ある寒い冬の日、地上を何マイルも離れたはるかな空の高みで生まれ、風にゆられ、羽のようにふきながされながら見知らぬ世界にうかびでた“雪のひとひら”。
いつ、どのようにして、なぜ生まれたのか、彼女には見当もつかず、問いかけてもこたえはなく、どちらをむいても自分と同じ生まれたばかりの兄弟姉妹が大勢いるのにさびしくてたまらない。
暁の光が射しそめる中、山の辺にふうわりと降り立ったその瞬間、旅は終わり、雪のひとひらの人生が始まった。
女の子の橇にひかれ、雪だるまの鼻にされ、新雪の下に凍り、春の日差しに解け、川を流れ、湖へと流れ込む。
やがて出会った“雨のしずく“と結婚し、子供たちが産まれ、また川を流れ、町の水道をめぐり、海へと向かう長い長い旅は続く……。
冬の空でのひとひらの雪の誕生から死に至るまでの旅を静かに細やかに描いています。
その旅は平凡な女性の、けれど満ち足りた理想的な人生そのもののようです。
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外国の作家:G
- 感想投稿日 : 2013年7月19日
- 本棚登録日 : 2013年7月19日
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