言わずと知れたSFの古典作品。短編連作形式。
かろうじて文字が読めるようになった幼少期に、祖父母の家の書斎で読んで以来の再読。よくわからないが面白かった、ロボットが好きだという記憶だけあり、このたび実際に再読したところ一作目の「ロビィ」以外全くなにも覚えていなかったため、改めてこんな作品だったかと新鮮な気持ちになった。
簡素で装飾が少ない骨のような文体だが、その骨組みがこの上なく面白い傑作である。
本書は1950年に刊行された作品であり、解説(瀬名秀明)によると既に発表済みの短編いくつかを単行本化にあたって編纂した経緯があるとのことで、執筆年はさらに古い。よって作中に見られる技術内容にはさすがに時代を感じる。同SFジャンルの名作であるジェイムズ・P・ホーガンの「星を継ぐもの」などは半世紀近く経った今でも陳腐化しない学問の描写が見事な作品であり、そういったものと比べるとフワフワ感は否めない(星を継ぐものは本書の30年後に刊行されているため執筆当時の科学技術を取り巻く環境がそもそも異なるが)。
しかし本書の主題は科学技術ではなく人間そのものである。そこが不朽の名作たる所以だろうなと思う。ロボットと人間はどう違うのか、ロボットは「人間」といえるのか等、思考実験をペロ舐めするのが好きなタイプなので登場キャラクターの見解を追うのは本当に楽しかった。
わくわくする読み物でありロボットに好意を抱くようになったきっかけである「ロビィ」は自分にとって今でも特別な作品だが、「迷子のロボット」や「証拠」は大人になった今だからこそ面白さがわかる気がする。本書におけるロボットはピュアで真面目で傲慢でユーモラスでよく気が狂う。この描き方も幼少期の自分にはよくわからなかっただろうなと思うと、再読して本当によかった。解説にある「(読み手と)共に育ってゆく小説」とは言い得て妙である。
- 感想投稿日 : 2022年3月25日
- 本棚登録日 : 2022年3月10日
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