直木賞受賞作「暗殺の年輪」はじめ、それまでに直木賞候補となった作品などその周辺の作品をまとめられた短編集です。この時期ならではの著者の作風を感じることができます。女と男の関係、それに感情的に振り回される情景、他人の心の分かりにくさとそれ故の不幸、全体を通して暗い印象の中に、そんな人間らしさを感じる作品達です。「黒い縄」「暗殺の年輪」「ただ一撃」と、闘い(というか喧嘩)に向かう男と、それを見ている女性との関係を。その世界の虚しさを感じられました。「溟い海」「囮」はそれぞれ人間の持つ暗黒の一面とその魅力を感じられるものでした。
形の見えないものである心の動きへの描写がとても魅力的で、引き込まれるところがありました。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2023年8月1日
- 読了日 : 2023年8月1日
- 本棚登録日 : 2023年6月25日
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