物質から膨大なエネルギーを生産する代わりに、人間に不可思議な影響を及ぼす機械。読み始めた時、放射能のメタファーかな?と思ったが、もちろんそれもあるのだけれど、むしろ人間の信仰がテーマ。外在的なモノによって猛烈な信仰が生まれたとき、人間はどうなるのか。
信仰という思いは同じでも、それぞれ信じる神の名は違うため、世界中で各々の真理を奉じた宗教戦争が起きる、という身もふたもない予測を見せているのが本書。
そしてその課題への解答が、最終章の人々の会話の場面で明確に示されている。
「人は、たとえばほかの信仰は悪いものだと考えたっていいけど、その信仰を持っている人を悪い、下品で、いんちきな奴だと考えちゃいけねえ。それは政治でもなんでもそうだがね」「(略)最大の信仰は人間への信仰だろうな」「誰でも人類のことはとてもよく考えてるんだが、個人個人については、それはない。おまえを殺してやるぞ、でも人類は救ってやる、ってわけだ。それはいいことじゃないね、神父さん。この世は悪くなるだろうね、人が人を信じようとしない限り」(p274)
この会話の後、本来の自分の好みと違う調理法のキャベツを試してみようとする神父の姿が、なんだかとてもいい。
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- 感想投稿日 : 2018年8月26日
- 読了日 : 2018年8月26日
- 本棚登録日 : 2018年8月14日
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