財産についての観念が本作の大きな主題となっている。この観念は娘の森茉莉の作品からも汲み取れるけれど、具体的には、足ることを知る、ということである。本能的な欲望の奥深さについて、鴎外の思考は深く根を張っている。いかに多幸多福を知るか。この作品の感じがよくて心惹かれる人物達の中で、とりわけ、お玉に強い関心を持った。自己の身命を捧げるほどにして父親のために尽くし、恋愛を秘密にしてさらに成長していく。何より制度/機構/時代に振り回されず、自分を自分によって動かす彼女の人生は、とてもロマンチックだとわたしは思った。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本
- 感想投稿日 : 2022年1月15日
- 読了日 : 2022年1月12日
- 本棚登録日 : 2022年1月15日
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