悪童日記 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

  • 早川書房 (1991年1月1日発売)
3.99
  • (293)
  • (181)
  • (273)
  • (7)
  • (5)
本棚登録 : 1288
感想 : 241
3

戦争の激化に伴い、双子は祖母の家に預けられる。
ケチで不潔、粗暴な彼女の元で
双子は悲観にくれることなく
自身の鍛錬にいそしみ、労働を覚え、生き延びていく。

この作品内に個々の感情は吐露されることなく、
淡々と、発せられた言葉、行動がつづられている。
双子は鍛錬を通して、絶対的な精神の強さ、冷酷さを得る。

歪んだ性の描写、不潔な暮らし、戦争がもたらした破壊、死、
歴史的事実に基づく社会の揺らぎ
あらゆるインパクトのある題材を用いながら
冷徹な文章を貫くことで、奇妙で薄暗い人々の陰、残虐性を感じた。

双子の名前すら明かされることなく、どちらの発言、行動なのかも
明言されることはない。
個々を没することで一心同体となり、超越したものとなる。

神を信じない、というスタンスの作品を近頃読むことが多い。
どの作品でも、自分自身の鍛錬がより必要になり、
ストイックに生きていくことを選ぶ。
神に頼ることなく自分に課していく。
死に物狂いに精錬されたものは強い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2011年10月20日
読了日 : 2011年10月20日
本棚登録日 : 2011年10月20日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする