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感想・レビュー・書評
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韓国で大ヒットとなり映画化もされ、日本でも話題になった小説。書店でも個性的な表紙が印象に残っていて、今さらながら読了しました。
前に韓国SFを読んだ際、解説がやたらとマイノリティーにフォーカスしてるな…と気になっていたのですが、時期的に韓国で本著が話題になったちょっと後。出版界が全体的に本著の影響を受けていたのかもしれません。
https://booklog.jp/users/skylark0311/archives/1/4152099860
小説のスタイルで社会問題にフォーカスし、大きく話題になったという点では、『なんとなく、クリスタル』が(最近読んだばかりというのもあり)頭をよぎります。
『なんとなく、クリスタル』で、いささか唐突につきつけられた統計データは、本著ではストーリーの端々に差し込まれる形。簡潔で読みやすい文体も含め、より暗澹たる気持ちにさせられます。
その読みやすさにも寄与しているのが、文章表現の巧みさではないかと。例えば、
「美化委員は女子、体育委員は男子がやっていた。先生が任命する場合も、自分で希望する場合も、そうだった」
という文章。社会の根っこまで「男の子はこれ、女の子はこれ」が根付いてしまっている様が描かれ、ランドセルの色じゃないですが、意識せず当たり前になっているだけに軌道修正の難しさを感じさせます。
私自身も、いち男性の本の読み手として、周囲の女性との接し方をあらためて検証しないといけない…と感じました。ただ、本著の解説にある「女性嫌悪」のような、男女対立に繋がってしまうようでは全く意味が無く、互いを尊重する気持ちを高めながら良い関係性を築くにはどうすべきか、学ぶ・修正することを心掛けていければと思っています。
個人的に印象に残った本著のフレーズを最後に。
「真っ暗な空から公平な贈り物のように、規則正しくちらちらと雪は降ってくる。」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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菊池亜希子おすすめ本。気になって登録(未読) -
考えるきっかけを与えてくれる作品だと思う。小さな子どもを育てている頃、夫は出世して社会に認められ、妻は初めての子育てに毎日疲弊している現実を悲しく思ったことがある。キム・ジヨン氏の気持ちに共感できる所が多々ある。結婚、子育て、母、妻として、こうあるべきだと上の世代から押し付けられて苦しむ気持ちもよくわかる。日本にも共通すること多いと思う。
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生まれた年代も国も違うのに共感できるエピソードが多く、女性の生きづらさが普遍的であることを実感した。
読了後は心が沈むが、女性蔑視が浸透している社会で軽く扱われてきたあらゆる理不尽や不公平が可視化されたこと、そしてこの作品がたくさんの国で翻訳され、売れていることに希望がもてる。
ジヨンの娘が生きる未来を、より良いものにしたい。 -
共感できることがたくさんあった。
女性だからという理由で、 社会的に下に見られてるのが当
たり前の世界が描かれている。
男性にも同じことが言えて男性だから背が高くないとおか しい、 稼ぎが良くないと、 など女性だから~とか、男性だ から~という決めつけはほんとに良くないと思う。
また読みたい。
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韓国では男尊女卑が激しいとは20年前聞いていたけど、ここまでとは…。
読んでいて辛かった。
子を産み育てる事はとても素晴らしく、尊い事だと昔は考えられていたけれど、今は個人主義、自分のためという考えが定着しつつあるため、出産育児がマイナスに思われてしまっている事が残念。
他に愛着が持てなくなってきたのかな。
妻が同じ経験をしていると、自信を持って診察した精神科も結局は考え方が全く変わってない(本人気づいてない)最後の一文、皮肉だなぁ。
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女性が進むであろう人生を、キム・ジョンの生き方を通して描いているドキュメントのような小説。学生時代、結婚・出産と女性であるがための差別を受けたり自由や尊厳を奪われ、いったい女性である自分はどういう人生観を持って生きてゆけば幸せになれるのか……を強く考えさせられる内容になっていると思う。ただ私個人としては、淡々として意外性も無く、感動的なストーリー展開では無かったのが期待外れでした。出産をすると女性が仕事復帰するタイミングも難しいのは日本も同じで、この本が特別衝撃的な内容だったとは思えなかった。
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細かい男女差別の描写が一つ一つリアルすぎて心が痛かった。淡々と描いている口調もまた堪らなく哀れな気持ちになった。
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韓国における女性と男性の教育・就職・所得などにおける格差を、キム・ジヨンという一般女性の人生をなぞる形でリアルに描いている。
日本でも同様の問題は未だ根強く残っている。
実際、本書を読み進める中で、自分自身の経験とも重なることが多かった。
本書に出てくる男性陣の態度にも言えることだが、おそらく男性側に女性を差別しようという積極的な意思はない。
この問題は、だからこそ、厄介なのだ。
当然のごとく与えられた特権を享受しただけで(享受していること自体に無自覚な場合が多いが)、まるで犯罪者かのように非難されてしまうのだから、男性陣が戸惑うのも理解できる。
だが実際、多くの女性が、当たり前のように何かを諦める(それは仕事かもしれないし、家庭かもしれない)ことを強いられているのだ。
「自分は女性を差別などしていない」「男女平等というなら収入面でも折半が妥当」などと考えている人にこそ、この本を読んでほしい。