「宿命」
和倉勇作と瓜生晃彦。
和倉勇作と瓜生晃彦という2人の人生が交錯するストーリー。タイトルからして何から先が読めてしまいそうな部分はある。しかし、一つの殺人事件を軸に2人の男にある数奇な運命だけではなく、両親の背景にレンガの病院、そして美佐子がうっすら感じ続ける「操られているのではないか」と言う見えない糸の謎が解ける形になっている。
テーマに大きく関わっているのが脳科学である。勇作と晃彦の運命の重さを創り出すことを考え、丸っ切りの空想に見えず、ある程度あるかもしれないと思えるレベルで脳科学が使われている。確かにありそうなものになってる。
因みに、美佐子を巡る勇作と晃彦の結果なのだが、なんか腹落ちしない。晃彦の覚悟を知ったことがポイントになったようだが、果たしてそうなんだろうか。晃彦は重要なことを隠してきたが、それと美佐子との問題はあまり関係がないように思うのだが。この点は、勇作の推測であり、どんなことが起きたかわからないが、美佐子がよく分からない。
本書は、学園モノのレッテルを早く剥がしたいとの思いから、読者をびっくりさせる為に書き上げたとのこと。事件のミステリーだけではなく、登場人物達の背景に秘密を込めて、びっくりさせることに成功したようだ。「変身」の前身に当たる作品なだけに「変身」が読みたくなる。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2019年5月12日
- 読了日 : 2019年5月12日
- 本棚登録日 : 2019年5月12日
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