ストーカー事件による不利益は、いちじるしく公平を欠くと思えるほどに、被害者側にのみ重くのしかかる。住居移転を余儀なくされ、仕事にも支障を来たし、軽々にいえないことにより今までの友人関係や地域とのつながりに日々が入り、警察や裁判所関係にとられる膨大な時間と手間、それに比して加害者の刑期、金銭的補償、精神的賠償、いずれの面でもまったくもって不十分というのがこれでもかこれでもかと描かれる。そして恐怖というものが人の判断をいかに曇らせるかということが如実にわかる。これを、本来なら思い出したくないだろう被害者の立場から、相手が誰かを特定できないようにしたとしつつも、詳細に、克明に記してくれたということには頭がさがる思い。被害者が事件後も安心して暮らせるようにという観点からの、加害者を罰するだけではなく治療も受けさせるべきという提言も。◆被害者になってしまったのだ、自分は。何もかも奪われてひっそりと暮らす、被害者に、気がついたらなろうとしている。…冗談じゃない。奪われて、たまるか!(p.77)◆そしてなぜ被害者側にこんなに屈辱的な思いを強いられ、隠れるように怯えて生きなければならないのか。被害者は隠れるのがあたりまえと世間は思っているようにすら感じられます。(p.308)◆「絶対安全」は、もう私の人生にはないのだから。(p.392)
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- 感想投稿日 : 2023年5月21日
- 読了日 : 2023年5月21日
- 本棚登録日 : 2022年5月8日
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