どんな人でも、家のなかでは有名人なんです。赤ん坊として生まれて、名前を付けられて、有名な人なんですよ。たいへんに有名です。家のなかで無名な人っていないです。それは、たいへんな満足感を与えるんです。私は、人間がそれ以上の有名というものを求めるのは間違いではないかと思いますね。そのときの「有名」が自分にとって大切なもので、この財産は大切にしようと思うことが重大なんじゃないですか。
最後は、お互いに見知らぬ人になり、そのときには家族のなかでさえ無名人です。やがて物になる。人でさえない。そのことを覚悟すればいいんです。
自分は、かつて家のなかで有名な「者」であった、その記憶を大切にする。そして、やがて自分は「物」となって、家族の者にとってさえ見知らぬ存在になっていかという覚悟をして、そして物としての連帯に向かってゆっくり歩いていくという覚悟をもって、家を一つの過渡期として通りぬける。それが重要なんじゃないでしょうか。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2016年4月10日
- 読了日 : 2016年4月10日
- 本棚登録日 : 2016年4月8日
みんなの感想をみる