(010)季 (百年文庫)

  • ポプラ社 (2010年10月12日発売)
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感想 : 18
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古今東西の名短篇を漢字一文字で編んだアンソロジー、今回は初めて収録の三篇全て日本人作家のものを選んでみた。
「白梅の女」
以前から読んでみたいと思っていた円地文子さん。若い頃愛した男性との再会。しっとりした格調高い文章が美しかった。これをきっかけに、他の作品にも挑戦してみたい。
「仙酔島」
島村利正さんは初読みだが、季節の流れの美しさと夫婦の歳月の重みを感じさせる名短篇だった。
「玉椀記」
若い頃好んで色々読んだ井上靖だが、彼の作品を読むのは本当に久しぶり。古墳から出土した硝子器と正倉院の白瑠璃椀との関係、そこに重ねる妹と友人夫婦の思い出の描写が秀逸だった。

三篇の共通テーマは「季」だが、情景描写の美しさに絡めた心理描写のきめ細やかさが印象的で、改めて名作の素晴らしさを痛感した。
字も大きく読みやすい分量なのもありがたい。名作に親しむ機会が激減したからこそ、定期的にこの百年文庫を読みたいなと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: アンソロジー
感想投稿日 : 2018年10月8日
読了日 : 2018年10月8日
本棚登録日 : 2018年9月23日

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