「侍女の物語」のあと15年後の世界。リディア小母は小母のなかで最高位についている。カイル司令官とタビサの娘としてギレアデ共和国に育ったアグネス。カナダで古着屋の娘として育ったデイジー。この3人の物語が交互に語られる。
ギレアデ国の子孫継続政策は変わらず続いており、信じられない統制のもとに人々は暮らしている。。ギレアデ国では小母以外の女性は読み書きを許されていず、アグネスは字を読むことはできないようだ。一方カナダで育つデイジーの周りには、ギレアデ国からやってくる「真珠女子」がいて不穏な空気もある。
リディア小母は何やら「手稿」として出来事を書き綴り、今は読む人もいないカトリック枢機卿の書物をくりぬきそこに隠している。この最初から、リディア小母は何か企んでいるのだな、と感じる。アメリカやカナダとは地続きであるギレアデ国、こんな理不尽な国は壊れてほしい、と思い、この「手稿」が効果を発しますように、、との想いで読み進める。
これを読んでる間、ロシアのナワリヌイ氏が不審な獄中死を遂げた。なにかギレアデ国をちょっと思い浮かべる。リディア小母は現実の告発に「言語」を使った。ナワリヌイ氏も言葉で戦ったが力尽きた。
物語はリディア小母の「手稿」、アグネス、デイジーのは証人供述として語られる。そして最後の章は2197年のオンタリオ州アニシナアベ大学の第13回、ギレアデ研究シンポジウムだ。基調講演は英国ケンブリッジ大学・二十及び二十一世紀古文書保管所所長の講演なのだ。21世紀の古文書保管所、おおー、21世紀が保管されて・・ 壁画になって朽ち果てて、アレクサンダー大王の壁画と同じようになっている、、なんて画面が頭の中に浮かんできた。
「侍女の物語」は1985発表。34年後の2019年に発表された「誓願」。その間に冷戦は終わり、バラ色の未来が開けるのかと思いきや、なにやらギレアデ国が連綿として続いているような。
2019発表
2020.10.15初版 図書館
キリスト教の知識があると小ネタの理解が深まるか。
小川公代氏の解説で、リディア小母たちが立ち上げた「ラケルとレアのセンター」の「ラケル」の由来は、聖書の創世記に登場するヤコブとその妻ラケルの名前であり、ヤコブとの間に子供ができなかったラケルは自分の女奴隷にヤコブの子供を産ませ、自分の子供としたという逸話を、ギレアデ国が利用しているのだ、とあった。
- 感想投稿日 : 2024年2月23日
- 読了日 : 2024年2月23日
- 本棚登録日 : 2024年2月23日
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