ハワイイ紀行 完全版 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2000年7月28日発売)
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感想 : 43

観光やサーフィンなリゾートだけじゃないハワイイを、といっても、リゾートのハワイイすらよく知らぬ身だけれども、ハワイイ固有の自然、言語、文化、産物、それを守り、受け継ごうと活動する人々、アメリカ化の浸透、などさまざまなトピックスを説き起こしてくれて、少しずつ、読み終わるのがもっったいなく感じるほどどっぷりハワイイに浸かれた、紙の上の旅行を堪能できた。以下備忘録的に。/神がヒトという種だけを特別にかわいがってくれるという妄想はもう捨てなければならない/ロビンソン一族の私有地ニイハウ島/「一日ここでぼんやりしていた。少し泳いだし、いい日だったさ」/真昼のプリニウスでの、ホースで溶岩を止める試み/ハワイイ本来の植物は山の上の方に追いやられ、細々と暮らしている/ハワイイに最初にクックがヤギを連れてきて、天敵もおらず餌は食べ放題でたちまち増えた/キース・ロビンソン「なすべきことが目の前にあれば、ただそれをすればいいのだ」/ジェイムズ・クック。出会った島民に敬意をもって接し、その文化を軽侮の目で見ることもなかった。/カメハメハの統一。1810-9年。戦いは終わり、統治は安定し、王は敬愛を受けた。/カアアフマヌの合理主義。偶像は倒され神官の権威は失墜/池澤夏樹「楽しい終末」/はじめに詩があり、それに節がつき、振りが添えられてフラになる/大きなハワイイ語の辞書には様々な雨を表す単語が百三十、風を表す言葉が百六十載っている/バリーフラナガンのギター奏法。駒沢敏器「ミシシッピは月まで狂ってる」/チャールズとケリイのデュオ、ハパ/文字がないとなれば、朗唱と儀式と彫像と神殿がその抽象的な概念を伝える役を担う/マウ・ピアイルグは自分が知っている海域をはるかに離れたところで、赤道を超えて北極星が見えなくなるところまで行って、なおかつ目的地に船をピタリとつけた。/身内の集まりに、二千人が押しかける、遠慮という言葉が辞書にないハワイイの人/精妙な神話体系を作り出し、素晴らしいフラを生み出し、チャントを唱え、レイを作り、日々を飾った。/この海を走ってぼくが感じたのは、自分たちがいかに無力であるかと覚ることの快感、自然の力がいかに大きくて、予測不能で、こちらを無視しているかを実感することの快感だった。/池澤夏樹「明るい旅情」/ミッドウェイ海戦を戦闘詳報を綿密に読み込んで描いた澤地久枝「そう海よ眠れ」/アホウドリの振るまいをただ坐って一時間も二時間も見ているだけで心が心地よくゆるむ。遠くから息をひそめてモンク・クールを見ている喜びも忘れられない。/「宇宙をうたう」中公新書、日本の詩歌に登場する天体を縦横に論じてこんなに面白い本はない。/

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本・雑誌
感想投稿日 : 2012年8月11日
読了日 : 2018年3月3日
本棚登録日 : 2012年8月11日

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