高倉健 七つの顔を隠し続けた男

著者 :
  • 講談社 (2017年8月30日発売)
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感想 : 20
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高倉健関連の本は少しずつ読んでいるが、森 功はノンフィクションライターで、特に高倉健のファンというわけではないので、他の本のようにただ高倉健を讃えるタッチになってないのが好感が持てる。

プライベートにも踏み込んで都合の悪いことも書いている。高校時代から暴れん坊で、明治大学も親の伝で入る。しかし講義には出ずに酒とケンカの放蕩の生活をおくる。「明治の小田(本名)」として有名だったとか。就職先もなくしょうがなく俳優になる。



ヤクザの家に泊まっていたこともあって、以後もヤクザとの付き合いも深い。一般人と別け隔てすることをしなかった。



女性との交際も多く、児島美ゆきとしばらく同棲しているなんて知らなかった。



江利チエミとの破局は有名だが、異父姉が復讐のために二人に近づき、家に入り込み、兄を追い出し二人の仲を裂いていく。そのための「復讐ノート」なるものも作っていた。おなじみの話だが心が痛む。



晩年、高倉健が小田貴という人を養女にしたのだが、この人が高倉健の死後異常な行動に出る話は驚くばかりだ。

勝手に密葬して葬儀は行わず、遺骨を親戚にも渡さない。一般の人が高倉健の墓参りをしたいと思っても墓がない。



ありがちな遺産相続争いかと思ったら、高倉健の住居、車、クルーザー、江利チエミとの水子の墓までも、いっさいを短期間に処分している。いずれも使えるものばかりで、高倉健が使ったものと言えばさらに高く売れるのに解体している。なので金目当てでもない。高倉健という痕跡を消し去ろうというような行動だ。



筆者はそれについて「瞋恚(しんい)の炎」という言葉を使ってる。知らない言葉で辞書をひくと「燃え上がる炎のような激しい怒り・憎しみ、または恨み。」とある。



瞋恚の正体は分からないが、10年以上一緒にいたのに、高倉健の心の中にあるのは江利チエミだけだったというようなことではないかと筆者は推測している。



これだけ多くの人に愛された俳優の一番側にいた人が彼を一番憎んていた人というのはなんという悲劇なんだろう。どこか江利チエミの異父姉とダブルところがある。

人間ってなんと邪悪で残酷な存在だろうかと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2018年3月18日
読了日 : 2018年3月18日
本棚登録日 : 2018年3月18日

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