四神の旗 (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社 (2020年4月18日発売)
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感想 : 18

藤原不比等の息子たち、藤原四子が主人公。参考文献にもあげられてる、木本好信「藤原四子 国家を鎮安す」(ミネルヴァ評伝選)が色濃くベースになっていると感じた。すなわち、藤原四子は一致結束して政権運営にあたったのではなく、いち早く参議となった房前は不比等の後継者ではなく、長兄武智麻呂が後継者、房前とは最終的に対立し、宇合、麻呂は武智麻呂に協力した、という視点。/武智麻呂:藤原家を繁栄させる 房前:自分は藤原の一門である前に天皇の臣下。ただ天皇でも間違えば臣下として諫言する。 宇合:この国を唐と並ぶ強国にする 長屋王:政を皇親の手に取り戻す 聖武天皇:朕の意のままに政を行う 安宿媛:首様を支える/それぞれの思いが交錯し、ぶつかり合い、強引ともいえる決着の付け方、そして祟りとも云われる終わり方に、史実を知る身であっても、割り切れぬ、重いものを飲み込んだような心持ちに。また、特徴としては、史実はもとにしているけれど、何年にこれがあった、という記載がほぼないので、時間の長さがあいまいにされ、例えば、長屋王の変直後に、武智麻呂らが罹患したようにも読める、そのあたりは意図したものなのかな、と思った。まだそこまではっきりとは形になっていないけれど、突き詰めれば、支配者の独裁か、有力者の合議制か、という対立軸になり、そこに皇位継承に関するそれまでのしきたりと天皇自身の我が子、我が孫に継がせたいというプライベートな思いがぶつかりあい、そこに自らのお家を繁栄させたい各家の思いがからまりあい、と。/しきたりは、いずれ新たなしきたりに取って代わられる(不比等)/天皇といえども、すべてが思いのままになるわけではない----長屋王は朝堂でそう言い放った。やり方さえ考えれば、天皇はすべてを思いのままに動かせる----武智麻呂は天皇にそう教えている//「兄上にとっては正しいと思われることでも、わたしにとっては間違いとしか思えぬこともあるのです。どうしてそれがわからないのですか。自分が絶対に正しいからですか。兄上は絶対に間違いを犯さないのですか」(麻呂)/「あなたは自分でも気づかぬうちに驕っていたのです。左道も呪いもどうでもいい。このような事態に陥ったのは、あなた自身が招いたことです」「人は感情に左右される生き物です。あなたは原則を盾に、その感情を無視した」(武智麻呂から長屋王へ)/「わたしなど、滅相もありません」 驕ってはならん。長屋王の死はわたし自身への戒めだ(武智麻呂)/「権力に正しいも悪いもない。権力はただ権力だ。」「話をしたことはない。だが、普段のあいつの様子を見ていれば察しはつく。おまえはなにを見ていたのだ。ただ、自分が正しくある、それだけを考えていたのだろう」(武智麻呂から房前へ)/個人的には一番宇合に惹かれていたようだ。気がついたら、宇合の言葉、思いに一番多く付箋を立てていたから。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年2月21日
読了日 : 2022年2月18日
本棚登録日 : 2022年2月21日

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