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 図書館より
 年末のミステリランキングにも名前の挙がる海外作家の作品を含む短編8編収録のアンソロジー

 読む前に注意してほしいのは『ミステリ・ショーケース』じゃなくて『ミステリアス・ショーケース』であるということ。読んでみるとミステリ色の強い短編はそう多くありません。

 だからと言って面白くないというわけでもなく、各作家それぞれのミステリでは楽しめない味が楽しめるアンソロジーだと思います。

 南北戦争時代を舞台にしたダグ・アリンの「ライラックの香り」が最も印象的。
 話のスジは今一つ分かりにくかったものの、時代に翻弄され、過酷な運命を示されてもなんとか生きようとする人々の姿がしっかりと描かれていたと思います。

 デイヴィット・ベニオフの「悪魔がオレホヴォにやってくる」は戦場の若い兵士が主人公で『卵をめぐる祖父の戦争』と同じ雰囲気の感じられる短編です。
 『卵を~』と比べてコメディ色は薄目ですが、この作品が好きだった人は読んで損のない出来の作品だったと思います。

 デイヴィット・ゴードン「ぼくがしようとしてきたこと」はデビュー手前の小説家が主人公。
 創作する者の自嘲や叫びがありありと伝わってくる、またその主人公に会いに来る人がヘンな人たちばかりで、不可思議な雰囲気の作品でした。ゴードンの作品はもう一編収録されているのですが、こちらも少し幻想風味な小説です。

アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀短編賞「ライラックの香り」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文芸・文学・群像劇
感想投稿日 : 2015年2月19日
読了日 : 2015年2月18日
本棚登録日 : 2015年2月13日

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