利他主義の定義が日本ではややこしいことになってきた(中島岳志の参入で)ので、アタリのいう「合理的利他主義」をきちんと知っておこうと本書を購入。少し前の出版なので書店で探した。
斎藤幸平の「人新生の資本論」を読んでからというもの、気候変動がそこまで深刻なのか、社会の仕組み自体を変革しなければいけないのか、と、近未来を予想した本を何冊か立て続けに読んだ。
ここに書かれているものとほぼ変わらない。というか、2016年にフランスで出版され、しかもアタリの著書なので、これが元本といっていいのかもしれない。
で、希望は無い。
しかも、2016年に書かれた予想が、ことごとく当たっていることもまた、希望を打ち砕く。
この本の白眉は、最終章に、じゃあ、どう行動すればいいのかを書いてくれていること。
あんまり直截的で、重みがないように見えるのに(笑)そこが、利他主義者なのだなあ。こういうところ、私は好きです。
そして、やはり、合理的利他主義を唱えている。次の世代のために何かできることに喜びを感じよと。
さらに、「飲料水、医療サービス、エネルギー、住居、教育、情報などの技術進歩を、誰もが利用できる」ように支援せよ、のくだりで、地球の危機を知る人は、結果として、同じところに到達するのだなと、感動のようなものを感じた。
「コモン」の共有は、避けて通れない世界の課題なのだ。
資本主義がどのように悲惨な最期を遂げるのかわからないが、地球上に人間が生きのびていたのなら、新たな社会は、「コモン」を共有し、平等に生きていくしかないってことだ。
斎藤幸平もジャック・アタリも、自分たちが生きてはいないだろう先の世界について、考え、発言している。
どこぞの国の、自分の票田を守ることしか考えてない政治家とは大違いなのだ。
ジャック・アタリは朝日新聞の世界会議という企画でも登場し発言していたし、処方箋を書いてくれているこの本は貴重だ。文庫版で出版してもよいのではないだろうか?
- 感想投稿日 : 2023年1月3日
- 読了日 : 2023年1月3日
- 本棚登録日 : 2022年8月12日
みんなの感想をみる