エヴリシング・フロウズ

著者 :
  • 文藝春秋 (2014年8月27日発売)
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すごくよかった。もうずっと津村さんははずれがない!

はみだし者的なさえない中三男子の話なのだけど、いい中年のわたしが、あああのころはそういうこともあった、とか思い出すのではなく、今まさに共感する、わかるわかるーと思ってしまい、われながら精神年齢がおかしいのではないかと思うくらい。
他人に自分がどう思われているか、こう言ったらこう思われるんじゃないか、こうしたほうがいいんじゃないか、などなどの自意識と、あと、他人のことをものすごく観察してしまって、こう思ってるんじゃないか、こういう人なんじゃないかとか思って、でも実際にはなにも言わないところとか。それで緊張して疲れるとことか。今現在、ものすごくわかる、と。
津村さんはそういう自意識とか観察をつぶさに書くのがいつもすごくうまい。ほんのひとことにも、こういう意味かもしれない、こういう気持ちかもしれない、っていうのを書く。わかる、と思うのと同時に、他人もみな同じようにそんなに他人を観察しているのかもと思うと少しこわくなったりもするくらい。

関西が舞台ってこともあるのかな、不器用なようでもみんな会話が達者と思った。わたしが中学生のころは先生とあんなふうににしゃべれなかった気が。会話や、口に出さないツッコミとかがさすがにものすごくおもしろい。
つながりが強くて信頼し合って、とかいかにも「仲間」って感じではなくて、「一応」つるむ、みたいなレベルでも、友達とのやりとりとか、だれかと友達になっていく過程とかが楽しくて。「ミュージック・ブレス・ユー」に似てるかも。
受験の話もけっこう書かれていたし。津村さん、受験に思い入れがあるのかしら。

中学生ならではの不器用さはあっても、みんなそれぞれのやり方で誠実に人と対していくところが、こっちはいい中年なのに、見習わなくては、と思ったり。なんだかすごく励まされる気がした。

津村さんの作品だと、描かれる人たちが子どもだろうと大人だろうと同じなのかも、と。どっちの立場でもそれぞれに不自由さや理不尽さはあり、なんというか手持ちのカードでやっていくしかない、ってのは同じで。

ただまあちょっと、やっぱり中学生だったら「未来」があっていいなあーとかも思った。
漂っていけば、また自分がだれかを見つける、だれかが自分を見つける、というふうに思えるのは若いからかなあとかも思ったり。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2014年9月9日
読了日 : 2014年9月8日
本棚登録日 : 2014年9月9日

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