帝国以後 〔アメリカ・システムの崩壊〕

  • 藤原書店 (2003年4月30日発売)
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日本の海外報道はアメリカ一辺倒だが、ヨーロッパでは若干趣が違う。
2008年のロシアとグルジアの紛争のときには、CNNをはじめとするアメリカの報道機関は、グルジアが先に手を出した事実をまったくといっていいほど報道しなかったが、イギリスのBBCは明確にそれを伝えていた。日本の報道はどうだったのだろう。主にアメリカ風ではなかったか。
(だからといってロシアが正しいというわけではない。グルジアはまんまとひっかかったのかもしれない。)

日本におけるアメリカの影響は圧倒的で、戦後、軍事的にも経済的にもアメリカなしではやっていけない状況でここまできた。本書でも、第二次世界大戦の敗戦国である日本とドイツが、アメリカの世界支配のための戦略的属国として扱われている。
ヨーロッパからはそう見えるらしい。事実そういうことなんだろう。

ある時期までのアメリカは、この2国の経済発展をテコに、共産圏諸国と対決しながら西側世界の再建と復興を導いてくれる自由主義世界のチャンピオン、良い帝国だった。

しかしベルリンの壁が崩れ、敵対するものがいなくなって以降、アメリカはおかしくなる。経済的にはもっぱら消費するばかりで、あらゆる国から巨大な負債を負うようになった。

イランやイラク、北朝鮮といった小国と敵対し、あちこちで軍事力を行使しているが、これは自分の強さを誇示するためにやっているだけで、その口実はこじつけもいいところ(北朝鮮の場合はそうとはいえないと思うけれども)。
どこでなにを始めるか予測がつかない国になってしまった。

じつは世界はアメリカをもう必要としなくなりつつあり、アメリカの軍事行動は、それに対するアピールなのである。世界はこれだけ悪人がいるので、自分たちの力が必要なのだという。
しかしアメリカの役割はもう終わったのではないか?

経済的に疲弊し、軍事的に凶暴化するアメリカをもてあましながら、世界はその後を模索している。その枠組みはおそらく、独仏を中心とするユーロ、ロシア、日本とそれぞれの連携ではないだろうか。世界の中心は、これらの国々が属するユーラシア大陸に移りつつある。

2002年、9.11テロ事件の1年後に発表され、世界中でベストセラーとなった本。
アメリカ中心の世界観を打ち砕き、なかなかすっきりした気持ちにさせてくれる。

著者はソ連の崩壊を早くから予言した人物としても有名。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本 :現代史
感想投稿日 : 2018年10月8日
読了日 : 2009年11月15日
本棚登録日 : 2018年10月8日

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