新版 ナチズムとユダヤ人 アイヒマンの人間像 (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA (2018年11月10日発売)
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アイヒマンの昇進は決して早い方ではなかった。ナチは過去の体制の破壊をとなえ、中産下層の不満分子を大量に吸収することに成功したが、ナチがつくりあげたのは實は学歴社会だった。親衛隊でも、大学を出ていなければ偉くなれないのである。第二次大戦がはじまって親衛隊も戦場に出るようになってからは、戦場での勲功で将官になる道が開かれた。そういう場合を別とすれば、大学を出ていないとせいぜい中佐どまりだった。アイヒマンは1939年まで7年かかって、やっと大尉、のちに中佐である。同じ期間に同郷のカルテンブルナーは下士官から将軍へと階段を駆け上がって、後に対象になった。ハイリヒはアイヒマンと年齢は2つくらいしか違わないのに、元海軍中尉の肩書がものをいって、国家保安本部の長官におさまっている。オットー・オーレンドルフは経済学と法律学をおさめた学者で、年齢はアイヒマンより下だが国家保安本部の局長をつとめ、のちに1941年には少将に任官した。例外は、掲示上がりのゲシュタポ・ミュラーくらいだろう。それを思うとアイヒマンは不満だった。この学歴社会で地位を獲得するみちは、ユダヤ人問題の「専門家」というその特権を生かす以外にない。幸いナチの上層部は、ユダヤ人問題の「解決」を最優先政策の1つとしていた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ユダヤ
感想投稿日 : 2020年11月21日
読了日 : 2020年11月21日
本棚登録日 : 2020年11月21日

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