ガラスの鍵 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ハ 6-4)

  • 早川書房 (1993年10月1日発売)
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本棚登録 : 53
感想 : 6

1931年の小説だけど、今読んでもけっこう新鮮。そうかこういう話だったんだ。
話の軸は二つで、チンピラたちのなわばり争いと上院議員の息子の死。
チンピラたちの親分ポール・マドヴィッグが上院議員の娘と結婚しようとするところから二つの軸が重なっていきます。
主人公はポールの右腕で賭博師のネド・ボーモン。
で、この人意外と……弱いんですよね。
深く考えずに動いて窮地に陥ったり、なぐられてへこんじゃったりと、
想像していたハードボイルドのヒーロー像とはだいぶ違う。
だからこそかえってリアルで、身近に感じてしまう。
この小説の特徴はなんといっても心理描写を排した客観描写。
行動と会話のみで成り立っているのでスピーディーにスラスラ読める。
ちょっと映画みたいな感じもしました。
ハメットにおける映画からの(あるいは映画への)影響というのはとっくに論じ尽くされているんだろうけど。
結末や題名の由来を見ると、非情なようでわりあいセンチメンタル。
んー、これはひとことではまとめられない小説です。
「古典はいつでも新しい」というのはたしかに真理。読んでみるもんだ。

杉江松恋『読み出したら止まらない! 海外ミステリーマストリード100』とその連動企画であるこの記事
http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/20140501/1398901056
に背中を押され、読んでみました。
しかし畠山さんと加藤さんの記事を先に読んでしまったせいで、
ネドとポールの仲がBLに見えてしまって困る!
そういう先入観で読むとこの物語もネドとポールと上院議員の娘の三角関係を描いているように見えてきちゃって……ううむ。
いや、まあ、これがホモソーシャルってやつなんでしょうね。よく知らないけど。
ガイドブックでは光文社新訳文庫がテキストでしたが、小鷹信光ブランドにひかれハヤカワミステリ文庫で読んでみました。
小鷹さんの訳はきびきびしていてクール(なんだと思う。正直なところ私には翻訳のよしあしはよくわからない)。
末尾の小鷹さんの文章は「『ガラスの鍵』についての七つのメモ」という題通り、解説というよりほとんどメモ。そっけないけどそそられる。このメモ自体がハメット的なのかも?

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: ノート
感想投稿日 : 2014年7月13日
本棚登録日 : 2014年7月13日

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