美術探偵・神永美有 天才たちの値段 (文春文庫 か 48-1)

著者 :
  • 文藝春秋 (2010年2月10日発売)
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感想 : 48

新作を目にすると舌が甘さを、贋作を目にすると舌が苦さを感じる美術探偵・神永美有。彼が持ち込まれた難題をバッサバッサと解決という設定かと思いきや大学の美術講師・佐々木が相棒的な役割にして語り手。直感の神永、理論の佐々木というタッグで、ボッティチェリ、フェルメール、涅槃図、ガラス工芸、モラエスの古地図などをお題に、持ち込まれた難題に取り組んで解決していく連作短編集。奇抜を芸術と履き違えた自負と傲慢と猪突の申し子、佐々木の教え子のイヴォンヌがまたいい味を出す狂言回し的な役割で。◆「ギャラリーフェイク」が好きな身としては、美術品にまつわる連作ミステリなんて読まずにいられようか。その期待を十二分に満たしてくれた。贋作は苦く、真作は甘く感じるという舌、という仕掛けも面白く。美術探偵と美術講師というホームズとワトソンばりの相補う関係、また絶妙な距離感もよくって。◆人間の審美眼なんか、もともと誰とも共有し得ないものなんだ。p.39◆根源的な疑問なんてのは最も厳格な哲人か、ただの甘ったれのどっちかが持ち出すものだ。その中間に位置するすべての良識ある大人はな、それを無視するところからしか仕事をはじめられないんだよp.40◆天才はたしかに存在する。それに対して凡人がとるべき態度は一つしかない。心ゆくまで嘆賞することだ。p.60◆

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年6月21日
読了日 : 2023年6月17日
本棚登録日 : 2023年6月21日

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