本書の持つ歴史的意義は、少なくとも2つある。1つは、サムライが往来で兇器となる刀を差しやみくもに人を斬る好戦的で野蛮だと思われていた当時の西洋人の誤解を解消したこと、そしてその武士道論を通じて日本的思考の枠組みを日本人として初めて英語で世界に問うた日本文化論だという点である。
新渡戸は、武士道の体系を義、勇、仁、礼、信(誠)、名誉、忠義の順で解説。各徳目の詳細は本書に譲るが、それぞれの関係性は、智仁勇が義を支え、信が礼を支え、義と礼が忠を支える構造となっており、徳目の最上位にくる忠は武士自身の名誉と恥を重視する他律的な行動規範が基本となる。
さらに本書では、武士の教育、切腹と仇討ち、刀、女性の教育と地位なども解説されており、初めて日本人に接した多くの外国人が、礼儀正しく貧乏でも幸せそうな民族と賞賛した理由が明かされる。
独自の規律と勤勉で形作られた当時の日本人の素晴らしさは、現代人から見てもさもありなんと納得。
敗戦後はグローバルスタンダードなどと闇雲に欧米を追従する癖がついてしまっているが、もっと自信を持って、日本民族らしい独自の美意識と価値観を守っていく選択肢も考慮すべきではと考えさせられた一冊でした。
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- 感想投稿日 : 2023年6月18日
- 読了日 : 2023年6月17日
- 本棚登録日 : 2023年6月17日
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