実力も運のうち 能力主義は正義か? [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 2章のキリスト教の話になった途端、内容が頭に入りづらくて
    ああ、キリスト教の人には分かりやすいのかなぁと思いつつ読んでいました。

    行き過ぎた能力主義に陥っている大学試験をどうにかするために
    くじ引きを導入したほうがいいと書いていましたが
    下手すると日比谷高校の二の舞になりそうだなと思いました。
    でも国立の小中学校受験はくじ引きあるし、上手く行くこともあるのかな。

  • 書かれている現状に絶望し
    書かれている内容を自分なりに咀嚼できない自分の能力の低さにも絶望しました。

  • 能力主義(功績主義)が正義であるという常識の中で、その風潮がなぜ起こり、それがどのような弊害を生みつつ現代まで続いており、昨今の世界で起きているポピュリズムの勝利に象徴されるような出来事の背景となっていることを、順を追って丁寧に述べられています。私達の常識でも、実力で勝ち取った幸福が間違っていると考えることは抵抗があります。しかしながら、それを称賛する文化の影で、能力を持たない人々にどのような影響があるかに想像を至らせることで、どんなに世界を狭くしてしまっていることかに気付かされることになります。勝者が傲慢になり、敗者が惨めさを募らせるとき、この世界には多くの人が居て、その全員で世の中を支えているということが見えなくなります。コロナでそのことがあらわになった今だからこそ、変えることができるチャンスなのだと思います。

  • 能力主義の問題を様々な観点から暴く本。能力主義は一見すると公正に思えるが、実際はスタート地点に立てるかは運の要素が大きい。にもかかわらず勝者は自分の立場は努力の賜物であると考え、敗者は努力をしなかった怠惰な人間として見下す。今お前が苦しんでいるのは自業自得だ、と。

    結局は公正さとは何か、正義とは何かという話になるが、少なくとも現在の能力主義は平等ではない。あたかも階級社会のように、勝者の子は勝者となるような仕組みとなっているからだ。

    厄介なのは、勝者の子であっても努力が不要というわけではないことだ。あくまでも勝者の子はレースに参加できる権利が与えられるだけで、勝利が約束されているのではない。だから彼らは必死に努力する。しかしそのために勝利できなかったのは努力が不足していたからだと認識するようになり、そもそもレースに参加できない者のことは考えない。現在の能力主義が厄介なのは、勝者の主観では公正な構造となっていることなのだろう。

  • 最初すごく面白くてぐんぐん引き込まれるのだけど、途中から翻訳本特有の中だるみで途中で投げ出していましたw が、『多様性の科学』と併読することでビジョンが一気に開けた感じがして、とても面白く最後まで読むことができました。ぜひ、セットで読んでみてもらうと

    で、こちらも階層を超えることの難しさが、バイアスにまみれた社会を見ることによって描かれています。そしてそれが、世の中の成長を阻害しているようにも見える。やりがい、いきがいを持って、どんな人でも生きられる世界(が正解かは分からないけど)の道のりはまだまだ遠いなと感じました

    ===
    以下、引用
    ・「ロバート・F・ケネディはそれを理解していた。「仲間意識、コミュニティ、愛国心の共有──われわれの文明のこうした本質的価値観は、ただ一緒に財を買い、消費することから生まれるのではありません」。その価値観を生むのはむしろ「十分な給料が支払われる尊厳ある職です。働く人が『自分はこの国をつくるのに手を貸した。この国の公共の冒険的大事業に参加した』と、コミュニティや、家族や、国や、それに何よりも自分自身に向かって言えるような職なのです」

    ・有力な手がかりとなりそうなのが、病に最も冒されやすい人たちの学歴だ。ケイスとディートンの発見によれば、「絶望死の増加の大部分は、学士号を持たない人びとのあいだで起きている。四年制大学の学位を持つ人はほぼ無関係であり、最も危険にさらされているのは学位を持たない人である」(13)。  中年(四五~五四歳)の白人男女全体の死亡率は過去二〇年間であまり変わっていない。しかし、学歴によって、死亡率には大きな差がある。一九九〇年代以降、大卒者の死亡率は四〇%低下した。大学の学位を持たない人については、二五%上昇している。つまり、ここでも高学歴者が有利なのだ。学士号を持つ人が中年期に亡くなる危険性は、学位を持たない人が直面する危険性のわずか四分の一である

    ・第一に、不平等が蔓延し、社会的流動性が停滞する状況の下で、われわれは自分の運命に責任を負っており、自分の手にするものに値する存在だというメッセージを繰り返すことは、連帯をむしばみ、グローバリゼーションに取り残された人びとの自信を失わせる。第二に、大卒の学位は立派な仕事やまともな暮らしへの主要ルートだと強調することは、学歴偏重の偏見を生み出す。それは労働の尊厳を傷つけ、大学へ行かなかった人びとをおとしめる。第三に、社会的・政治的問題を最もうまく解決するのは、高度な教育を受けた価値中立的な専門家だと主張することは、テクノクラート的なうぬぼれである。それは民主主義を腐敗させ、一般市民の力を奪うことになる。

  •  生まれ、育ちのハンディキャップがありながら、能力を発揮し、機会不平等を超えて結果を出し評価をえる、それはまさに「アメリカン・ドリーム」。ただ、その成功物語は、そのまま「正義」と受け止めることはできない。能力主義は、自己責任と同義。結果を出したものはそれが自らの実力=自らの努力の結果と受け止め、結果は出せなかったものは、自分に実力がなかった、努力が足らなかったと受け止める。しかし、成功者は、自らの努力だけで結果をえられたのではなく、生まれ・育ちの環境要件に起因するところが大きいし、結果を出せなかったものは自分に責任があっただけでもない。ハンディキャップを抱えていたこともあるから。しかし、能力主義は、勝者に奢りを与え、敗者に屈辱を与える。それが社会の不満を高めていく…。
     「実力も運のうち」。格差社会がより格差を増幅し、怒りのエネルギーを社会に充満させていかないため、誤った能力主義とその理解を変えていくことが求められている。

  • 実力至上主義の人たちのコンテクストは結局恵まれているっていう話。

  • 「正義について・・・」「それをお金で・・・」以来、久々にサンデル先生の本を読んだ。
    トランプ当選、その背景にあるアメリカの分断。
    ハーバードの学生が自分の努力による成果を疑わない話。
    非常に考えさせられる。
    自分自身の成功している部分にも謙虚にならないといけない。封建主義・民主主義・新自由主義。その歴史の流れの中で今の社会があるということを改めて認識した。

  • 格差を無くすことは現実的でないながら、現状にどのように向き合うべきか、考えるきっかけになった。

  • 「自分の意見で生きていこう」
    意見を伝えることは、ポジションをとりリスクを背負うこと
    他者と物事を建設的に進めていくために必要な思考
    社会の多様性がキーワード

    意見を生み出すトレーニングもあり実践に結びつけやすく、
    平易な言葉で書かれているため内容が入りやすい
    そのため好きな本だ

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著者プロフィール

1953年、アメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリス生まれ。アメリカ合衆国の哲学者、政治学者、倫理学者。ハーバード大学教授。

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