し」という言葉も、その感覚も、私と同じ年代の子たちには通用することが多いのですが、世間的にはまだその実態が理解されていないように感じたのが、書いたきっかけのひとつです”とこの作品執筆のきっかけを語られます。そんな宇佐見さんはデビュー作「かか」でも、”普段彼氏への不満ばかりつぶやいている二十代の緑さん”が、”推しの結婚無理すぎん?みんなどうやって乗り越えてるんだろう”と愚痴を呟く場面を描かれています。この作品でもSNSを使う主人公の姿が全編を通して描かれますが、今作の『推し』に関する描写は、この点にさらにフォーカスしたとも言えます。一方でこの作品には主人公の あかりが通う高校で『保健の授業を担当している』京子先生が『あっけらかんとした声で卵子とか海綿体とか』について説明することを思うシーンで『勝手に与えられた動物としての役割みたいなものが重くのし掛かった』という表現が登場します。この作品だけ読まれた方には恐らくこの言葉に引っ掛かりを感じられることはないと思いますが、こうやってクローズアップさせると、「かか」も読まれた方にはこれが同作の主人公・うーちゃんの思いに感じられると思います。私は、「かか」、「推し、燃ゆ」と連続して二日間で読み切りましたが、一見全く異なる世界観の作品と思われるこの二作において、宇佐見さんのぶれない思いを感じました。

    さて、『推し』にフォーカスしたこの作品。その冒頭は『推しが燃えた』という『推し』という言葉の意味を知らなければ意味不明な言葉から始まります。その一方で、書名の「推し、燃ゆ」をそのまま説明してしまうこの冒頭はやはりよく考えられたものだと思います。綿矢さんと金原さんの作品冒頭は私にとって何も見なくても言えてしまうほど脳裏に焼き付いていますが、この宇佐見さんの作品もその仲間入りを果たしそうです。そんな冒頭の一文から始まる物語の大まかなストーリーは、以下のように展開します。

    ① あかりの『推し』が『ファンを殴ったらしい』というニュースによってSNSが炎上する。

    ② ”①”の後もそんな『推し』を『これからも推し続ける』あかりの日常が描かれていく。

    ③あかりと『推し』の日常に変化が生じる(ネタバレになるため抽象的表現に止めます)

    上記の通り、この作品は『推し』に始まり、『推し』に終わる作品です。そんな『推し』との関わり方について あかりは確固たる考え方を持っています。この作品には、そんな あかりの『推し』に対する思いがさまざまな角度から本人の思いとして語られていきます。

    まずは、『推し』との身体含めた関わり方について、こんな風に説明します。

    『あたしは触れたいとは思わなかった。現場も行くけどどちらかと言えば有象無象のファンでありたい。拍手の一部になり歓声の一部になり、匿名の書き込みでありがとうって言いたい』。

    『有象無象』、つまり世の中に沢山いる普通のファンであって、『推し』から見た特別なファンということを望むわけではないと言っています。次に『推し』としての『スタンス』についてはこんな風に説明します。

    『あたしのスタンスは作品も人もまるごと解釈し続けることだった。推しの見る世界を見たかった』。

    『推し』個人が好き、『推し』が出演している作品が好き、そういうことではなく『推し』という存在に関する全てを、まるで『推し』になったが如く感じていく、そんな立場に立ちたいという あかり。これは、ある意味で『推し』に対する最大級の感情の発露にも感じます。そして、そんな『推し』に対する思いの強さが、あかりにフィードバックされていきます。そんな中、最大級の感情を持って向かう相手が複数になることなどありえません。そもそも『推し』とは、一人の人間に対する感情の発露でもあります。そして、

    『推しを推すことがあたしの生活の中心で絶対で、それだけは何をおいても明確だった。中心っていうか、背骨かな』。

    『背骨』という身体を支える大切な部位と同じくらいに『推し』のことを思う あかり。宇佐見さんは芥川賞の受賞インタビューにおいて”私にとって小説が背骨である”と語られてもいます。そんな『背骨』という言葉を登場させるこの一文の重み、これはもう究極の表現だと思いました。『背骨』が身体から切り離せないのと同じで『推し』を切り離すことなどできない。まさに身体の一部分となっている あかりにとっての『推し』の存在。だからこそ、

    『未来永劫、あたしの推しは上野真幸だけだった。彼だけがあたしを動かし、あたしに呼び掛け、あたしを許してくれる』。

    その人だけに向けた感情に、『推し』への強く深い思いに囚われていく あかり。

    その一方で、無関心な人から見たら狂気とも感じるその一途な感情の発露を見る物語は、その表裏に、高校生としての今を生きる一人の女性、あかりを描いてもいきます。そんな あかりは『推し』以外の部分において、『推し』に向かう熱い想いのままに突っ走るような力強さから正反対の人生を生きていました。『寝起きするだけでシーツに皺が寄るように、生きているだけで皺寄せがくる』という絶妙な例えをもって表現される あかりの日常。それは、『誰かとしゃべるために顔の肉を持ち上げ、垢が出るから風呂に入り、伸びるから爪を切る』といったように『最低限を成し遂げるために力を振り絞っても足りたことはなかった』と”生”を感じさせない、まるで何かに囚われたような後ろ向きの人生でした。『いつも、最低限に達する前に意思と肉体が途切れる』というように、何をやっても上手くいかない、誰にも認めてもらえない、そんな中途半端な感覚の中に日々を生きています。そんな あかりの日常だけ見ているとやむなく生きていると言っても良い状況です。”あかりという主人公は、現実は苦しいというか、周りの人間関係にも淡白だったりして、なかなか熱量を注ぎ込めるところがない”と語る宇佐見さんの言う通り、これでは あかりの人生が行き詰まってもしまいます。そこに、『推し』の登場する余地が生まれます。『推し』という存在が あかりの心を埋めていく理由が生まれます。”推している瞬間とか、推しを解釈する、彼のことを分かりたいと思う行為そのものに熱を注ぎ込んで、彼を応援することに生きていることの意味を見いだすんです”と宇佐見さんが続けられる通り、この作品では、そんな主人公・あかりの生き方、青春の真っ只中をひたむきに生きる あかりの今の輝きを支える存在として『推し』が必要であり、その存在は必然として現れたのだと思います。

    『全身全霊で打ち込めることが、あたしにもあるという事実を推しが教えてくれた』。

    あかりの『推し』に対する心からの強い思い。そう、高校生の青春の今を生きる主人公の あかりにとって『推し』の存在こそが全てであり、そんな『推し』を推していくことこそが自分の今を作っていく、まさしく生きることと一体不可分とも言えるその関係がこの強い言葉にあるのであり、この「推し、燃ゆ」という作品で宇佐見さんが描こうとされたものなのだと思いました。

    『推しを推すときだけあたしは重さから逃れられる』という主人公のあかり。そんな あかりが『推し』の存在を感じる中に束の間の輝きを見せるこの作品。現実社会はそう簡単には回ってはくれないものです。10代の青春を生きる あかりは学校に、アルバイト先に、そして家族に全力を賭して対峙していけるものを見つけることができずに、まさしくそんな現実が重石となって前に進もうとしても引きずられるような、跳ぼうとしても押し止められるような日々を生きていました。そんな あかりが『全身全霊をかけて打ち込める』先、それが『推し』の存在でもありました。

    『推し』のことを思い、『推し』のことを考え、そして『推し』のために行動していく あかりの今を感じるこの作品。名前のようには、あかりのはっきり見えてこないその結末に、生きづらい世を不器用にしか生きられない、そんな あかりの未来に幸あれ、そう願わずにはいられない作品でした。

    • さてさてさん
      kuma0504さん、こんにちは!
      ブックリストの件ありがとうございます。この作品の主人公の『推し』方、『作品も人もまるごと解釈』、本物だ...
      kuma0504さん、こんにちは!
      ブックリストの件ありがとうございます。この作品の主人公の『推し』方、『作品も人もまるごと解釈』、本物だなあととても思いました。
      kuma0504さんのブックリスト、毎週木曜日の投稿を楽しみにしています。少し前に投稿された「源氏物語」でまとめられたリスト、興味深く見せていただきました。
      ブクログ改善いただけるなら、このブックリストにこそコメント欄が欲しいな、と思います。絶対盛り上がると思います。
      2022/05/30
    • kuma0504さん
      さてさてさん、こんばんは。
      ホントすみませんでした。そして、ありがとうございます。

      タイムラインからいいねレビューが外れてから、良いレビュ...
      さてさてさん、こんばんは。
      ホントすみませんでした。そして、ありがとうございます。

      タイムラインからいいねレビューが外れてから、良いレビューが見つけ難くなっているので、確かにコメント欄は欲しいですよね。それから、200字制限はホントに辛く、いつも書きたいことの半分も載せられません。コメント欄が有れば追記出来そう!

      2022/05/30
    • さてさてさん
      kuma0504さん、こちらこそありがとうございます。
      ブクログの仕様変更はよくわからないですよね。私的にはPC版画面からいいね!をしてく...
      kuma0504さん、こちらこそありがとうございます。
      ブクログの仕様変更はよくわからないですよね。私的にはPC版画面からいいね!をしてくれた方のアイコンが消えたのが解せません。そもそもPC版だとブックリストは何もできませんし…。また、お書きになられている通り文字数制限も厳しいです。せめて400字詰め原稿用紙基準ということで、倍にしていただくと余裕が出ます。まあ、200字だからこそ気軽に読める(私がこんなこと言うのは説得力がないですが…)というところがあるのは事実で、なんとも判断は難しいですね。取り敢えずは制限の中でベストを尽くす!というところでしょうか。
      2022/05/30
  • 燃えたのは 推しのスキャンダルなのか

    それとも あかりの心が燃え尽きたのか



    思ったより あかりちゃんは

    ガチに推しに恋してるわけはなく

    生きる希望みたいなもんです

    それが 恋よりいいのかは置いといて・・・



    最後も 絶望ではないまでも

    ちょっと空っぽになった あかりちゃんの

    今後の苦労を思うと

    推しがいてくれたら なんて思ってしまいます

  • 当時話題になっていた作品だったことは記憶にあったので読んでみましたが、思春期ならではの病というか、何かに夢中になることで生きている事を感じることができるというありきたりの感じがしました。
    大人の鬱陶しさと子供の傲慢さとを書き出しましたっていう本ですね。

    • アールグレイさん
      初めまして(-_-)にゃごさん

      フォローを頂きありがとうございます!
      本棚を拝見しました。もしかして、本屋大賞候補作の内、9册を読んだので...
      初めまして(-_-)にゃごさん

      フォローを頂きありがとうございます!
      本棚を拝見しました。もしかして、本屋大賞候補作の内、9册を読んだのでは?
      凄いですね!私は遅読ですが、どうぞよろしくお願いします!
      (^o^)/~~~
      2023/03/16
  • さまざまなものを削ぎ落とした主人公の一人称で語られる文章が魂に触れてきます。良い悪いはさておき読み進める毎に魂が削り取られる様でキツかった。ページ数としては薄かったのにかなり疲弊してしまいました。

  • とりあえず読んでみた。
    私にも推しはいる。
    「推しは命にかかわる」という感覚も、まぁ理解できる。
    でもこの主人公には共感できないし、結局何がいいたかったのかよく分からなかった…。

    私にとって"推し"とは、日々の生活に潤いとかハリとか輝きとかをもたらしてくれるもので、推しのことを考えると気持ちが浮き立ってくるものだけど、
    彼女を見ていると、推している気持ちが逆に彼女をぎゅうぎゅうと押し潰しているように、身動きできないようにがんじがらめに縛り付けられているように感じる。
    推していることは自分自身の問題から目をそらす、単なる現実逃避なだけで、幸福とはとても思えない。

    主人公の問題は、推しの炎上云々より家庭環境?自分の病気?にあったのではないだろうか。
    それを忘れるために推しにはしったのでは。
    "病名がつけられた"とあるけど、発達障害とか自閉症とかなのか…?肉体的な病ではなさそうだったけれど…。
    推しを失い、家族からも見離されそうになっている彼女はどうやって生きていくのだろう。

    暗い気持ちで読み終えた。

  • 女子高生の心情を知ろうと思ったが間違い
    オタク心情をえぐられ、むず痒い

  • ダヴィンチのプラチナ本で紹介されており、かつタイトルが結構秀逸だなあと思ったのもあって試しに読んでみた。アイドルの推しを生き甲斐にしている少女の話で何を描きたかったのかと思ったら、肉体と精神の乖離から魂の救済を求めて宗教にハマる姿を描いたものだった(と私には読めました)。という主題であれば全く内容が浅い。若者しか理解できないような数々の言葉の中に光るセンテンスも見受けられたが、作者の中でもテーマを消化し切れないで書いているように思った。まだまだ、といった印象。

  • 主人公のあかりが推しているアイドル、上野真幸。推しの子がファンを殴ったということで炎上してしまう。
    それでも推し続ける主人公。

    何かに打ち込んでいるときって周りがみえないこともあると思うけど、あかりの場合は本当に全身全霊で時間もお金も体力も推しの子のためなら消費できる。
    それがいいのか悪いのか...。現実逃避って言っていいんだろうか?後半に行けば行くほど苦しい気持ちになっていきました。主人公がホールケーキを食べる場面とか家族とのやりとりとか読んでいてちょっとつらかったな。

    【印象に残ったことば】
    まともなことを言われている気がしたけど、あたしの頭の中の声が、「今がつらいんだよ」と塗り込めた。聞き入れる必要のあることと、身を守るために逃避していいこととの取捨選択が、まるでできなくなっている。(高校の担任の先生から"卒業したほうがいいよ"って言われた主人公の反応)P.75

  • 「推しが燃えた。」

    すごい書き出し。震え上がりました。

    高校中退、病気、就活、家族……様々な生きづらさを抱えながら、一心に推しを推す主人公・あかり。彼女にとって「推し」とはなにか?そもそも「推す」とはどういうことなのか?

    とにかくしんどかったです。読んでいる間、息してたかな私。
    水中でもがくようにページをめくり、酸素を求めて読了したような気すらします。

    主人公ほどではないけれど

  • 世の中が生きづらい女子高生あかりの物語。推し活だけが自身そのものの世界だった。

    推しの引退で、彼女は生きる希望を見出す事が出来るのか?!が焦点になる。

    部屋の綿棒投げ、それを拾う。綿棒を投げる事で推しの鬱憤を晴らすかの様に。優先的に綿棒を拾う。
    這いつくばう事で部屋のゴミの存在も明らかにわかる。どうすれば片付けれるのかと自問している?生き様としている!あかりの未来を感じた。
    推しとの世界が未来永劫ではなくなった過去を清算し、自身の骨(綿棒)を拾い這いつくばって不器用に生きて行いく決意の様な姿勢を受け止めた。

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著者プロフィール

1999年生まれ。2019年、『かか』で文藝賞を受賞しデビュー。同作は史上最年少で三島由紀夫賞受賞。第二作『推し、燃ゆ』は21年1月、芥川賞を受賞。同作は現在、世界14か国/地域で翻訳が決定している。

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