悪い時: 他9篇

  • 新潮社 (2007年6月30日発売)
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本棚登録 : 172
感想 : 9
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「ママ・グランデの葬儀」収録作品で『土曜の次の日』以外と、「エレンディラ」に収録されている『失われた時の海』と、
中編小説「悪い時」を1冊にまとめたもの。(なぜ「土曜の次の日」を省いて「失われたときの海」を入れたのだろう?)
舞台は、田舎の村や町で、のちに『百年の孤独』のマコンドとなる。
「百年の孤独」の感想はこちら。
https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/4105090011
「ママ・グランデの葬儀」の感想はこちら。
https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/4087600793#comment
ここに入っていない「悪い時」のレビューを書きます。

『悪い時』
10月4日の火曜日にセサル・モンテーロがクラリネット奏者のパストールを射殺したことから話が始まる。
舞台は”村”よりは少し大きな”町”で、かつてアウレリャーノ・ブエンディーア大佐が滞在したホテルが有る。
保守党が自由党を鎮圧したが、いまだに政治的緊張は続き、町にもパトロールの憲兵がいる。
そんなこの町で最近毎晩町人のスキャンダルが書かれたビラが貼られている。
セサル・モンテーロは、自分の妻がパストールと浮気をしているというビラを読んで彼を射殺したのだ。
かつて選挙活動で反対派を粛清した町長、道徳にはうるさいが政治のための暴力には口出しできないアンヘル神父、臨月の内縁の女がいるが他の女のところにも通うアルカディオ判事、反政府として目をつけられてきた歯医者、しばらく前に死に町人の財産没収で財を成したドン・モンティエル、夢と現実との間に生きるモンティエル未亡人…。

それからのほぼ毎晩町人のスキャンダルのビラが貼られる。それは町中の人が知っている浮気問題もあれば、まったくもデマもある。そんな中傷ビラは、政府に抑えつけられた生活を送る町人たちの心のうちを浮き彫りにさせる。

夜間外出禁止令、取り調べ、射殺、次々現れる鼠の死骸、痛みを増す虫歯…悪い時がやってきた。だがそれは突如として来たのではなく現れただけなのだ。

===
短編集『ママ・グランデの葬儀』、この中編作品『悪い時』でマコンドの根本ができて、『百年の孤独』に繋がったという流れが見えるような作品集。

『百年の孤独』からは、アウレリャーノ・ブエンティーア大佐、レベッカ、アンヘル神父、イザベル神父の名前が散見される。
『悪い時』のアンヘル神父は以前マコンドにいて、その後任がイサベル神父という流れ。そしてイザベル神父の本名はアントニオ・イサベル・デル・サンティシモ・サクラメント・デル・アルタール・カスタニャーダ・イ・モンテーロだと判明したんだが、他のみんなもこんな長い名前なんだろうか(汗)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ●南米短編
感想投稿日 : 2021年3月12日
読了日 : 2021年3月12日
本棚登録日 : 2021年3月12日

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