- 風の鎮魂歌(レクイエム)~龍の棲む村~【秘苑の蝶】
- 東めぐみ
- -
- オリジナルアイテム / 本
- 購入する
☆「秘苑の蝶」第一部第二話「風舞う桜~龍神の花嫁~」スピンオフ作品。一年に渡って書き継いできた長編「秘苑の蝶」第二部ここに完結。
女に欺された男は失意と絶望のあまり、老いた母と幼い娘を捨てた。霧深い秋の早朝、村を出た男は二度と戻ってこなかったー。
孤独な青年が辿った心の軌跡と、やがて運命の女と巡り会い絶望のどん底から立ち上がるまでを描く魂の再生録。
**********(本文より抜粋)
歴史を作ったのは、けして王や王族、両班と呼ばれる後世の歴史に名を残した特権階級の人々だけではない。名前さえ伝わっていない庶民もまた、歴史を作ったのだ。いや、むしろ彼らの方が貧困に喘ぎながらも、強い力で根底から国を支え時代を作った。民衆の逞しさは、いつの世も国を作る〝底力〟であったと忘れてはならない。
私たちよりはるか昔を生きた人々の涙が土壌となり、やがて後の私たちが生きる時代という美しい花を咲かせた。
歴史に名を残した有名人だけでなく、時代、歴史の底に沈んでいった人々をも余さず描くことが時代小説を書く者の務めだと私は思っている。
〝秘苑の蝶〟は、けして王と王妃をめぐる恋愛譚のみではなく、北の大地にしっかりと根を張って生きた名も無き民の話で幕を閉じる。
2024年5月12日
- 韓国時代劇 禁婚令 9~10巻
- -
- オリジナルアイテム / その他
- 購入する
面白かった。
ーというより、主役の王妃と国王が互いを想い合う強さがとても良かったと思う。
名門両班家の嫡女として生まれながら、腹黒い妾とその娘に陥れられ、母を殺害され、自らも殺されかけたヒロインのイェ・ヒョンソン。
腹違いの妹は、異母姉である彼女の名前を名乗り、若き国王の継室を選ぶカンテクに名乗りを上げようとしている。
一方、国王は世子時代に喪った嬪宮ー妻をいまだに忘れられない。嬪宮はあろうことか、自害ということになっているが、その実、何ものかに殺害されたのだ。
更に、毎年、王宮では女官が殺され、カンテクの有力な候補令嬢やはさらわれるというきな臭い事件が相次いでいた。
何ものかの奸計によることは判っていたが、それを阻止するために「禁婚令」を発布したものの、自由に恋愛結婚できない民たちの国王に対する不満は今や爆発寸前に達しようとしている。
名前を奪われたヒョンソンは「ソラン」として恋愛相談や占いに乗る商売をしていたが、実は「詐欺紛い」のことをやっていた。
そんなソランが「亡き嬪宮の霊を降ろす」ことができると偽り、国王に近づく。臨時女官として国王に接する中、次第に二人は惹かれ合うようになってゆく。
ヒョンソンの存在を抹殺した妾と異母妹と通じていたのは、時の兵曹判書だった。彼らは「ソラン」をも何度も亡き者にしようとし、失敗するとソランにあらぬ罪を被せようとする。
何度も危機を乗り越えたソランに最終的に救いの手を差し伸べたのは王の祖母大王大妃であった。
ついに「ヒョンソン」と名乗る異母妹が最終カンテクの場に立ち、王妃に選ばれようとする時、「本当のヒョンソン」がそこに登場し、一座は混乱する。
しかし、ヒョンソンの父イェ大監自身がヒョンソンこそが長女であり、真実のヒョンソンだと断言したことにより、彼女は漸くその「存在と名前」を取り戻したのだった。
ドラマとしては山あり谷ありの展開で、非常に面白かったが、歴史ドラマとして見ると、ちょっとあり得ない設定や展開もあったのではないか。
しかし、冒頭にも「フィクションである」と明言されており、これは一つのエンターテイメントとして楽しめば良いのだろう。
一途なヒーローとヒロインの純愛が報われて良かった。
なお、個人的には、亡き妻を忘れられず悶えるイケメン国王はあまりに美男すぎて、眩しいほどだったし、ヒロインの元婚約者にして義禁府都事の青年は、ヒロインをいまだに想いながらも国王と彼女の恋を知り、身を引いて「見守る男」に徹したところもグッときた。
ソラン役の女優さんは、中にはミスキャストという声もあったようだが、私としては、お転婆で破天荒ながらも、心優しくまた「不幸を他人のせいにせず、真正面から受け止めて乗り越えようとする意思の強さ」を持ち、絶望の中でも活路を見いだそうとする聡明なヒロインには、ぴったりの人だと感じた。
2024年4月30日
- 薬屋のひとりごと 15 (ヒーロー文庫)
- 日向夏
- 主婦の友社 / 2024年3月29日発売
- Amazon.co.jp / 電子書籍
- 購入する
あまり動きらしい動きのなかった前巻と比べて、面白かった。
皇帝の急な病で、急遽、猫猫たち医療関係者が選抜試験を受けさせられる。
もちろん、皇帝の病は秘中の秘ということで。
玉体にメスを入れるという大それた挑戦、更に医療者として救える命は何としても救うべきと奔走する人々の姿が緊迫の中に描かれる。
手術前、帝が壬氏や阿多を呼び出すシーンでは猫猫も同席。ついに、あの出生の秘密が語られるかと思いきや、結局、肩透かし。
今回はみなさんのおつしやるように、確かに興味深い展開ではあったが、では、何か進展があったのかと言えば、ほぼない。
紆余曲折があったとはいえ、結局、物語は堂々巡りをしてまた、出発点に戻った感。
やはり、ストーリーの引き伸ばしかなと思ってしまうのだが。
そろそろ、本当の意味で、何らかの進展や動きを期待したい。
2024年4月18日
- 韓国時代劇 禁婚令8〜9巻
- -
- オリジナルアイテム / その他
- 購入する
面白い。
人を愛することの難しさ、残酷な宿命に流されながらも、必死に抗い生きる人の哀しさを描いている。
恋愛だけでなく、笑いありサスペンスあり、社会派、ヒューマンドラマ、様々なテーマを内包する作品である。
個人的には、男の色香全開の美しい王様が亡き妻やヒロインをひたすら想い悶える姿が良い。
また、ヒロインの元婚約者にして王様の忠臣・親友である武官のヒロインへの片思いも切ない。、
2024年4月13日
- 韓国ドラマ 禁婚礼令
- -
- オリジナルアイテム / その他
- 購入する
韓国ドラマ「禁婚礼令」DVD⑤~⑥感想
☆面白い。亡くなった妻(嬪宮)をひたすら恋うるイケメン国王が次第に女官ソランに心を傾けてゆくプロセスが切ない。また、ソラン自身も妻を忘れ得ぬ男に惹かれてゆく。
更にソランを間に義禁府の都事と国王が恋の火花を静かに散らす展開も萌える。
五巻では、王宮だけでなく都のあちこちで亡き嬪宮の亡霊が出没する騒ぎが起こる。その絡繰りの謎解きはミステリー風で、なかなか興味深く、更に実は偽亡霊がさらわれた嬪宮そっくりの妓生だったというところは意外だった。
そこから若い娘たちを誘拐する犯罪組織の解明に繋がるのは更に衝撃展開といえる。
涙あり笑いあり、スリルありで見応え十分、まさに韓国時代劇の面白さを凝縮した展開。
また、ヒロインがイケメン武官の元婚約者という過去も切なさに輪を掛けている。
ラストはどうやら、ヒロインと国王が結ばれるらしいのだが、ヒロインは元々武官の花嫁となるはずであり、結婚寸前であったことを思えば、私としては彼の一途な片想いが報われて欲しい気もする。
2024年4月1日
- 韓国ドラマ 禁婚礼令
- -
- オリジナルアイテム / その他
- 購入する
☆感想(一巻~四巻)☆
面白い。
若くてイケメンの王様が喪った妻ー嬪宮をひたすら恋うる姿も切ないし、ヒロインが別の女を心に棲まわせる男に次第に心を傾けてゆくところも切なくて良い。
元両班の令嬢(今は恋愛相談占い師?詐欺師?)ヒロインを巡って、国王とイケメン武官が激しく対立、恋の火花を散らす三角関係は、まさに女子の憧れそのものだろう。
また、恋愛模様だけでなく、ヒロインがその武官と元は許婚同士で結婚寸前の関係だったこと、「自害」とされる嬪宮が実は他殺だったーなど政治的陰謀、ミステリー要素も多分に含まれ、見応えのあるドラマとなっている。
2024年3月21日
- 恋慕~月に咲く花~【秘苑の蝶】 後編
- 東めぐみ
- -
- オリジナルアイテム / 本
- 購入する
「恋慕~月に咲く花~」後編。
愛する桂花と共に生きることを決意した世子賛が最終的に選んだ道とはー。
***********(本文から抜粋)
王妃が麗しい面に落胆の色を滲ませる。
「あなたにとって、私たちが選んだ道は、ただ恥ずべきだけなの?」
王が微笑んだ。
「まさか」
彼は逞しい腕でさっと王妃を横抱きにし、膝に乗せた。
「十六年前、俺たちは朝廷の臣下たちの非難を浴びながらも、自分たちの想いを貫いた。その結果、そなたは今、俺の妻として側にいてくれる。三人の子たちにも恵まれた。俺はきっと何度、十六年前のあのときに戻ったとしても、同じ選択をするだろう。願わくば、そなたも俺と同じ気持ちでいてくれると嬉しいんだがな」
王妃の面に悪戯めいた微笑が浮かぶ。
「むろん、私もあなたの気持ちとまったく同じよ、殿下」
二人は共犯者のように顔を見合わせ笑む。
「何度でも言うわ。あなたの側にいられて私は今、とても幸せ」
「嬉しいことを言ってくれる」
王は王妃の身体をそっと褥に横たえた。やわらかくのしかかってくる王の身体を受け容れながら、王妃は自分たちの選択は間違っていなかったのだとその夜、何度も確信したのだった。
2024年3月9日
- 恋慕~月に咲く花~【秘苑の蝶】
- 東めぐみ
- -
- オリジナルアイテム / 本
- 購入する
「秘苑の蝶」第二部スタート。
奇跡の出会いー13歳の世子が満開の金木犀の下で出逢った不思議な少女、その正体は?
第二部では、コンと雪鈴の子どもたちの時代を描く。
********本文から抜粋*********
賛は、がっくりと肩を落とした。王妃の声が心なしか優しくなった。
「それにね、金家と王室の繋がりは、あなたもよく知っているはずよ。清明さまは、あなたの叔母上だし、昌どのは従弟だわ。清明さまの大切なご子息を男娼紛いとして扱うだなんて、到底できるはずがないことは判るでしょう。金氏は地方両班とはいえ、開国功臣を祖に持つ名門だわ。北にはまだ、明基さまのお父君も現在だし、地元ではそれこそ都の王よりも強い影響力を持っているの。その名家の直系の子息を召し上げるなんて言おうものなら、昌どのの祖父君が兵を率いて王宮に攻めてくるかもしれなくてよ」
つまりは、名家の御曹司を遊び半分で慰み者にする行為は、地方在住の臣下に叛意を抱かせる因(もと)にもなり得る。母はそう言っているのだ。
しかし、考えてみれば、そんなものかもしれない。歴史を紐解けば、私怨がきっかけとなり、国家転覆の謀を企て大乱を起こし、王朝が転覆した話は現実として存在する。
うなだれた賛に、王妃は更に声をやわらげた。
「想いは何も貫くだけが道ではないわ。時には引くことも、特に相手を大切に思うならば、諦める覚悟も必要なの」
王妃の諄々とした諭しはもっともだった。最早、抗う言葉さえなく、賛はうなだれて中宮殿を出て東宮殿へ向かった。
自分は、どこかで甘えていた。母なら理解してくれると心のどこかで期待していたのだ。しかし、母の言葉はすべて正しいがために、賛は余計になすすべもなかった。
2024年1月5日