鵼の碑 【電子百鬼夜行】 [Kindle]

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  • 講談社
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感想・レビュー・書評

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  • 楽しみに積んでいた百鬼夜行シリーズ。あえて新書版を買って出張泣かせだったぶ厚さを堪能する。

    関連のなさそうな出来事が徐々に収斂していきタイトルのようにひとつの形をなしていくのですが、あ、だめだ。何を書いてもネタに触れる。汗。過去に起こった事件らしきものが仄めかされるとともに懐かしのメンバーと再会していく。いやなんという構成なのでしょうか!衒学的に彩られた伏線にくらくらしながらも目を離せなくなります。信仰、科学、戦争、兵器開発、差別といろんな分野の物凄い情報量に晒されます。仏教と神道についても、キリスト教やイスラム教と同程度になんも知らなかったんだなぁと愕然としつつも、古来からの伝統と信じていたものも実は最近整理されたものだったりして、足元がふわふわする感じを味わっています。久々のオール・スター・キャストでお正月映画(今は無いね)を見たようで楽しかった。次巻タイトルも予告されて楽しみ。

    完璧な構成のなかで一箇所ミスを発見。p357の仁礼さんのセリフの中で句読点が二重になっているところを見つけて、圧倒されっぱしじゃないぞと一人ほくそ笑む。ちっちゃ。笑

  • 別々の事柄が次第に集まってきて、そして顔を合わせたら謎は……。

    いつもの面子は益田と関口の出番が多かった。

    関口が旅先で友達作れてたのに良かったね、と思った。
    京極堂の憑き物落としは見事だったけど、榎木津同様本作では傍らに居た位の存在感だった。

  • 17年ぶりの百鬼夜行シリーズ長編。
    日光で戦前に起きた出来事の謎に
    迫る。
    関口が、意外にも頼もしくみえた。
    榎木津は、活躍の場が少なく残念。
    木場刑事は、変わらぬ立ち位置で、
    懐かしく思えた。
    中禅寺の憑き物落としは、多少拍
    子抜け。もう少しインパクトがあ
    っても良かった。
    相変わらずの寺社や歴史の蘊蓄は
    読み応えがあった。

    • アンシロさん
      takaさん、はじめまして。フォローありがとうございます。

      本棚を拝見してまだ読んだ事のない京極夏彦さんと道尾英介さんの作品があり、興味を...
      takaさん、はじめまして。フォローありがとうございます。

      本棚を拝見してまだ読んだ事のない京極夏彦さんと道尾英介さんの作品があり、興味を持ちました。辻村深月さんは何冊か読んで私も好きです。

      またお邪魔しますのでよろしくお願いします(^^)参考にさせて下さい。
      2023/12/06
  • 鵼なのだ。
    百鬼夜行シリーズではこれまでも驚かされていたが、この度は構成そのものが鵼なのだった。そんなことは表題を見るなら容易に気付きそうなものだが、夢中になって展開を追っているうちにはなかなか気づくことができなかったことが恥ずかしい。
    多くの要素が集まって一体となっているのが鵼かと思うと、そうではない。多くの要素が集まってはいても、それぞれの要素を強く残しているなら、それは何物でもないということなのだ。それぞれの部分を蛇・虎・狸・猨等がになっているように見えても、総体としてそれは蛇・虎・狸・猨のいずれでもない。何物でもないのだなあ。
    だから、鵼なのである。
    「あの男たちが集結」した物語であり、さらには他シリーズの影も見せてくれたが、何物でもない鵼を相手にしては、17年前のように突破していく感じは薄い。そもそも突破すべきものが定まらないのだから、それが狙いなのだろうとも思った。鵼なのだから。
    「あの男たち」の旧知だという緑川さんが面白い。この位置づけで見続け語り続けてくれるなら、その展開もぜひ読みたいものだ。
    総ページ数829ページの文章の中で、この度は「出た。」の一言が最も鮮烈に印象に残り、その場面を彷彿とできたところであった。この一言に、再び、そしてできるだけはやく、会いたいものだ。

  • 歓喜日光!この小説短すぎる。

    この長さで一つの長編を書ききるというのはそれはすごいことですし、小説としても面白いのですが、最早そういった次元ではなくて、読んで百鬼夜行シリーズの世界に浸ってる時間が私にとっては大事なわけで、終わってみるとこれでは短すぎるわけです。

    上製本が1.2Kgあるらしく、なんでこんなに長くなったのですかという記者の質問に、著者が「担当編集が止めなかったから」と答えていましたが、もっと長くてもいいですよ。私は。もっとどっぷり浸かりたいですしね。少なくとも塗仏ぐらいは長さがあっても良かったなぁ。ということで、次回作は早めにお願いします。

    分からないものをその儘にしておけないから、あらぬ方向で科学を盲信したり、出自の怪しい言説に惑わされるわけですなぁ。そういった意味では分からぬことをわからぬと許容できない世の中だからこそ、似非科学や陰謀論が跋扈するのでしょうなぁ。

  • 久しぶりに皆に会えて、
    榎さん節も健在で、
    蘊蓄で詰まったページが愛おしくてたまらなかった。
    まさに鵼、のストーリー。
    貪るように読んだ。

  • 大変ご無沙汰していた面々に久しぶりにお会いできて嬉しい限りでした。個人的に大好きな土地である日光が舞台だったので、尚更、寝不足覚悟でも読まずにはいられませんでした。
    肝心の謎解きがあらゆることが過ぎ去った後の事後解説だったゆえに、ちょっと勢い不足な印象があったかもしれません。
    ラストは綺麗にまとまっていたうえに、次巻への期待をうっすら持たせてくれる流石の読後感でした。

  •  発売当日に購入したものの、なかなか読めずに積ん読化してしまっていたものを、年末年始の帰省中に一気読み。
     久しぶりの京極夏彦なので、過去作の細部が朧気で、何とかの事件、みたいなワードが出てきても、それはあれか?みたいなあやふやさのままで読み進めました。幸いなことに登場人物の人となりや過去作の大枠までは忘れていなかったので、これこれ、と思いつつ(にしても、関口はここまでポンコツだったっけ……)。
     複数の視点、複数の事件が入り乱れつつの展開で、それらが徐々に徐々に収束していく展開は流石の一言。じわじわと輪が狭まっていくかのようなゾクゾク感。半分を過ぎたくらいで概ねの予測は付いたものの、物語の着地はさっぱり読めず、どういう展開になるんだろうと思っていたら、なんとそう終わらせるのかという解決編。いやあ、この展開はさすがに想像してなかった。
     「結局のところ何もありませんでした」という結末に、ここまで満足を感じさせるのは凄すぎ。あっちにふらふら、こっちにふわふわ、という酩酊感のような構成は、さすが京極夏彦と感じさせてくれました。この長大なボリュームを費やすことで、まさに「鵼」を文章で浮かび上がらせた、という感じ。
     とりあえず、過去作を初めから再読していこうと思います。

  • コロナ禍以降よく耳にするようになった陰謀論というものが、どのようにして人の心に取り憑くのか…その経過を物凄く丁寧に見せられたな、と思いました。
    木場の構築した大掛かりな陰謀論を、そのまま素直になるほど〜と読んでしまえたので、人はわりと簡単に「単純な解のはずはない」と思ってしまうし、複雑怪奇な方へと流されてしまうものなのではないかなと思います。

    この物語の中の全ての事件は過去のもので、そもそも現在では何も起きてはいません。
    過去の事件も、個々の出来事に多少の関連はあれど、決して一連の壮大なる陰謀などではありませんでした。
    そんな偶然あるはずない…という思いが、脳内に壮大なる化け物の姿を組み上げる。
    鵺とはよくぞいったもの、この物語の構造そのものが鵺であり、構造の解体が今作における憑き物落としです。

    ただひとり、寒川だけが、鵺を追いかけて消えてしまいました。
    化け物使いの、仕事の失敗。

    なんとまあ懐かしい、そしてなんと寂しい……現代における又市の姿を、最後の最後でこんな形で見ることになるとは思いませんでした。
    一雄と又市の関連について、はっきりと書かれているわけではありませんが、無関係ということもないのでしょう。
    かつて人を不幸にしないために、緩衝材としての化け物を言葉巧みに顕しては操った『巷説百物語』の又市は…その系譜は、寒川を救えませんでした。
    人々が信仰の理でのみ世を捉えていた時代は今や過去、科学の視点が広く流布した現代において、化け物はもはや緩衝材たりえない。
    畏れによって寒川を救おうとした一雄の技は、科学の理で信仰を見る寒川には通じずむしろ惑わせ、結果、鵺を取り憑かせることになりました。
    化け物にはもはや居場所がない、そして化け物使いにもまた居場所はない。
    鈴の音だけは今も昔も代わりはしないでしょうに…なんとも切なく思いました。

  • それこそ、東日本の前に書かれようとしてたこの作品はちょっと違った作品だったんじゃない。
    ネタバレだから書けないけと、そう思うのと某シリーズとの繋がり?も含めて楽しめた。
    ミステリーとかじゃなくて京極夏彦小説として楽しめた。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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