自分以外の他人の人生を垣間見れるのが小説だとすれば、僕にとって小説は、僕自身の価値観を見つめ直すきっかけになることもあります。
物事の善悪は、視点や時代によって変わっていくものだということを改めて気づかされました。そして物事の全ては最終的には時代に飲み込まれていくのでしょう。
戦後の混沌とした時代や高度経済成長期を経験してきた祖父母や両親は、そのときにはその時代を生きる認識など全くなく、ただ生きることに必死であっただけなのでしょうが、今振り返ってみれば、現代を生きる僕を幸せだとも感じるだろうし、不幸だとも感じられると思います。
僕にとっては今しかないので、幸せな時代だとか不幸な時代だという感覚はないのですが、その感覚がまさに時代に飲み込まれているのだろうと思いました。
「過去は消えないから自分たちは今ここにいる」という太二郎の言葉には深い共感が得られ、読了後、自分のルーツや家族に一層の愛着が湧きました。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
角田光代
- 感想投稿日 : 2013年4月11日
- 読了日 : 2010年11月11日
- 本棚登録日 : 2010年12月1日
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