雁 (岩波文庫 緑 5-5)

著者 :
  • 岩波書店 (2002年10月16日発売)
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本棚登録 : 277
感想 : 43

財産についての観念が本作の大きな主題となっている。この観念は娘の森茉莉の作品からも汲み取れるけれど、具体的には、足ることを知る、ということである。本能的な欲望の奥深さについて、鴎外の思考は深く根を張っている。いかに多幸多福を知るか。この作品の感じがよくて心惹かれる人物達の中で、とりわけ、お玉に強い関心を持った。自己の身命を捧げるほどにして父親のために尽くし、恋愛を秘密にしてさらに成長していく。何より制度/機構/時代に振り回されず、自分を自分によって動かす彼女の人生は、とてもロマンチックだとわたしは思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本
感想投稿日 : 2022年1月15日
読了日 : 2022年1月12日
本棚登録日 : 2022年1月15日

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