日本劣化論 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房 (2014年7月9日発売)
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本棚登録 : 252
感想 : 20

白井氏は永続敗戦論の著者で左翼系社会学者。しかし本当に全うな考えの持ち主で、指摘は的を射ている。経団連の米倉会長が福島原発の爆発を見ながら、原子炉が地震と津波に耐えて誇らしいと言ったことについて殆ど狂人に近いと言い、自民党やネトウヨが伝統には何の興味も無く、天皇に対して驚くほど敬意が無いとして、現在の右傾化の軽さを指摘。安倍総理が何回も河野・村山談話を継承すると表明せざるを得ないことをマゾヒストかと思うが、単に頭が弱いだけと切り捨てる。また、反原発デモが最高潮になり、国会前道路を国民が解放したことについて、あれを機に警備が格段に強化され、封じ込められたが、それは権力側が国民運動に恐怖を覚えたことであり、それ自体は小さなことだが、そのような事を何回も繰り返す必要があると述べた。さらに小沢一郎氏について、二大政党制を目指す態度を評価している。小沢氏がかつて自民党を割ったこと(これはソ連が崩壊したため必然があった)、そして現在は「あなたは殆ど社会党ですか」としつつ、二大政党制を志すならば新自由主義と対抗するナショナルな社会民主主義しか有り得ないとする。また沖縄問題は沖縄独立に言及していた。私のお気に入りでもある、カヌチャベイリゾートは辺野古基地移設が成れば観光地として終わりと指摘してあった。全て腑に落ちる事この上ない。白井氏が一番伝えたいことは、今まで連綿と築き上げてきたおかしな文明を維持するために間違ったことをやり続け、一向に悪びれる様子が無い政権に抗うため、震災の衝撃を素直に表現し、政治の場に移しトラウマを受け止めよう、とのことである。笠井氏も今からうんざりすることは、もし日中戦争が起これば、結局は日本の敗北となり、今のネトウヨ連中が真っ先に対中迎合派となり中国賛美を始めるであろうことだそうだ。当の笠井氏は中国が攻めてきたら反戦主義を捨て、ゲリラになって徹底抗戦するしかないと言っているのに…

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2015年1月19日
読了日 : 2014年12月24日
本棚登録日 : 2014年12月24日

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