現代社会の理論: 情報化・消費化社会の現在と未来 (岩波新書 新赤版 465)

著者 :
  • 岩波書店 (1996年10月21日発売)
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 当たり前のことを当たり前に描写していくこと、それを読んで吸収することが読書の一義的な意味なのだろう。だが、それは消費に過ぎない。創作(いかなる分野の研究も創作のひとつ、私にとって。)を消費してやり過ごすことに疑問を感じる私にとって、当たり前がその記述の中で、「なぜそうなのか」を組み立てられる点にこそ、読書に自分の時間、限られた時間を割く価値があるものと考える。
 本書は、冷戦の雲が晴れた1990年代における「現代社会」を情報化・消費化社会という切り口で描き、社会問題の視点を述べたものである。すでに25年、四半世紀を経過し、ここで述べられる社会問題の視点は「当たり前」となっている。当たり前、というのは、今にもつながる、そして近未来から遠い未来に至るまで普遍的に残り続けるであろう課題の根底になるという意味である。
 本書は、そんな当たり前を述べているという点では評価できるし、深読みすべきだ。だが、残念ながら、「当たり前」を「当たり前」と感じられる内容の経緯や理論としては論述が浅い。新書という媒体の限界なのかもわからない。特に、著者は情緒的な著作から社会を抉り出すとともに、統計的なデータから必然的に表れる現象解釈で追い打ちをかける論理展開が秀逸である、という先入観があったので結論と根拠・例示が淡々としすぎていた。参考文献、その後の著作を読んでみようかと思う(すでに10年後・2006年の著作を読み終えたうえで根幹にさかのぼったつもりだったのだが…)。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 読み物(社会)
感想投稿日 : 2021年6月9日
読了日 : 2021年6月9日
本棚登録日 : 2021年5月8日

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