職業としての政治 (岩波文庫 白 209-7)

  • 岩波書店 (1980年3月17日発売)
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政治屋(politician)は次の選挙を考える。政治家(statesman)は次の世代を考える。ジェイムズ・フリーマン・クラークClarke(1810-1888) ※アメリカの神学者

国家とは空間的に限定された排他的な支配領域をもち、そこに定住する人間の統一体。ゲオルク・イェリネックJellinek『一般国家学』1900

政治とは政治団体と国家の指導に影響を与えようとする行為。政治活動とは権力の配分・維持・変動にかかわる活動。国家とは一定の領域内で、正当な物理的暴力行使の独占を要求する共同体。▼政治家は党派ごとに権力をめぐる闘争を行うが、官僚(行政スタッフ)はあくまで非党派的に偏りなく仕事する。政治家はその責任を一人で負うが、官僚は上の命令を自分の信条と関係なしに誠実・正確に実行する。官僚に向いてる人は、政治家には向かない。政治家は情熱と責任感、判断力が求められる。虚栄心、自己陶酔のために権力を求めるのはダメ。権力のために権力を求めるのはダメ。▼自分の行為の結果に責任をもたない官僚が力を増大させれば、議会の力が弱体化してしまう。そこで民主的に強力な指導者を選出し、そのカリスマ性により官僚の力を制約する必要がある。ヴェーバーWeber『職業としての政治』1919
※キール軍港の水兵反乱、ヴィルヘルム2退位、エーベルト臨時政府(1918)

国家とはある地域的に限定された共同社会で社会秩序を維持する団体。秩序を維持するため、政府は法に基づいて強制権力を付与される。マッキーヴァ―『近代国家』1926

政治家になるような人間は自尊心が低い。政治家になれば、権力や特権が手に入る。自らの低い自尊心を埋め合わせるために政治に没頭する。公共利益を掲げているが、その背後には私的な動機がある。ハロルド・ラスウェル『権力と人間』1930

経済で重要な区別は利益になるか利益にならないか。芸術で重要な区別は美しいか醜いか。道徳で重要な区別は正しいか正しくないか。政治で重要な区別は味方なのか敵なのか。カール・シュミットSchmitt『政治的なものの概念』1932

人々を魅了する権力。人々は感情に訴えるもの(Miranda: 記念日・記念碑、威厳のある公共の建造物、音楽、物語や歴史、念入りな儀式)を見ると、権力者を尊敬・服従してしまう。人々は知性・理性に訴えるもの(Credenda: 政治権力は唯一神によって定められた・政治権力は卓越したリーダーシップを示す・政治権力は多数者の意志だ)を聞くと、権力者を尊敬・服従してしまう。チャールズ・メリアムMerriam『政治権力』1934

政治とは一定の支配単位内の諸利害を権力を参加させつつ調停する活動。バーナード・クリックCrick『政治の弁証』1962

政治に固有の性質はいかなる時・場所でも、相反する価値・感情を含んでいること。二つの顔をもったヤヌス(門戸の守護神・ローマ神話)のイメージこそ国家の象徴であり、政治の現実を表すもの。モーリス・デュベルジェ(1917-2014)

財力や情報、コネなどの社会資源が多い人ほど、権力を持ちやすい。ピーター・ブラウBlau『交換と権力』1964

政治において何が議題になるかについて権力が入り込む可能性がある。特定の人に利益を前提とし、特定の人を排除したものだけが政治の議題として表面化している可能性がある。政治の議題として上がる前に、すでに権力が行使されている。権力は政治決定への影響力の行使(Dahl 1961)という側面だけでなく、「何を決定しないか」という側面がある。Bachrach & Baratz『権力の二つの顔』1962

権力には色んな次元がある。相手にこちらの意図に沿った行いをさせる力としての権力。ある問題が顕在化する前に、問題そのものを潰し、争点化するのを食い止める力としての権力。相手の欲求や認識そのものを変化させて、対立の認識そのものを消してしまう力としての権力。スティーヴン・ルークスLukes『権力:ラディカルな見方』1974

政治とは、多くの人々の間で正当とされる方法で紛争を調停・和解させること。バーナード・クリックCrick『政治とは何か/現代政治学入門』1987

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カテゴリ: 社会学・政治学
感想投稿日 : 2023年4月9日
本棚登録日 : 2023年4月9日

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