なかなか暮れない夏の夕暮れ

著者 :
  • 角川春樹事務所 (2017年2月10日発売)
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本棚登録 : 1039
感想 : 109
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最初の数ページを読んだところで、突然文章がぶちっと切れて白い行が1行。うわっ、乱丁?落丁?なんか校正のミス??いやいやわざと?と思いつつさらに数ページ読むと、今度は同じ文章が二度続いてまた白い行が。絶対に乱丁かなにかミスでしょ??と思い、そしたら新しい本に変えてもらってから読もう、と思って本をとじたわけで。ツイッターでも騒いで本当にバカなわたし。で、なぜかその夜ふと夜中に目を覚まして考えごとしていて、あ、あれはミスなんかじゃない、あれで正しいのだ、とふっと理解した。
ぶちっと切れていたのは、登場人物が読んでいる本の文章なんだけど、つまり、登場人物が意識を本から離したところでぶちっと切れ、眠かったりして何度も同じ行を読んだとき、同じ文章がくり返されているという。
最初からすっとわからなかったわたしは本当に馬韓なんだろう。だれも、ミス?とか思ってないみたいだ。
でも、え?と一瞬思わせるっていうしかけなんだろう。。。

しかけにまんまとひっかかったから言うわけじゃないけど、うーん、わたしはこの登場人物が読んでいる本(劇中劇じゃなくて、なに? 本中本?)をそれほどおもしろいと思えなかったような。北欧だかロシアだかのミステリみたいなのと、南米だか暑いところのミステリみたいな話だけど。それが全体の何分の一かわからないけど(適当にいうと五分の一くらいに感じたけど)それを読まされるより、本編をもっと読みたかったかも。

ストーリーは、なにかできごとがあるわけでもなく、中年のいろんな立場の人たちが、淡々と、連綿と、いろんな自分の人生を生きていっている、というような感じで、いかにも江國さんといったふう。なにも解決とかしないし。どうして?と思うことの理由もわからないまま。とらえどころがないというか。嫌いじゃないけど。やっぱり、江國さんの文章自体をわたしは好きなんだなと思う。

本を読んでばかりいる稔は50歳で、膨大な遺産があるので働かなくてよくて、いつも本の世界に入っていて、他人に興味がなくて冷たいように見えるのに、わりにまわりに人がいて、かまってもらえて、世捨て人のようになっていないのが不思議というか。うらやましいというか。どうしてなんだろうとか思ったり。あと、なんというか、反省とか後悔がなさそう、こんなふうに本読んでばっかりでどうなんだろう?っていうのがないのもうらやましいというか。

(うーん、江國さんは、なんですかね、好きなように生きる、っていうのがいつもテーマなんですかね。。。)

(どうでもいいけど、同世代なんだけど、どうもやっぱりバブル期っぽいというか、浅野温子とかゆう子とか出てきそうな気がして…)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年2月23日
読了日 : 2017年2月22日
本棚登録日 : 2017年2月23日

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コメント 2件

たまもひさんのコメント
2017/02/23

私、江國香織さんって読んだことがないんですが、niwatokoさんの感想でちょっと興味が湧きました。
それと、バブル期のイメージが私と同じで笑っちゃいました。私もバブルと聞くといつも、ワンレンでキメたW浅野の姿が脳内に浮かびます。私だけかと思ってた(笑)。

niwatokoさんのコメント
2017/02/23

どうでしょう、江國さん、好き嫌いはけっこうありそうな気がします。ダメな人はまったく受けつけないかも……。
バブルといえば彼女たちですよね!(笑)。
中年になった彼女たちのようなイメージの字登場人物も出てきます。働いててお金があって、たまの休みにこじゃれたところで食事したり、温泉行ったりしてそうな。。。

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