阿片を喫んだ時の、幻影のようなものを描いていると思いきや、解毒治療に望む際の冷静な考察を書き連ねたもの。魅惑的な断章で綴られる一編。以下、抜粋。/ストラヴィンスキーは自分では知らずにいるが「春の祭典」は、細心な正確さをもって、解毒治療を管弦楽として現している。/罌粟は気が長い。一度阿片を喫煙んだものは、また喫むものだ。阿片は待つことを知っている。/阿片は目的を罰する。/五本目のパイプの後で、一つの思念は、その姿を変えて、しずかに、水の中へ墨汁を滴らした時のような高尚な気ままさで黒衣のダイヴァのように短縮った姿で肉体の水の中に下りて行くのだった。/「阿片は生命を停止して、人を無感覚にする。あの気持ちよさは一種の死から来るのだ」と言い放つのは造作もない。/阿片、それは宿命の女だ。寺院の偶像だ。忍びの間だ。/阿片を喫煙んでいる人は、四方を坂にとりまかれている。精神を高所に保つ事は不可能だ。夜の十一時だ。五分間喫んで、時計を出して見ると、もう朝の五時になっている。
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本・雑誌
- 感想投稿日 : 2019年1月13日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2017年7月23日
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