鑑賞を終えて、深く息を付いてしまいました。
素晴らしい芸術作品には、観る者の魂を削る力があります。
削られた魂は、その欠落を埋めようと、芸術作品へと語りかけます。
優れた芸術作品は、自らが削った魂の欠片へと自らを織り込み、返してくれる。
類い希な芸術作品に触れることで、心が豊かになる理由は、こういうコトです。
だから本作を観賞後、深い息が吐き出されるのです。
ちょっと豊かになった魂の欠片。
戻ってきた事で、少し大きくなった魂。
魂の住処が窮屈になってしまいます。
その為、息を吐き出しながら、住処をちょっと広げるのです。
Michael Endeの広大な想像力が、短い詩編にぎゅっと凝縮されています。
その傍らには、Binette Schroederの不可思議な世界が描かれます。
言葉によって紡がれる、幻想的な風景。
絵画によって描かれる、幻想的な風景。
二つの風景が、異なる表現で、同じ一面に描かれます。
それはまるで、白昼夢の中に迷い込んでしまったかのような心持ちです。
時間や空間を何処かに置いて、ただその風景を無心に眺めているかのようです。
Michael Endeの絵を観るのは初めてでした。
とても味があって、寂寞を感じさせる素晴らしい絵でした。
なんとなく、佐々木マキ氏の絵柄を想像しました。
Endeの言葉には、魔法が掛かっていると思います。
その魔法を崩すことなく、異なる言語へと移してくれる。
そんな妙技が出来る、訳者の酒寄進一氏は素晴らしいです。
全ての詩編が素晴らしく、心が静かに浸食されていくのが分かります。
Endeの紡ぐ言葉によって生まれる世界は、不思議な光を湛えています。<blockquote>気に入ってくれたら拍手をどうぞ
<DIV style=text-align:right><i>「閉幕」より</i></DIV></blockquote>静かに、けれども熱狂的な、そんな拍手を捧げたいと思います。
本作を鑑賞される方は、どうか急がず、ゆったりと物語を<b>眺めて</b>下さい。
その文字から、絵柄から、作品の端々から、漂ってくる息吹を感じられるはずです。
- 感想投稿日 : 2018年11月13日
- 読了日 : 2007年11月11日
- 本棚登録日 : 2018年11月13日
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