Xの悲劇 (創元推理文庫) (創元推理文庫 104-1)

  • 東京創元社 (1960年2月7日発売)
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本棚登録 : 1148
感想 : 101
5

派手なトリックを削ぎ落とし、論理だけで構成された本格ミステリー。

まず、一つ目のロングストリート殺しでは、警察が注目していなかった「犯人は凶器のトゲトゲボールをどうやって持ち運んだか」という点に着目し、非常に"単純な"論理から犯人を推理している。
この単純さが美しさの一因だと思う。

そして二つ目のウッド殺しでは、「二年前の盲腸炎手術」「5年間皆勤」という矛盾をついた推理により、アンフェアになってしまうことが多い替え玉トリックがしっかりとフェアになされている。
法廷でのデヴィッドの無罪証明は本書の中で一番興奮したシーンかもしれない。

三つ目のデヴィッド殺しは、個人的には三つの殺人の中で最も推理が鮮やか。
ポケットの場所の伏線、右手ではなく左手でのダイイングメッセージから「右手で回数券を掴んでいた」という状況を推理し、見事に犯人を特定。
Xのダイイングメッセージも面白い。

初のエラリークイーンだったが、期待以上であり、見事な論理に脱帽。

やはり本格ミステリーは美しい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年7月24日
読了日 : 2021年7月24日
本棚登録日 : 2021年7月24日

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