かもめのジョナサン (新潮文庫 ハ 9-1)

  • 新潮社 (1977年6月1日発売)
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そう、重要なのは食べることではなく、飛ぶことだ。風になることだ。
急降下、宙返り、きりもみ、そして全速力――飛ぶことだけのよろこびを味わうために、光りかがやく空の果てまで飛んでいく一羽のかもめ、ジョナサン・リヴィングストン。
群れから追放された異端のかもめは、強い意志と静かな勇気をもって、今日もスピードの限界に挑戦する。夢と幻想のあふれる現代の寓話。幻の第4章を加えた完全版として、復刻。
1970年代、資本主義や物資主義に背を向けたヒッピーや競争社会に疲れた人々にとって、ベストセラーとなった「かもめのジョナサン」。
食べるエサを探す手段としての飛行技術というよりは、純粋により早くより高く飛ぶことを追求するジョナサン・リビングストンの姿は、広告により購買欲を刺激する資本主義や出世を追い求める競争社会や広告でブランドものを売りつける物質主義に疲れた新たな価値観を探したい若者の心を掴んだ。
だが、「自由を追い求める手段としての飛行」を追求する姿勢や飛行技術が忘れさられ、神がかりさを強調する神話的なエピソードやジョナサンとその直弟子を神格化するジョナサンの信奉者の堕落を描いた幻の第4章は、イエス・キリストや仏陀の教えを歪めて衰退する宗教のようでほろ苦い。
とはいえ、生活にまみれてしまった大人にも、社会に出る前の子供にも、ぜひ一度でいいから読んで欲しい現代の寓話。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2024年4月16日
読了日 : 2024年4月16日
本棚登録日 : 2024年4月10日

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