「悼む人〈上〉」
第140回直木賞受賞作。
ゴロウデラックスにまさかの天童荒太登場!を見てから、作品を読もう読もうと時は過ぎ。代表作の一つである本作を漸く読了。
個人的な想いで不慮の死を遂げた人々を悼むため、全国を放浪する坂築静人。彼の行為に疑問を抱く人と抱かない人、貴方はどちらだろうか。
静人は死を遂げた人間が悪人だろうと、その悪人もきっと愛されたことがあるに違いないと考え、であれば、死を悲しんだ人がいるはずだからその人の為にも悼む。死んだ人はどんな人だったのかを死者の関係者に聞き回る為に、変人や不審者扱いをされる。死を弄んでるかの様に見え、不謹慎だと怒鳴られることもある。しかし、静人は悼むことを続ける。
確かに静人は善人ではあるが、同時に異様さを感じてしまうのは仕方がない。だから、彼の行為に疑問を抱く蒔野の気持ちは理解できる。更に自らの過酷な経験を通じて静人に「もう悼まないで。少なくとも愛なんて言葉で覚えないで」と訴え、静人が蕭然と改心を表明するのを待った奈義の気持ちも無視は出来ない。
しかし、静人は彼らの疑問や想いに対して明快な回答を出す訳ではない。だから彼らは答えを見つける為に静人に付きまとう。静人は何故そこまでして悼むのか。不明で奇怪で謎めいた行為を紐解きたくなる。それは仕方ないことだ。誰だって静人を見たらそうなる。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2019年8月30日
- 読了日 : 2019年8月30日
- 本棚登録日 : 2019年8月17日
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